ケータイには人生が短編小説のように残っている! KDDI「おもいでケータイ再起動」密着取材で見た感動のドラマ

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KDDIの「おもいでケータイ再起動」イベントを密着取材!
KDDIは2月14日から16日までの3日間、上野にある同社直営店「au UENO」にて、「おもいでケータイ再起動」イベントを開催しました。また2月14日には渋谷にて、ブライダル関連事業を展開するエスクリとのコラボレーション企画として、「新郎新婦のおもいでケータイ再起動」イベントも開催しました。

みなさんは、昔使っていたケータイ(フィーチャーフォン)やスマートフォンをまだ持っているでしょうか。
機種変更時にリサイクルとしてショップに預ける方もいますが、
・思い出の写真がたくさん入っていて捨てられない
・ケータイそのものに愛着があって捨てられない
そんな人も多いのではないでしょうか。

KDDIでは、そんな昔のケータイのバッテリーを復活させ、思い出の写真や動画を観られるようにしたり、プリントアウトしてお渡しするイベントを定期的に開催しています。
このイベントはすでに2年ほど前から開催されており、2020年2月現在までに、延べ7500人以上もの人々が参加しています。


懐かしいケータイを前に、思い出話に花を咲かせる来場者


イベントでは、auブランドのケータイ以外の再起動も行っており、数多くの人が「パカパカ」や「ガラケー」の愛称で親しまれたフィーチャーフォンを多数持参していました。

ケータイを再起動すると言っても、簡単にすべてのケータイが再起動できるわけではありません。
バッテリーが著しく劣化していたり、完全放電してしまっていたりすると復活できない場合もあります。

イベントでは有名な機種のバッテリーなどは若干用意していますが、当時のケータイのバッテリーは種類や規格が乱立しており、適合するバッテリーが無い製品も少なくありません。また、内蔵ストレージやメモリーカードについても、完全放電によりデータが破壊されていると、見ることができないケースもあります。

デジタルデータは永遠に残るようなイメージがありますが、ケータイのように一度使われなくなってしまったデバイスからデータを取り出すのは、考えている以上に至難の業なのです。


ケータイの数だけ思い出がある



塗装が剥げ落ちボロボロになったケータイ。でも捨てられなかったのには、必ず理由がある


●ケータイで甦る記憶、人生は短編小説のよう
イベントスタート前、スタッフの方がこう言いました。

「1人1人のお客様のエピソードが、まるで短編小説のようです」

ある来場者の方は、
「息子が結婚するので、結婚式で使える写真がケータイに残ってるんじゃないかと頼まれて来てみた」
こうスタッフに告げ、当時若い社会人男性に大ヒットした「G’zOne」シリーズのケータイを持ち込みました。


息子さんのケータイを手にスタッフと相談するお母さん


ところが、ここで思わぬトラブルが。
バッテリーは無事に復活したものの、ケータイにパスワードロックがかかっていたのです。
困惑しつつも遠方に住むという息子さんに電話をしてパスワードを尋ねますが、息子さんも忘れてしまっている様子。
試しに誕生日や家族の記念日などを入力してみますが、どうしても解除できません。


息子さんと連絡を取るも、ケータイの中身は結局見ることができず……


これはもうダメかと、スタッフ共々落胆している時、ふと「私のケータイにならあるかも……」と、ご自身が昔使っていたケータイをスタッフに見せます。
こういう事態を予想していたわけではなかったようですが、せっかくなら自分の昔のケータイも再起動してもらいたいと、持ってきていたのです。

すると、お母さんのケータイから息子さんの写真が数枚見つかりました。
あまり良い写りではなかったものの、ホッとした様子でプリントアウトしてもらっていました。


息子さんの写真と一緒にプリントアウトした、懐かしい愛犬の写真とともに


別の来場者の男性が持ち込んだのは、なんと23年も前のケータイ。
まだKDDIが存在せず、IDO時代のものでした。



IDO「506G」。携帯電話がデジタル化し、端末の小型化が加速した第2世代通信(PDC)時代の名機だ


残念ながらこちらの端末はバッテリーが復活できませんでしたが、同時に持ち込んでいたNTTドコモ向けの端末では再起動に成功。
懐かしそうに端末を触りながら、男性はこう言います。

「この端末の連絡帳にだけ入っている連絡先があるんです。旅行先で知り合った方の連絡先で、家族も知らないんです。」

男性は、連絡先を大事そうにメモ帳へ書き写して帰っていきました。


ケータイにだけにしかない連絡先を発掘。その後、その連絡先の人と連絡は取れただろうか


また別の来場者の女性は、とても疲れたような、寂しそうな表情でした。
理由を尋ねると、15年間飼っていた愛猫を1カ月ほど前に亡くし、その思い出の写真を探してここに来たのだと言います。


カラフルなケータイの数々。きっとこのケータイたちで愛猫をたくさん撮ったのだろう


バッテリーが復活し、ケータイを再起動したところで嗚咽と涙。言葉になりません。
数分間の沈黙は、しかしつらさを感じさせない温かいものでした。


別れの悲しさは、いつか温かな思い出になる


思い出を振り返りながら、1つ1つケータイを再起動していきます。
カラフルで個性的なケータイは、愛猫の成長日記そのものだったのでしょう。
愛しそうに画面を撫でるその姿に、スタッフの方も言葉を詰まらせていました。


溢れる涙の数だけ思い出がある


女性はそれぞれのケータイから写真を選んでプリントアウトし、最後は笑顔で帰っていきました。



お迎えしたばかりの、子猫の頃の写真を懐かしむ


このイベントは無料で開催されており、プリントアウトした写真も無料で来場者にプレゼントされます。スタッフや店舗の1フロアを貸し切って行われるイベントがすべて無料であることに驚きますが、スタッフはこう言います。

「お客様が喜んで帰っていただけることが何よりも嬉しいんです。どんな営業を行うよりも喜んでいただけるんじゃないでしょうか」

実は、このイベントのスタッフ応募には、KDDIの社員が殺到すると言います。
普段は接客を行っていない開発部や企画部などの人からも、お客様の笑顔や生の声を知りたいと集まるのだそうです。


イベント前に、スタッフ一同で記念撮影


●人生の晴れ舞台に
エスクリとのコラボ企画「新郎新婦のおもいでケータイ再起動」イベントでは、渋谷にある披露宴会場を使い、これからご結婚される方々のケータイの再起動が行われました。



夫婦の門出には、思い出の写真が必須だ


来場者は、再起動されたケータイから2人が出会った頃の写真や学生時代の写真を見つけ、嬉しそうに思い出を語り合います。

中にはバッテリーが復活できずに起動できなかったケータイもありましたが、
メモリーカードにデータが残っており、それをPCにバックアップして現在使っているスマートフォンへ転送してもらっている方もいました。


メモリーカードに残っていた学生時代の友人との動画をiPhoneへ転送してもらったところ


10年〜15年ほど前のケータイであれば、外部ストレージとしてmicroSDカードなどが使えるため、データのバックアップなどは可能です。

しかし、当時のケータイはmicroSDカードの規格が古く、現在主流のmicroSDHCやmicroSDXCといった規格に対応していない機種も多くあります。
そのため、現在店頭で販売されているmicroSDカードを買ってきてもバックアップを取れないことが多くあります。
また、ケータイを直接PCと繋いでデータをバックアップしたくても、接続用の専用ケーブルが販売していないためにできないこともあります。

テクノロジーの進化とは、古いテクノロジーを切り捨てていくことでもあります。
ケータイに残されたデータも、こうした規格の更新によって年々取り出しにくくなっていくのです。


データの保存方法などについてスタッフに尋ねる



学生時代の恥ずかしい写真を婚約者に見られ、思わず照れ隠しの大笑い



最後は2人で、思い出のケータイや写真とともに記念の1枚を


●ケータイの思い出とともに生きる私たち
「ケータイを再起動する」
たったそれだけのことで、これだけ多くの人の人生が蘇り、喜怒哀楽に溢れたドラマが生まれることに驚かされました。

一方で、イベントスタッフには若い方も多く、15年以上も昔のケータイともなると電源の入れ方がわからないなど、お客様とともに四苦八苦しながら再起動を試みる様子も見られました。
その悪戦苦闘に、ケータイの進化や歴史の長さを再発見した思いです。

過去のイベントでは、亡くなった母親の肉声をもう一度聞きたいと、ケータイに録音された留守番電話の再生を頼みに来た女性もいたそうです。


喜びも、悲しみも、ケータイの中に残っている


人は、人生というページに、1つ1つ思い出を積み重ねて歩んでいきます。
ケータイという道具が誕生して30年以上が経ちました。
そしてケータイが人々の生活の必需品となって20年以上となりました。

私たちがケータイを手にした瞬間から、その人生がケータイとともにあったことを、改めて強く感じることができました。


執筆 秋吉 健