新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が全米各地に蔓延するなか、企業は事業体制の迅速な改革を強いられている。

各社はクライアントに向けての業務を継続する一方で、スタッフに在宅勤務を許可し、バーチャルミーティングを実施している。こうしたパンデミックのなかでのスタッフ管理は、過去に例を見ない。事業を行いながら、従業員の健康に関する意思決定を下すとは、どのようなものなのだろうか? 匿名を条件に本音を語ってもらうDIGIDAYの「告白」シリーズ。今回は、ある広告エージェンシーの人事(HR)担当幹部から話を聞いた。

なお、以下のインタビューには、若干の編集が加えられている。

──新型コロナウイルスは日常業務にどのような影響を及ぼしているか?

このようなことが起こると、その人の本性がわかるものだ。「何も起きていないじゃないか。いつもと同じように出社したい」という人もいれば、「荷物をまとめて実家へ行く」という人もいる。両極端の反応が起こる。HRの視点とビジネスの視点の両方から、スタッフが働く状態を維持しながら、こうした反応のそれぞれに対応できる余地をつくらなければならない。

──スタッフに事態の深刻さを理解させ、「隔離」を促すことに、困難はあったか?

騒ぎを大きくするようなマネはしたくなかった。いわば、親になるようなものだ。事態は深刻かもしれないことを知りつつも、子どもを無闇に怖がらせるべきではない。

──クライアントはキャンペーンの実施を延期し、広告費を削減している。どのような影響が出ると予想しているか?

確かに、それを考えると恐ろしい。一部の大手顧客はプロジェクトの規模を縮小したり、プロジェクトそのものを撤回したりしている。我々の側も制作を中断している。この先どうなるのかはわからない。いまの状況は、ポーカーをプレイしているようなものだ。スタッフはまだそのことを知らない。いま現在、3つのポジションに空きがあるが、これも保留することになるだろう。それぞれのチームが不思議に思うようになれば、その理由を説明しなければならなくなるだろう。私のいちばんの優先事項は、私たちのこの身体を守ることだ。仕事なら、まだたくさん残っているのだから。

──オフィスに戻る予定は?

3月30日に戻ることになっている。本当にそうなるのだろうか? 現状では、そうはならないだろう。とはいえ、この危機が峠を越え、再び車輪が回りはじめたら、クライアントからの依頼が一斉に舞い込んでくるだろう。その一方で、我々は景気の後退を見据えている。すでにそれに向けた計画を立てているクライアントもいる。私がもっとも恐れているのは、レイオフだ。それを思うと、胸が痛む。とにかくいまは、スタッフ全員を落ち着かせることに力を注いでいる。彼らにとっては、新型コロナウイルスだけでも十分な不安の種になっている。そんな彼らに、この先の仕事のことでさらなる不安を与えたくない。

──あなたはフリーランサーの処遇も管理している。状況次第では、彼らが真っ先に切られるとの見方もあるが

当社はフリーランサーを何人か雇っており、現在も仕事をしてもらっている。直接雇用を避けるために、いずれはさらに何人か雇用するかもしれない。今後半年間は、採用してはレイオフするのではなく、これまで以上にフリーランサーに頼ることになるかもしれない。今後の仕事量が明らかになるまでは、そうすることになるのではないか。(ここ何週間かは)流砂のような状況がずっと続いている。忙しくなるとは思ってもみなかったさまざまな「バケツ」が、忙しくなりはじめている。

──具体的にはどのような点が?

大型プロジェクトを急ピッチで進めていたせいで棚上げになっていたプロジェクトに取り組みたがっているクライアントが大勢いる。小規模なプロジェクトについては、彼らは続行を希望している。

──キャンペーンの中断により、支払いの先送りを申し出ているクライアントは?

いまのところはいない。

──誰もが生産性の確保を試みている。しかし、現状のそれは、通常の在宅勤務とは違っている。生産性に対する期待をどのようにコントロールしているか?

勤務形態の切り替えに先立ち、在宅勤務に関するガイドラインをあらためてスタッフに伝えた。新型コロナウイルスがサービス産業に与えている影響を目の当たりにして、全員が給料が支払われることに感謝している。彼らはこれからも仕事を続けたいと思っているし、これからも会社を動かしていこうと努力している。だが、すべてがグレーであることも確かだ。我々は販売ではないし、評価基準があるわけでもない。各人の仕事量を管理しているにすぎない。

──いまの不確かな状況をどのように切り抜けているのか?

いまのこの不確かな状況に慣れていくしかない。いまのところ、不必要な出費をカットして、すべてを経済的な視点から見ている。これは当社だけではない。どの企業も同じ状況に対処している。まだ答えを誰も見つけていないし、1週間後、2週間後、6週間後にどうなっているのかは誰にもわからない。この事実を認めて、つながりを維持する努力をし、チームメイトがいることを忘れず、互いの様子を確認し合うことが大切だ。最大の難関は、この不確かさだ。

Kristina Monllos (原文 / 訳:ガリレオ)