自宅で過ごす時間が増えている今、運動や読書などストレスを軽減していくことが生活のカギとなっている

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連載「30代からでも変われる! 中野式カラダ改造計画」

 忙しい大人向けの健康術を指南する「THE ANSWER」の連載「30代からでも変われる! 中野式カラダ改造計画」。多くのアスリートを手掛けるフィジカルトレーナー・中野ジェームズ修一氏がビジネスパーソン向けの健康増進や体作りのアドバイスを送る。

 新型コロナウイルスの感染拡大により、ビジネスマンもリモートワークが進み、自宅で過ごす時間が増えている。しかし、先が見えない状況で外出もできず、かかるストレスも少なくない。中野氏がそんな人たちに向け、健康を守るアドバイスを送った。

 また、「1日1回で運動不足を解消! 自宅でできる10分エクササイズ!」も紹介する。

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 新型コロナウイルス感染症の影響で、これまでとは異なる仕事、生活を強いられています。日々、様々な情報が飛び交うなか、皆が大なり小なり不安やイライラを感じ、ストレスを抱えていることと思います。

 ストレスの対処法には、不快と感じているストレッサー(刺激)を回避する方法もありますが、今起こっている生活や社会の変化そのものから距離を置くのは難しい。ですから、抱えているストレスを少しでも軽くするためには、自分の気持ちや置かれた環境を、どのように変えていくかがカギとなります。

 例えば、会社勤務から在宅勤務になったことで、座りっぱなしの時間が長くなり、体を動かさないことが不快と感じていたとします。であれば、外に散歩に出る、ジョギングをすることで「座りっぱなし」「家のなかに閉じ込められている」というストレッサーから一時避難することができます。

 人によっては家で運動するだけでもスッキリするでしょう。運動が苦手な方は、外の景色を眺める、観たかった映画を家で観る、読みたかった本を読むのでもいい。ストレスを忘れられる、つまり気分転換になることであれば何でもよいので、“やってみる”ことが大切です。

自分が元気な時に「ストレスが軽くなった」ことを嫌でも実行しよう

 しかし、自分のストレスの状態にうまく対処できているうちはよいのですが、気づかぬうちにストレス反応を起こしてしまうこともあります。すると、「気分転換をしよう」という気持ちも生まれなくなり、「友人と話をすれば気分が晴れたはずなのに、話をしても気持ちがまったく晴れない」という状態になります。

 そんな時でも、自分が元気な時に「気分が晴れた」「ストレスが軽くなった」ことを、嫌でも面倒くさくても実行しましょう。

 映画が好きだったら、観る気が起きなくても観る。歩いたり、走ったりするとスッキリするならば、気分が乗らなくても歩く、走る。最初は「ムリ」「気分が乗らない」と思っていた人も「観なきゃよかった」「外にいかなきゃよかった」などど、後悔はしません。

 これを代替療法といいます。

 代替療法のよいところは、あらかじめ「何をするか」を決めておける点です。ストレス反応が強くなれば、「何をしたい」という気持ちも起きなくなります。でも、健康な状態で何をすると楽しいかは、今、わかりますよね。「その時がきたら、○○をしよう」と決めておき、例えば忘れないようにメモを貼っておく。すでに「ストレス反応が起きているかな」と思う方も、自分は何をすると気分転換になったかを振り返り、実行してみてください。

 トレーナーとしては在宅勤務の方だけでなく、出勤されて働き続けている方を含め、積極的に体を動かしてほしい、動かしてもらえたらいいな、と感じています。なぜなら体を動かすことは、不快と感じるストレッサーに対処する方法として、とても有効だからです。

 スポーツは様々な研究から、何もしないで休んでいるよりも疲労から回復させる積極的休息になる、体を動かす楽しさや喜びによりストレスホルモンが低下するなどから、ストレス解消になると証明されています。「ストレス耐性を高める」「ストレスを発散する」「ストレスを忘れる(気分転換)」ことにつながるのです。

 具体的に挙げるとストレスの生理的耐性を高めるのは、リラクセーション法です。呼吸法や呼吸を重視するヨーガや太極拳がこれにあたります。また、ストレスフルな状態の脳によい影響を与える運動として、中・高強度の有酸素運動やレジスタンストレーニングが推奨されています。もちろん、ストレッチやウォーキングといった低強度の運動も、効果はゼロではありません。

広がる“オンライン飲み会”も効果あり…ただし、飲酒&過食は…

 さて、日本でも今、「Zoom飲み」などのいわゆる“オンライン飲み会”が広がっていますが、一足早く外出禁止令が出たロサンゼルスに住む友人も、「旧友6人と1日1時間、スカイプで雑談しながら飲むことが日課になった。今までなかなか会えなかった仲間と(WEB上でも)会えて楽しい」と話していました。実はこのように仲間と雑談したり、今置かれている苦しい状況を誰かに話したりすることも、ストレスの対処法の一つ。心身の健康につながります。

 逆に、昔からストレス解消になると思われている飲酒や好きなものを好きなだけ食べること(過食)は、ストレスレベルを下げているのではなく、感覚を鈍くしているだけなので、根本的は解決になりません。家飲みの際はほどほどの量で、が肝心ですよ!

 最後に、ストレス対策には効果的な、家のなかでできる中高強度のトレーニング、「1日1回で運動不足を解消! 自宅でできる10分エクササイズ!」を紹介します。まったくの運動初心者には強度が高すぎる場合もあるので、回数を半分ずつ行うのでも構いません。私とともに、プロランナーの神野大地選手も実演しています。ぜひ一緒に体を動かしましょう!(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)

長島 恭子
編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビューや健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌などで編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(共に中野ジェームズ修一著、サンマーク出版)、『つけたいところに最速で筋肉をつける技術』(岡田隆著、サンマーク出版)、『カチコチ体が10秒でみるみるやわらかくなるストレッチ』(永井峻著、高橋書店)など。

中野ジェームズ修一
1971年、長野県生まれ。フィジカルトレーナー。米国スポーツ医学会認定運動生理学士(ACSM/EP-C)。日本では数少ないメンタルとフィジカルの両面を指導できるトレーナー。「理論的かつ結果を出すトレーナー」として、卓球の福原愛選手やバドミントンの藤井瑞希選手など、多くのアスリートから絶大な支持を得る。クルム伊達公子選手の現役復帰にも貢献した。2014年からは、青山学院大学駅伝チームのフィジカル強化指導も担当。主な著書に『下半身に筋肉をつけると「太らない」「疲れない」』(大和書房)、『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(サンマーク出版)、『青トレ 青学駅伝チームのコアトレーニング&ストレッチ』(徳間書店)などベストセラー多数。