天気別の業界・分野数(上)と改善・悪化別の業界・分野数(下)

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米中貿易摩擦が影響、今後は新型コロナ感染拡大も懸念材料

 2019年度の国内景気は、総じて悪化傾向が鮮明となった。帝国データバンクが実施している景気動向調査(景気DI)では、これまでの回復基調から2019年12月以降「後退局面入り」に基調判断を引き下げた。こうしたなか、昨年末に中国・武漢から広まった「COVID-19」、いわゆる新型コロナウイルス(新型コロナ)の感染が日本国内でも拡大。生産活動の停滞や消費不振を受け、各業界で大きな影響が発生している。

 こうしたなか、帝国データバンクが調査した2020年度の業界展望は、「晴天」と予想される分野が75(前年度比+3)、「雨天」と予想される分野が51(同+7)。「晴天」は2年ぶりに増加するが、増加幅は緩やか。他方、「雨天」が50を上回るのは、16年度(65)以来4年ぶり。また、7分野の増加は、近年では消費税が8%に引き上げられた翌年の15年度(14年度:53 ⇒ 61、同+8)に次ぐ規模となった。

 総じて全体の業況は足踏み局面が続き、製造業などの一部業界では後退する見通し。

 この結果、天気の改善・悪化状況は、「改善」が11(前年度比+2)、「悪化」が16(同+2)となり、2年連続で「悪化」が「改善」を上回る。2年以上連続で「悪化」が「改善」を上回るのは、リーマン・ショックが発生した06-09年度(4年連続)以来、11年ぶりとなる。

 業況が改善する分野では、2020年度に開催される東京五輪特需、19年度に落ち込んだ需要持ち直しへの期待感から業況改善を見込む。『半導体』『工作機械』などは、19年度に米中貿易摩擦による世界市況の悪化影響を受けたが、20年度は5G通信など先端需要の回復を期待。『地上波テレビ放送』は、東京五輪開催による広告需要の増加を見込むが、新型コロナの感染動向によっては業況が変動する可能性がある。『化粧品製造』は、東京五輪開催による消費効果を期待するが、新型コロナの感染拡大に伴う中国市場の停滞、生産停止といった影響を懸念。

製造業ではリーマン・ショック級の業況悪化

 天気図の改善・悪化を指数化したTDB業況インデックス(DI)の2020年度見通しは、全業界が48.7と予想し、19年8月時点(48.1)から0.6ポイント上昇する。ただ、業況の判断基準となる50を引き続き下回る見通しで、緩やかな悪化局面が当面続くとみられる。

 製造業のTDB業況DIは40.3となる見通しで、全業界を8.4ポイント下回るほか、2019年(49.2)から大幅に悪化する予想。過去10年間で最低となり、東日本大震災発生直後の11年度(51.2)をも下回るほか、リーマン・ショック級の業況悪化も予想される。米中貿易摩擦や中国市場の減速を理由に、鉄鋼分野などでは業況が悪化。さらに新型コロナの感染拡大に伴う生産停滞・消費縮小を懸念することで、先行きの業況を現状維持から引き下げる業界が出たことも要因となっているため。
 非製造業のTDB業況DIは47.9となる見通しで、2016年度以来4年ぶりに50を下回った。

リーマン・ショック級となる業況悪化も想定する必要も

 国内各産業は、感染拡大が続く新型コロナの対応に追われ、通常の経済活動に支障を来たしている。帝国データバンクの調べでは、新型コロナにより業績にマイナスの影響が出る企業は6割超、既にマイナスの影響が出た企業は全体の約3割にも達する。SARS(重症急性呼吸器症候群)流行当時の2003年に行った調査では、SARSの影響で業績に「マイナスの影響あり」と答えた企業は17.1%にとどまっていた。新型コロナによる影響度は既にSARSを超え、各産業に大きな打撃となっている。

 現時点では先行き業況を懸念し、多くの業界で2020年度の業況を現状維持と想定する。しかし、製造業では業況悪化のペースが速まるほか、インバウンド需要により良好な業況を期待していた国内小売・サービス業も一転して厳しさが増した。TDB業況DIも既に東日本大震災当時を下回って悪化状態にあり、今後リーマン・ショック級となる業況悪化も想定する必要が出てきている。