拡大するオーダースーツ市場

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 ビジネスシーンでスーツ離れが進んでいる。2005年のクールビズ開始をきっかけに、夏場にジャケットやネクタイを着用しないことが当たり前となった。その後、2011年の東日本大震災後の節電促進により、いわゆるオフィスカジュアルと呼ばれる服装が浸透した。昨年、メガバンクが相次いで服装の自由化を発表したことは、記憶に新しく、ビジネス=スーツという絶対的構図は崩れつつある。
アパレル不況のなか、好調のオーダースーツ 働く服の多様化がもたらすものとは?

拡大するオーダースーツ市場

 いわゆる“吊るし”と呼ばれる既製品にはない着心地の良さや、個人のこだわりが反映される点が魅力のオーダースーツ。オーダースーツには大きく分けて、細かな採寸にオリジナルの型紙、ボタンやポケットといった細部に至るまで自分の好みにつくることができる「フルオーダー」、仕様型紙(マスターパターン)をもとに、選べる生地やデザインの幅が広いのが「イージーオーダー」、選べるデザインは限られるものの、自分の体形に合ったものを選び、リーズナブルな価格で仕上げることができる「パターンオーダー」の3種類がある。

 帝国データバンクが保有する企業概要データベース「COSMOS2」から、オーダースーツを主業とし、かつ過去10年間の業績比較が可能な63社の売上高合計をみると、2009年度の約265億2300万円から増加を続け、2018年度には約339億1200万円となり、過去10年では27.9%の増加となった。

“多様化”の波は、スーツにも

 一方、熟練の縫製職人を抱える(株)英國屋(東京都中央区)などに代表される老舗テーラーは、品質にこだわる40代以降をメインターゲットに、本物志向を追求している。また、それぞれの土地に根付いた老舗テーラーの存在も大きい。

 季節変動や景気動向、少子高齢化による生産年齢人口の減少や、働き方の変化にともなうビジネスマンの服の多様化。こういった影響からそもそものスーツ人口が減少しつつあり大手量販店が苦戦を強いられるなかで、消費者の嗜好の変化を読み取り、「世界にたった一つ」にこだわるオーダースーツは、スーツ業界を盛り上げる一翼を担えるか。