日本の「新幹線」と同じく「高速鉄道」として世界に知られるフランスの「TGV」。どんな列車で「新幹線」とどこが違うのか、実際に「TGV Lyria(リリア)」と「TGV inOui(イヌイ)」に乗り、世界遺産モンサンミシェルへ行きました。

新幹線の国」の人として やはり気になる「TGV

 ヨーロッパ31カ国で使える鉄道の乗り放題パス「Eurail Pass(ユーレイルパス)」。これを用いたヨーロッパの鉄道&世界遺産を満喫する旅へ、2019年8月から9月に出かけました(2か月のうち任意の10日を選んで使える1等車用「ユーレイル グローバルパス」を使用。大人用〈28歳以上〉605米ドル〈約6万6000円〉、シニア用〈60歳以上〉546米ドル〈約5万9600円〉。列車によっては予約料金が別途必要なことなどあり)。


ベルンで発車を待つパリ行き「TGV Lyria」。奥にはドイツの高速鉄道車両「ICE」も停車している(2019年9月、恵 知仁撮影)。

 イタリアから始まった旅は、オーストリア、ドイツ、スイスを経て、最後の国フランスに入ります。「フランスの鉄道」といえば、日本の「新幹線」の次に誕生した高速鉄道で、「新幹線」としのぎを削ってきた「TGV」は、欠かせないところです。

 今回の旅では、「TGV Lyria(リリア)」「TGV inOui(イヌイ)」などに乗車。「新幹線」との違いを、1人の乗客として探してみました。

TGV Lyria」は、フランスとスイスを結ぶTGVの名称。使用されている車両は、2006(平成18)年から製造された「TGV POS」というタイプです。


TGV Lyria」1等車の車内。車体幅は日本の在来線サイズ(2019年9月、恵 知仁撮影)。

 乗車したのは、スイスの首都ベルンから、フランスの首都パリまで。車内に入るとまもなく、大きな「新幹線との違い」を感じます。「明るさ」「広さ」です。全体的に照明が少ないほか、車体幅も新幹線より約50cm狭いもの。1両の長さも新幹線の4分の3程度です。よくいえば落ち着いている、コンパクトな感じでしょうか(東海道などのフル規格新幹線と比べてひとまわり小さい、秋田・山形のミニ新幹線車両よりも小さい)。

 ベルンを発車したパリ・リヨン駅行きの「TGV Lyria」はフランスに入る前、国境のバーゼルで乗務員を交代。そのとき、列車に乗り込もうとしていたフランス国鉄の運転士は、8分丈のパンツにTシャツ姿の男性、列車から降りてきたスイス連邦鉄道の運転士は足にタトゥーが見える女性でした。文化の違いを感じます。

新幹線」と大きく違った「TGV Lyria」の車窓と車内 「寝ること」についても?

TGV Lyria」では、1等車に乗りました。食事のシートサービスは2年前に終了とのこと。座席にはコンセントがあります。シートは電動リクライニングですが、日本のグリーン車と比べると、めいっぱいリクライニングしてくつろぐ感じではありません。「列車内で寝ること」に対する危機感の違いなどがあるのでしょうか。前後間隔もそれほど広くなく。座席の向きは変わりません。


フランス国内を走る「TGV Lyria」の車窓から(2019年9月、恵 知仁撮影)。

 フランス国内に入った「TGV Lyria」。日本で表現するなら「広い富良野のような場所」を、最高速度320km/hで駆け抜けていきます。丘陵や平野が広がり、そのあたりで牛が草をはんでいます。

 高速走行する線路の近くに民家などはなく、トンネルもなし。険しい山々や市街地を縫うように走り、トンネルや住宅密集地での騒音対策などに注力している日本の「新幹線」と、環境がまったく違いました。


TGV Lyria」のバー車両で注文した赤ワインとキッシュ(2019年9月、恵 知仁撮影)。

 バー車両があるのも「新幹線」との違いです。フランスの赤ワイン(187ml)5ユーロ、キッシュ7.8ユーロを注文。キッシュは電子レンジで温めたものですが、フワフワしていました。冷めても美味しい駅弁もよいですが、車内で食べる温かいもの、これはこれでどこかホッとします。

TGV Lyria」とは印象が違う「TGV inOui」で世界遺産へ 「2分前」に注意

TGV Lyria」で約4時間半、スイスのベルンからフランスのパリ・リヨン駅へ到着したのち、パリ・モンパルナス駅へ地下鉄で移動。そこから今度は「TGV inOui(イヌイ)」に乗って、フランス西部の都市レンヌを目指します。


パリ・モンパルナス駅で発車を待つ「TGV inOui」(2019年9月、恵 知仁撮影)。

 パリ・モンパルナス駅には、「新幹線」との大きな違いが乗る前からありました。定時運行のため、「発車2分前までの乗車」がルールになっていたのです。ヨーロッパでは、しばしば発車時刻前にドアが閉まるため、余裕を持った行動が必要です。発車するホームが、出発間近までわからないこともよくあります。


TGV inOui」の1等車。書斎のよう(2019年9月、恵 知仁撮影)。

TGV inOui」は、かんたんにいえば内外装などをリニューアルした新しいTGVです。

 乗車したのは2階建てタイプ。車内は「TGV Lyria」同様、「新幹線」のような広さや明るさはないのですが、シックでモダンなデザインで、そのマイナス点を逆に生かしているような印象でした。


世界遺産のモンサンミシェル。小島に築かれた修道院(2019年9月、恵 知仁撮影)。

 パリから1時間半ほどでレンヌに到着したのちは、フランスの西海岸にある世界遺産のモンサンミシェルへ。夕焼けの地平線に、それは浮かんでいました。

 湾内の小島に築かれたモンサンミシェルへの道は、潮の満ち引きによって出たり消えたり。ちなみにモンサンミシェル市は、厳島神社(宮島)のある広島県廿日市市と、観光友好都市提携を結んでいます。

協力:ユーレイル・グループGIE