■高級車は見栄やステータスの象徴

東京の港区や世田谷区辺りだと、ベンツをカローラのような感覚で乗る人が多く、外車の保有率は5割に達する印象があります。

ある自営業の方が、某県の田舎の実家を引き継ぐため、世田谷区から家族で引っ越しました。そこでPTAの会合に出席した奥さんが、「周囲の視線が気になる」と言い出した。高級外車をはじめ、ブランドの洋服やバッグが目立って浮きまくっている。

住みづらい雰囲気が漂って、子どもの人間関係も心配に。そこでさっと地元にマッチする服装に切り替え、外車を売り払い、国産車に乗り換えた。周りに「溶け込む」ことで、トラブルを回避したのです。「おかげでお金がむっちゃ貯まるようになった」と、あっけらかんとしています。こだわりを捨ててしまえば、嫉妬の輪から解放されるんですね。

私はファイナンシャルプランナーとしてお金にまつわる話を多く聞いてきましたが、お金持ちは努力の過程が見えづらいのです。多くの人が「あいつはうまくやったんじゃないか」という疑惑を抱く。それが嫉妬の深層心理にある。

頑張って勉強して東大に入った人には「すごいね」と素直に言えますが、お金儲けをした人にはそう言えない。でも実際にはお金持ちは努力しているし、戦略的に知恵も絞っています。イチロー選手が運だけで一流選手になったと思う人っていますか。お金持ちの人は“お金界のイチロー”だと考えればいいんです。

一方、高級車は見栄やステータスの象徴でもあるので、ほかの人と違うところを見せつけたいという欲望も心の奥に潜んでいると思います。

■突き抜けすぎると嫉妬の対象にもならない

こんな人がいました。サラリーマン世帯で5000万円の家のローンが終わり、プラス5000万円ほど貯まっていた。同じぐらいの年収の家がBMWに乗っているのを見て「うちはやり方が悪いんでしょうか」と悩んでいる。

私は、こう諭したのです。

「そのおうちは車もマンションもローンが残っています。あなたはBMWが買えないんじゃなくて買わないのではないですか。これだけ貯金があれば買えるでしょ。なんで羨ましがる必要があるんですか」

堅実な人でも、自分より派手な生活をしている人が羨ましく見えることがある。まるで悲喜劇ですよね。BMWを買ったおうちは、白鳥みたいなもの。水面では優雅に見えるけれど、水中では必死で足を動かしているんですから。

もっと面白い話もあります。ある地方に住む方は、地元では有名なビンテージーカー・マニアです。フェラーリからランボルギーニまで何台も持っている。ビンテージカーは、年月が経つほど値段が上がるので、資産もどんどん増える。地方だったので、最初は近所からいろいろ言われたけれど、いまは嫉妬もされません。突き抜けすぎると嫉妬の対象にもならないんです(笑)。

だから、こうも言えるかも。中途半端にお金持ちの人が無理をして高級車に乗っているから、嫉妬されてしまうと。

それでも「とにかく高級車は手放したくない」という人はどうするか。対策としては、嫉妬の渦に巻き込まれない、高級車の保有台数が多い“安全な地域”に住むのが一番いいのかもしれませんね。

【対策】「無理して買った感」が出るとダメ

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藤川 太(ふじかわ・ふとし)
ファイナンシャルプランナー
生活デザイン代表取締役社長。2001年に家計の見直し相談センターを設立以来、2万世帯を超える家計診断を行ってきた。『やっぱりサラリーマンは2度破産する』など著書多数。
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(ファイナンシャルプランナー 藤川 太 構成=篠原克周)