アジアの格下相手ならプレッシャーもないだろうが、これから見据えなければならないのは、カタールや韓国やイランなどアジアの強敵やワールドカップで対峙する世界の強豪国。そこまでの意識を持ってつねにプレーし、成長に励んでいくしかない。

 安西は数少ない欧州組でマルチな能力を持っている選手ということで期待は大きい。ただ、ダイナミックかつアグレッシブな攻撃力に比べると守備の方がやや課題だ。個の局面打開が強調されるポルトガルで数々のアタッカーとマッチアップを繰り返し、以前よりは確実に1対1の守りも強化されているはずだが、3月からリーグ戦がストップしてしまったのは痛い。この空白期間をどう有効活用していくかを彼にはよく考えて取り組んでもらいたい。
 
 それ以外のSB候補者は東京五輪世代に何人かいる。右サイドであれば橋岡大樹(浦和)や岩田智輝(大分)、左サイドは杉岡大暉(鹿島)らが該当するだろう。とりわけ橋岡は昨年12月のE-1選手権(釜山)で非常にいい働きを見せ、A代表でも十分やれる選手であることを実証した。本人は今季Jリーグ開幕前に「チームとしては優勝、個人としては2ケタアシストを狙っています」と強みである運動量や守備面以上に攻撃力に磨きをかけていく意欲を示している。リーグ再開がいつになるか分からないが、言葉通りの飛躍を遂げられれば、酒井宏樹とポジション争いできる立場になれるかもしれない。

 同じ東京世代の岩田も昨年、ブラジルでのコパ・アメリカを経験し、著しい成長速度を見せている。橋岡同様に「今季、個人としては2ケタ得点に絡みたい。どれだけゴール前に顔を出せるかを意識していますし、その結果を残せばA代表も見えてくる」と意気込んでいた。4バックでもCBとSBに、3バックではCBと一列前のWBをこなせる2人は使い勝手のいい存在。森保監督もその動向を見守っていくはずだ。

 杉岡は昨年までは彼ら2人より「A代表に近い存在」と言われ、「長友の後継者」の呼び声も高かった。だが、新天地・鹿島アントラーズではザーゴ監督の評価はやや厳しい模様で、試合の出場機会を得るところから始めなければいけない状況だ。堅守と左足のキックには定評があるだけに、苦境を打開できれば光が見えてくるかもしれないが、果たしてどうなるのか。

 いずれにしても、東京五輪世代の追い上げは酒井宏樹・長友への依存脱却に必須テーマ。彼らの奮起をより強く求めたい。

取材・文●元川悦子(フリーライター)