フード関係のパブリッシングには、レシピ動画や写真を含め、高度なビジュアルを擁するコンテンツが欠かせない。しかし、制作/編集スタッフがリモートワークを強いられている現在、パブリッシャーはコンテンツを自宅で制作する術を探ったり、編集スケジュールを根本から変えたりなど、対応に追われている。

たとえば、簡単レシピ動画「ハンズ・イン・パンズ(hands in pans)」から複数のシリーズものに至るまで、多種多様な動画コンテンツを配信するパブリッシャー、テイストメイド(Tastemade)は外付けHDDを買い入れ、従業員の自宅にカメラ機材を送付している。メレディス(Meredith)のフード関連部門はスタッフの自宅キッチンを簡易スタジオに仕立て上げた。一方、ニューヨーク・タイムズ・クッキング(The New York Times Cooking)はレシピではなく、新型コロナウィルスに関する報道に力を入れている。

「皆で知恵を絞っている」

「リモートチームでコンテンツが作れないか、皆で知恵を絞っている」と、テイストメイド(Tastemade)のコンテンツ部門を率いるアマンダ・ダメロン氏は語る。

2月第4週、ダメロン氏はスタッフの自宅にカメラ、三脚、照明機材を送るなど、リモートワークに切り替える準備を開始した。当面の目標は、リモート化にもっとも適していると氏が語るレシピ動画「ハンズ・イン・パンズ」の制作継続に置いていた。現在(※原文記事の公開は3月26日)は、同シリーズもスタッフの自宅で制作するため、小型キッチンセットを手配できないか、方策を練っているという。

ポストプロダクションについても同様の対策をとり、外付けHDDをさらに購入し、宅配サービスを利用してチームメンバー間で共有していくと、ダメロン氏は語る。

大規模なシリーズやドキュメンタリーは一時的に制作休止を余儀なくされている。だが、テイストメイドの番組は配信の1〜6カ月前に制作することが多いため、同社には多少の時間的余裕があるという。

かたや、1皿の材料費を2ドル未満に抑えた料理を紹介する1エピソード22分のシリーズ「ストラッグル・ミールズ(Struggle Meals)」は、最近の人気急騰を受け、新フォーマットで制作を続けせている。3月1日から23日にかけて、同シリーズのFacebookにおける総視聴数は、その前の23日間と比べて434%増を記録した。この新規視聴者を取り逃さないため、番組ホストのシェフ、フランキー・チェレンザ氏はアイダホの自宅キッチンから毎日、インスタグラム上でライブストリーミング配信を行なっている。

この2週間、ダメロン氏によれば、テイストメイド(Tastemade)のソーシャルチャンネルにおける視聴者数は25%以上、ストリーミングネットワークの視聴者数もいくつかのプラットフォームで40%の伸びを見せた。Googleアナリティクスの調べでは、今年3月のリファラルも前年の同月比で30%増、ピンタレスト(Pinterest)も同月期33%増を記録している。チューブラー・ラボ(Tubular Labs)によると、テイストメイド(Tastemade)の動画は今年2月、Facebook、インスタグラム、Twitter、YouTube全体で3億回以上視聴され、コムスコア(Comscore)によれば、同社サイトのユニークビジター数は600万人超に上った。

「家庭料理の不完全を容認」

メレディス(Meredith)も同じく、フード関連サイトのトラフィック数で伸びを見せている。なかでもオールレシピス(Allrecipes)の伸びは顕著であり、2月のユニークビジター数は4300万人、Allrecipes.comのセッション数は前週比40%増を記録した。

オールレシピス(Allrecipes)の番組「フード・ウィッシズ(Food Wishes)」では、ホスト役のシェフ、ジョン・ミツウィッチ氏が自身のキッチンでAllrecipes.comに掲載のなかから2〜3のレシピを実演する。同番組については、リモートワークに必要なものが十分に揃っているため、制作形態の移行は容易だったという。

メレディス(Meredith)のスタジオで制作しているほかの番組については、通例どおり、多くが配信の何カ月も前に撮影を済ませており、そのため現在は編集に焦点を置いているという。

その一方で、同社は現在、今後数カ月先にコンテンツ不足に陥らないよう、個々の自宅キッチンでの番組およびレシピの撮影にどう優先順位を付けるのか、スタッフ宅に配送するカメラ機材の手配も含め――大半のコンテンツはDSLR(デジタル一眼レフ)カメラで撮影できるという――鋭意検討している。

「家庭料理の不完全を容認していく」と、同社SVPで動画部門のトップ、アンドルー・スナイダー氏は語る。同氏は編集スタッフにも、家庭で出している料理があるなら、その調理過程をソーシャルメディアで積極的に共有するよう促している。

コロナ関連ニュースの報道へシフト

他方、ニューヨーク・タイムズ・クッキング(The New York Times Cooking)の制作スケジュールは「完全に狂わされて」おり、リモートワークのせいで新レシピの考案も遅々として進まないと、アシスタントマネージングエディター、サム・シフトン氏は明かす。

同サイトは通常、毎週10〜20の新レシピを配信していた。シフト氏によれば、今後数週間分のコンテンツの蓄えはあるが、これまでのような配信数にはならないだろうという。また、この制作遅延により、数十人のフリーカメラマン/レシピ開発者からなるネットワークとの連携は当面休止している。

それにもかかわらず、3月第3週末、同サイトのトラフィック数は前週末のそれを60%上回った。これは、2020年に入ってから現在までの週末のトラフィック数では最大だったと、シフトン氏は語る。

同コンテンツの自宅制作について、シフトン氏は「新レシピを考案でき、それを適切に試食および撮影できる方法を見出せるのであれば、問題はない」と語るが、編集スタッフの業務の大半は報道にシフトしている。実際、最近は料理評論家やフードライターまでも、新型コロナウィルスがレストラン業界に及ぼす影響に関する記事を同サイトに寄せている。

KAYLEIGH BARBER(原文 / 訳:SI Japan)