フィナンシャル・タイムズ(The Financial Times:以下、FT)は、大規模なD2C(Direct to Consumer:直販)ビジネスの構築法についての知識を共有するという収益性の高いビジネスのコンサルティングやバンキングに事業を拡大しようとしている。

FTストラテジーズ(FT Strategies)は、ほかのビジネスに対してデータ部門やD2C部門の拡大方法についてのアドバイスを与える。現在のクライアントは、北欧のメディア企業ボニアー・グループ(Bonnier Group)やロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館など幅広い。FTはさらに、パブリッシング産業以外とも話をしているが、いまのところはすべてがメディア企業だ。

英DIGIDAYがハンガリーのブダペストで開催した「パブリッシング・サミット・ヨーロッパ(Publishing Summit Europe)」で、FTの最高データ責任者を務めるトム・ベッツ氏はこう語った。「オーディエンスを集合体、あるいはセグメントで見るのと、D2Cの観点で顧客を理解するのはまったく違う」。

「転換点を超える人の数」

約4年半前、FTのサブスクリプション戦略がメーター制課金をやめて有料トライアルを主とする方向へと転換を図ったときに、読者エンゲージメントを詳細に見ていくことが、ビジネス全体の指導原則となった。

FTの新しい顧客中心の指標は、ユーザーが最後に記事を読んだのはいつか(リーセンシー)、ユーザーがどれくらいの頻度でサイトを訪ねてくるか(フリークエンシー)、読まれた有料記事の数(コンサンプション)という利用における3つの異なる側面に目を向ける。これら3つのコンポーネントはひとつにまとめられ、スコアを計算して、読者がいつ購読を申し込む、あるいはやめるかを特定するとベッツ氏はいう。

「我々の企業全体の焦点は、転換点を超えてエンゲージするようになる人の数だ。我々にとってそれは、我々のビジネスに最大の商業的差を生み出すものだ」とベッツ氏は語る。

最初の1カ月がもっとも大切

FTは非常に初期の段階のリテンション(顧客維持)にフォーカスしようとしている。スポーツジムの入会時と同様、登録後最初の30日間は読者にサイトを訪れる習慣をつけさせるということだ。

ベッツ氏は「最初(の1カ月)がいつも一番難しい。一旦そこを超えれば、2カ月目、3カ月目は間違いなくやりやすくなる」と語る。

1カ月のリテンション戦術には、読者にアブリのダウンロードを促したり、ニュースレターへの登録を薦めたりすることが含まれる。FTのコンタクトセンターは、新規の購読者がまだ見つけていないかもしれない製品のあらゆる側面を紹介できるようトレーニングされている。

「実際、これらの実行にはコストがかかるが、リテンションには大きな差が生まれる。人々は我々の製品から価値を得、使い続けたいと思うようになるからだ」と、ベッツ氏は話す。

FTは現在、サブスクリプションで学んだことをFTストラテジーズを通じてほかのビジネスにも応用しようとしている。FTストラテジーズは新設のコンサルティング部門で、社内と社外、両方の専門職従事者との調整を行う。

電気通信業界での経験

FT自身のD2C戦略もまた、社内外の専門知識を双方向で活用している。たとえばベッツ氏は、パブリッシング業界に転職する前は電気通信業界での経験を持つが、メディア業界にいた人間を自分のチームに雇い入れるまでに「かなりの時間を要した」と話す。

「ニュースパブリッシングの世界に足を踏み入れたとき、私は衝撃を受けた。どうして価値の測り方がわからないのか? 顧客生涯価値モデルができていないのはなぜか? こんな感じだった。電気通信業界ではこれが事業運営の骨子であり、それが、コンテンツの収益化に向けてモデルを変更するために必要となるテクニックやツールを構築するうえで我々が設定するものだった」と、ベッツ氏は語った。

Lara O'Reilly(原文 / 訳:ガリレオ)