TEAM SHACHI 咲良菜緒が得意じゃない「パンク」を聴いてみた
TEAM SHACHIの咲良菜緒が独自の感性で未知の楽曲に触れていく連載「咲良菜緒のめかくしストリーミング」も、今回で4回目。
前回、ラムシュタインに出会ったことで、ある種のゴールに到達した感のある彼女。そこで今回は、夏にリリースしたシングル「Rock Away」で挑戦したパンクに照準をあわせ、セックス・ピストルズからいろいろと聴いてもらうことにした。これまでもパンクは得意ではないと話していた彼女は、一体どんな反応を示しただろうか――。
―なんか今日は大人な雰囲気ですね。
そんなことありますか?(笑)
―あはは!
でも、20代になって家族にやさしくなってきた気がする。些細なことだけど、お母さんと一緒にスーパーに行ったときに、「荷物持つから、先に帰っていいよ」って言ったり。
―「これ、お土産に買っていったら喜ぶかな?」とか思ったり。
そうそうそう! 親に「買って」ってお願いすることがなくなりました。親から誕生日プレゼントはもらわないけど、自分から親には買う、みたいな。
―さて、今年の夏はどうでした? 今年のフェスには13人編成という大所帯で臨みまたよね。
JOIN ALIVEとロッキン(ROCK IN JAPAN FESTIVAL)は前に出たことがあってお客さんの雰囲気もわかってたから、どういうライブの組み方をしたらいいか想像がついてたんですけど、サマソニ(大阪)は初めてだったし、海外のアーティストさん目当ての方も多いだろうから、何が正解か全然わかんなくて。結局、ライブの組み方は変えずにクオリティだけ上げていくっていうやり方をしました。私たちはお昼ぐらいの出番だったんですけど、大阪のサマソニは台風の影響で一番大きいステージと二番目に大きいステージのアーティストさんが途中まで出られなくて、観るアーティストがいなくなったお客さんが私たちが出る小さいステージに集まってくれたのもあって、3公演のなかでは一番満足のいくライブができました。
―ブラス民とバンドも含めた13人編成でのライブってどうなんですか?
Buntaさんには曲間をドラムでつないでいただいたり、日高(央)さんはトークが上手なのでサウンドチェックのときに盛り上げていただいたり、ブラス民は楽器を吹きながら踊るし、バンドとブラス民と私たちがそれぞれの見せ場を作れて、回数を重ねるごとに息も合っていったのでよかったと思いますし、Buntaさんや日高さんがいることで観に来てくれた方もいたので、すごくよかったと思います。
―それにしても、新曲「Rocket Queen feat. MCU」はいい曲ですね!
本当ですか⁉ 私たちは作る段階から聴いてるから、何がいいのかだんだんわからなくなってくるんですけど、そう言ってもらえてよかったです。「ロックマン」とコラボしたりしたことで、みんなが注目してくれているので、気合い入れてよかったです。
―「ロックマン」なんて完全に反則ですよ。あちこちで言われてると思いますけど。
すごく言われます! 今、「ロックマン」のゲームが携帯で無料でできるんですよ。すごく難しいゲームで、その攻略のヒントとしてMVがあるんです。
―最初は曲を聴くつもりで見始めたのに、「これ、すごくねえ……?」って見入ってしまうという。
そう。ゲームのクオリティがめちゃめちゃ高くて。
―もうひとつ、吹奏楽とのコラボしたバージョンもあって、そっちもいいですよね。
そう。「ロックマン」とは全然音が違って、こちらはこちらで壮大になっていてすごくカッコいいです。
―どっちのアレンジもよくて甲乙つけがたい。
マーチングのほうも本間昭光さんがアレンジしてくださったんですよ。ミュージックビデオの撮影は高校でやったんですけど、演奏のチェックのためにも本間さんがわざわざ確認して指導してくださったので、「さすが本間さん!」って感じでしたね。
―だからあのクオリティなのか。
私たちが「キーを上げたい」って言ったら、「そうなると、この楽器の音がなあ……」って。そういう繊細で難しいところや私たちのオーダーも含めていろいろと調整してくださってすごくカッコよくなりました。
―あのミュージック・ビデオも撮影が大変そうですね。
私たちよりも吹奏楽のみんなが大変で。全部で70人以上いて、みんなダンスをやったことがない子たちなので、朝早くからダンスのリハーサルをやってくれて、そのおかげで部員の子のミスはなかったんだけど、私たちのせいで何回か撮り直しになって、本当に申し訳なかったなって。
「お誕生日プレゼントに、すごく過激なバンドTシャツをいただきました(笑)」
―あはは! さて、今回の選曲はいつもと違います。
なにー⁉ 私はもう、けっこういろんな発見をいただいてるんですけど。ラムシュタインはめちゃめちゃいろんな人に食いつかれました。
―なんて言われました?
「本当に変な人なんだね」って(笑)。
―そりゃそうですよ!(笑)
お誕生日プレゼントに、すごく過激なバンドTシャツをいただいて(笑)。 SABATONとかもらいましたよ。来日したら着たいです。
―SABATONは1年前に来たばかりですよ。BABYMETALが呼んでました。
そうなんだぁ! めっちゃ行きたかった! 全然知らんかったわ。
―そういうことってありますよね。新しいバンドを好きになったと思ったら、3カ月前に来日したばかり、とか。
そう! ライブのスケジュールはBillboardでよくチェックはしてるんですけど、載ってないライブも多いんですよね。
―ということで今回は、TEAM SHACHIも「Rock Away」というパンクチューンを出したことだし、菜緒さんが得意ではないパンクを敢えて揃えてみました。
編集部からのお題 その1
Anarchy In the UK - セックス・ピストルズ
私、これ知ってますか?
―バンド名は絶対に聞いたことあると思います。
声にけっこうクセがありますね。好きです。なんか鼻にかかってるっていうか。古着屋さんとかでかかってそう。
―あはは! 正しい! 絶対にかかってます! その感覚、すごいですね!
これはパンクのなかでも好きなほうです。テンポも速くないし、自分のなかではパンクというよりも、王道なロックに感じるからナチュラルに聴けます。本当に古着屋さんでかかってそう! しかも、民族系のアクセサリーとか売ってる、柄物とか小物が多くて、そんなに広くない古着屋さん。
―設定が細かい! これはセックス・ピストルズです。
あ! 私、バンドの歌詞の中でしか見たことないです。
―じゃあ、音楽自体を聴くのは……。
初めてです! よく歌詞で出てくるじゃないですか。それで存在は知ってたけど、曲は聴いたことなかったから、もはや架空の人物みたいな。本当にいたんだ。伝説の人なんだなあって思ってた。
―伝説は伝説ですけど、ちゃんと実在する人物です。
でも、聴きやすいです。
編集部からのお題 その2
電撃バップ - ラモーンズ
―この曲自体は知らなくても、菜緒さんも知ってるキーワードが歌詞に入ってるのでよく聴いてみてください。
ちょっと滑舌悪くないですか? あはは!
―パンクですから!
これはさっきよりも私のなかではパンクに寄ってますね。
―どのへんでそれを感じますか?
繰り返しが多いところ。この、でででででででででーでー(ギターリフ)とか。「Rock Away」もそうですけど、パンクは反復していてノリやすいというか、わかりやすいというか、そういうイメージがあるから。
―音楽的なことを話すと、初期のパンクはコードを3つしか使わないものが多いんですよ。そういうシンプルなところを菜緒さんは感じ取っているんでしょうね。
うんうん、そう。シンプルな印象はすごくあります。だから、耳に残るし覚えやすいっていうのがある。でも、逆に言うと、同じように感じてしまうというか……
―もっと展開が欲しくなっちゃう。
そうそう、そういうふうに思っちゃうから、これまであまり聴いてこなかったんだと思う。だから、このバンドのこの1曲は好きっていうのはあるけど、その人たちの曲をいっぱい聴くっていうことはなかったかも。SUM41の「Still Waiting」とか。
―ところで、さっき話したキーワードってわかりました?
ええ? トゥン、トゥン、トゥントゥン(Hey ho, lets go)っていうのしかわからんかった。
―菜緒さんもそれに近い歌詞を歌ってますよ?
え? 私が歌ってるんですか?
―そうですよ。その歌詞はここから来てるんですよ?
「Rock Away」で歌ってるんですか? じゃあ、日高さんもこの曲知ってるんですか?
―もちろんですよ!(笑)
えー、どこー?
―ヘイ! ホー! レッツゴー!
あ! <Hey! Go! Hey! Letgo!>かー! えー、ここから来てるのー!?
―ここから来てます。それをイジって「Rock Away」に取り入れてるという。ちなみに、ラモーンズっていうバンドです。
ラモーンズ? わからん……。ありがとうございます、「Rock Away」がお世話になりました……。
―ラモーンズのTシャツを着てる人がよくいますよ。
あ、本人のことを知らずに着てる人たち!
―そうそう(笑)。メタリカみたいな。
そうそうそう、メタリカ着てる女の子いっぱいいる。「どんなバンドか知らないでしょ!」って思っちゃう。
―あはは! そういうの見てイラッとします?
イラッとはこないけど、「バンド自体のことは知らないだろうなあ」って思ってる。服屋さんにけっこう置いてあるじゃないですか。スリップノット、メタリカ、KORNもけっこうあるし。バンドTは流行りましたよね。
―けっこう定着してきてる感じもありますよね。
うん、「普通にかわいい」みたいな感じでみんな着てる。
―そうなると、自分が着たいバンドTが着られなくならないですか?
でも、本当にグロいTシャツとかあるじゃないですか。そういうのは周りがメタリカとかを着るようになったからこそちょっと着れる、みたいな。だから今年は、これまで部屋着として着てたのをよく外用に着てました。
「メタラーよりパンクバンドのほうが頭がぶっ飛んでるイメージがある」
編集部からのお題 その3
RUBY SOHO - ランシド
―さっき菜緒さんも言ってましたけど、何を歌ってるかわかりづらいですよね。
うん。みんな滑舌悪いですよね。
―みんな、吐き捨てるように歌いますからね
あ、日高さんにもそういうふうに歌うように「Rock Away」のレコーディングで言われました! メタラーよりパンクバンドのほうが頭がぶっ飛んでるイメージがあります。動きとかも……
―予測不能みたいな?
そうそうそう!「どんな動きしてんの⁉」っていう。
―さっきまでは70年代の曲でしたけど、これは90年代です。
70年代って何年前だ? 50年前ぐらい?
―そこまではいかないですけどね。
これが90年代っていうはわかるかも。音数が増えてる? 厚みがある? それが今に近づいてきてる感じがする。何が増えてるんだろう?
―レコーディング技術が発達して、楽器をいくつも重ねて録れるようになってるっていうのはあるでしょうね。あとは機材自体の進化だったり。
ああ、そういうことか。
―ちなみに、これはランシドです。
ああ、ランシドかあ! こないだサマソニで観ました! ランシドが好きな方は多かったです。でも、ビジュアルはごついのに音はライトな感じがしました。
―でも、曲はキャッチーじゃないですか?
うん。覚えやすいし、ノリやすいです。私も聴けるし、ゴリゴリなのが得意じゃない人でも聴けるから、一番いいとこにいるイメージ。
―なるほど。
私は偏っちゃってるから。
―ですね。そこをこじ開けようっていうのが今回の裏テーマなんですよ。
パンクは嫌いじゃないんだけど、昔から引っかからなかったんだよなあ。ファンが多いから理解したかったんですけど……。
編集部からのお題 その4
LEAVE IT ALONE - NOFX
あ、私、これ聴いたことある! なんかELLEGARDENみたい。
―おお、ELLEGARDENか。なるほど。
これは全然聴けます! でもそれはパンクとしてじゃなくて、ポップスとして聴いてます。「いい曲だな」って。いい曲だなって思わせるメロディってあるじゃないですか。
―ああ、これはまさにメロディック・パンク、メロディック・ハードコアって言われるものですからね。
へぇ〜。パンクだったらこっち系が好きです。歌えるパンク、みたいな。……さっきまでの曲ってコーラスありました?
―コーラスというよりも、みんなでシンガロングする感じでしたね。
ああ、だからか。
―これはNOFXと言います。N、O、F、Xと書いてNOFXです。
あ! それ、そうやって読むんだ! 読めなかった。
―わかりますわかります。僕も最初は読めなかったんで。
ノーフィックスとかだと思ってた(笑)。
編集部からのお題 その5
STRANGER THAN FICTION - バッド・レリジョン
あ、この人はちゃんと歌ってるイメージ! ちゃんと歌唱してる。これまでのはセリフっぽかったけど。
―さっきの曲もこれも、僕ら世代の青春です。今の菜緒さんよりもちょっと若い頃、毎日のように聴いてました。
へぇ〜。なんか、繰り返しはあるけど、単純すぎないし、どのフレーズもキャッチー。すごく聴きやすくて、ボーカルの声も聴きやすいけど、私はスルーしちゃかも……。もちろん嫌にもならないけれど、「すごくいい!」ともならないかも。
―それ、一番よくない感想ですね!
でも、こういう曲は王道としてヒットするんだろうなって思います。
―そうやって客観的に理解している自分もいるんですね。
いるんですけど、なかなか自分がハマりはしないんだろうなっていう。
―じゃあ、ここにどんな要素があったら好きになりそうですか?
ドラムですかね。どこかでテンポが変わったりしてほしいと思っちゃう。あとは世界観かな! 私は非日常的なのが好きかもしれない。ねちょねちょしてるのとか、日常にはいないし、あれが日常だったらしんどいじゃないですか。ねちょねちょはハリーポッターで修羅場に向かっていく最中みたいなイメージで、こっちは日常です。
―でも、反応としては正しいですよ。等身大ってことですもんね。
そう。これはナチュラルに聴けてしまって、どこか違う場所に行く感じというか、違う世界観に浸る感覚がなくて、そのせいで引っかからないのかな。やっぱり、hideさんとかHYDEさんとかLArc-en-Cielって、独特な世界観があるし、等身大で語りかけてくるんじゃなくて、自分たちの世界から話をしているから、そこに憧れを持って勇気づけられるのかもしれない。自分にリンクするっていうよりも、自分からリンクしたいっていう。そうやって背中を押してもらうことが多いのかも。
―そこまで言われちゃったら次の曲、どうしようかなあ。
あはは!
「パンクはお客さんとの一体感があってこそって感じがする」
編集部からのお題 その6
BEST TIME AROUND - THE MUFFS
―これは単純に僕が大好きな曲です。(注:この取材は、THE MUFFSのKim Shattuckが亡くなる前に行われました)
私、自分が風邪引いたときの声が一番好きなんですよ。だから、本当にこういうハスキーな声が出る女性がうらやましくて。桑田佳祐さんが枕にわーって叫んで声を枯らしたっていう話があるらしくて、私もそれをやりたいんですよ。
―あはは!
本当にハスキーな女性がうらやましいんですよ。私の声はわりと高くて、ハスキーではないので、本当にうらやましい。バンドになると余計にうらやましいですね。
―でも、ハスキーな声が出る代わりに高い音が出なくなったらどうしますか?
それは悔しい! ハスキーな声ってカッコいいっていうのもあるけど、かわいくもあるんですよね。YUKIちゃんとかが理想ですね。歌いながらハスキーにもなるし、クリアにもなるし、あれは本当にうらやましいしかわいい。
―この曲はどうですか?
私は引っかからないかもしれない……。声は好きですけど……。
編集部からのお題 その7
WHY CANT WE BE FRIENDS - スマッシュ・マウス
あ、ラッパが入ってきた! これまでと全然違うヤツがきた。こういう感じの曲のほうが好きかも。ホーンが入ってるのもそうなんですけど、なんかディズニーみたいなテーマパークで流れててもよさそう!
―この曲はスカも入ってますね。
入ってますね! パンク全体に言えることかもしれないけど、音源を聴くよりもライブで観たいって感じです。ライブだったら私も楽しいんだろうなっていうのは思います。
―音源に物足りなさを感じるんですね。
もったいなく感じるというか、パンクはお客さんとの一体感があってこそって感じがするから。メタルは見せつけてナンボみたいなイメージがあって、バンドが自分に酔ってるのを見てこっちも酔うって感じだから一方的に来られてもいいんです。でも、パンクはこっちから参加することありきだと思うから、どれもライブで観てみたいって思いますね。みんなが踊ったり声を出してる感じが想像しやすい曲が多いし。メタルで声を出すっていうイメージはそんなにないんですよね。
―……ぐうの音も出ない。
あはは!(笑)
編集部からのお題 そ8
アンパンマン - SNUFF
あ! あれやん。日本の歌やん。すごい、頑張って日本語で歌ってる!
―そう。イギリスのバンドでSNUFFといいます。
これ、大の大人が聴きながら泣いてそう。
―あはは!
なんか理不尽なことがあって、一人で泣いてそう。それか、車に乗ってるときにこれがかかって、どこかで車停めて泣いてそう。車の中が一人になれる唯一の場所だから。
―ストーリーがしっかりしてますね(笑)。
こういう日本語のカバー曲は海外の人が歌ってるからこそのよさが絶対ありますよ。日本人が歌うよりもいい意味で楽観的じゃないですか。日本人だと気持ちが入っちゃうと思うし。曲の背景をそんなに理解しないで歌われるほうがこっちも気がラクになるというか。
―このバンド、ドラムボーカルなんですよ。
そうなんだ! 珍しいですね。
―で、奥さんが日本人なので、日本語のカバーが得意なんです。
え〜、私もそういう奥さんになりたい!
―コリィ・テイラーの奥さんに(笑)。
え〜、なりたいなりたい!(笑)
前回、ラムシュタインに出会ったことで、ある種のゴールに到達した感のある彼女。そこで今回は、夏にリリースしたシングル「Rock Away」で挑戦したパンクに照準をあわせ、セックス・ピストルズからいろいろと聴いてもらうことにした。これまでもパンクは得意ではないと話していた彼女は、一体どんな反応を示しただろうか――。
そんなことありますか?(笑)
―あはは!
でも、20代になって家族にやさしくなってきた気がする。些細なことだけど、お母さんと一緒にスーパーに行ったときに、「荷物持つから、先に帰っていいよ」って言ったり。
―「これ、お土産に買っていったら喜ぶかな?」とか思ったり。
そうそうそう! 親に「買って」ってお願いすることがなくなりました。親から誕生日プレゼントはもらわないけど、自分から親には買う、みたいな。
―さて、今年の夏はどうでした? 今年のフェスには13人編成という大所帯で臨みまたよね。
JOIN ALIVEとロッキン(ROCK IN JAPAN FESTIVAL)は前に出たことがあってお客さんの雰囲気もわかってたから、どういうライブの組み方をしたらいいか想像がついてたんですけど、サマソニ(大阪)は初めてだったし、海外のアーティストさん目当ての方も多いだろうから、何が正解か全然わかんなくて。結局、ライブの組み方は変えずにクオリティだけ上げていくっていうやり方をしました。私たちはお昼ぐらいの出番だったんですけど、大阪のサマソニは台風の影響で一番大きいステージと二番目に大きいステージのアーティストさんが途中まで出られなくて、観るアーティストがいなくなったお客さんが私たちが出る小さいステージに集まってくれたのもあって、3公演のなかでは一番満足のいくライブができました。
―ブラス民とバンドも含めた13人編成でのライブってどうなんですか?
Buntaさんには曲間をドラムでつないでいただいたり、日高(央)さんはトークが上手なのでサウンドチェックのときに盛り上げていただいたり、ブラス民は楽器を吹きながら踊るし、バンドとブラス民と私たちがそれぞれの見せ場を作れて、回数を重ねるごとに息も合っていったのでよかったと思いますし、Buntaさんや日高さんがいることで観に来てくれた方もいたので、すごくよかったと思います。
―それにしても、新曲「Rocket Queen feat. MCU」はいい曲ですね!
本当ですか⁉ 私たちは作る段階から聴いてるから、何がいいのかだんだんわからなくなってくるんですけど、そう言ってもらえてよかったです。「ロックマン」とコラボしたりしたことで、みんなが注目してくれているので、気合い入れてよかったです。
―「ロックマン」なんて完全に反則ですよ。あちこちで言われてると思いますけど。
すごく言われます! 今、「ロックマン」のゲームが携帯で無料でできるんですよ。すごく難しいゲームで、その攻略のヒントとしてMVがあるんです。
―最初は曲を聴くつもりで見始めたのに、「これ、すごくねえ……?」って見入ってしまうという。
そう。ゲームのクオリティがめちゃめちゃ高くて。
―もうひとつ、吹奏楽とのコラボしたバージョンもあって、そっちもいいですよね。
そう。「ロックマン」とは全然音が違って、こちらはこちらで壮大になっていてすごくカッコいいです。
―どっちのアレンジもよくて甲乙つけがたい。
マーチングのほうも本間昭光さんがアレンジしてくださったんですよ。ミュージックビデオの撮影は高校でやったんですけど、演奏のチェックのためにも本間さんがわざわざ確認して指導してくださったので、「さすが本間さん!」って感じでしたね。
―だからあのクオリティなのか。
私たちが「キーを上げたい」って言ったら、「そうなると、この楽器の音がなあ……」って。そういう繊細で難しいところや私たちのオーダーも含めていろいろと調整してくださってすごくカッコよくなりました。
―あのミュージック・ビデオも撮影が大変そうですね。
私たちよりも吹奏楽のみんなが大変で。全部で70人以上いて、みんなダンスをやったことがない子たちなので、朝早くからダンスのリハーサルをやってくれて、そのおかげで部員の子のミスはなかったんだけど、私たちのせいで何回か撮り直しになって、本当に申し訳なかったなって。
「お誕生日プレゼントに、すごく過激なバンドTシャツをいただきました(笑)」
―あはは! さて、今回の選曲はいつもと違います。
なにー⁉ 私はもう、けっこういろんな発見をいただいてるんですけど。ラムシュタインはめちゃめちゃいろんな人に食いつかれました。
―なんて言われました?
「本当に変な人なんだね」って(笑)。
―そりゃそうですよ!(笑)
お誕生日プレゼントに、すごく過激なバンドTシャツをいただいて(笑)。 SABATONとかもらいましたよ。来日したら着たいです。
―SABATONは1年前に来たばかりですよ。BABYMETALが呼んでました。
そうなんだぁ! めっちゃ行きたかった! 全然知らんかったわ。
―そういうことってありますよね。新しいバンドを好きになったと思ったら、3カ月前に来日したばかり、とか。
そう! ライブのスケジュールはBillboardでよくチェックはしてるんですけど、載ってないライブも多いんですよね。
―ということで今回は、TEAM SHACHIも「Rock Away」というパンクチューンを出したことだし、菜緒さんが得意ではないパンクを敢えて揃えてみました。
編集部からのお題 その1
Anarchy In the UK - セックス・ピストルズ
私、これ知ってますか?
―バンド名は絶対に聞いたことあると思います。
声にけっこうクセがありますね。好きです。なんか鼻にかかってるっていうか。古着屋さんとかでかかってそう。
―あはは! 正しい! 絶対にかかってます! その感覚、すごいですね!
これはパンクのなかでも好きなほうです。テンポも速くないし、自分のなかではパンクというよりも、王道なロックに感じるからナチュラルに聴けます。本当に古着屋さんでかかってそう! しかも、民族系のアクセサリーとか売ってる、柄物とか小物が多くて、そんなに広くない古着屋さん。
―設定が細かい! これはセックス・ピストルズです。
あ! 私、バンドの歌詞の中でしか見たことないです。
―じゃあ、音楽自体を聴くのは……。
初めてです! よく歌詞で出てくるじゃないですか。それで存在は知ってたけど、曲は聴いたことなかったから、もはや架空の人物みたいな。本当にいたんだ。伝説の人なんだなあって思ってた。
―伝説は伝説ですけど、ちゃんと実在する人物です。
でも、聴きやすいです。
編集部からのお題 その2
電撃バップ - ラモーンズ
―この曲自体は知らなくても、菜緒さんも知ってるキーワードが歌詞に入ってるのでよく聴いてみてください。
ちょっと滑舌悪くないですか? あはは!
―パンクですから!
これはさっきよりも私のなかではパンクに寄ってますね。
―どのへんでそれを感じますか?
繰り返しが多いところ。この、でででででででででーでー(ギターリフ)とか。「Rock Away」もそうですけど、パンクは反復していてノリやすいというか、わかりやすいというか、そういうイメージがあるから。
―音楽的なことを話すと、初期のパンクはコードを3つしか使わないものが多いんですよ。そういうシンプルなところを菜緒さんは感じ取っているんでしょうね。
うんうん、そう。シンプルな印象はすごくあります。だから、耳に残るし覚えやすいっていうのがある。でも、逆に言うと、同じように感じてしまうというか……
―もっと展開が欲しくなっちゃう。
そうそう、そういうふうに思っちゃうから、これまであまり聴いてこなかったんだと思う。だから、このバンドのこの1曲は好きっていうのはあるけど、その人たちの曲をいっぱい聴くっていうことはなかったかも。SUM41の「Still Waiting」とか。
―ところで、さっき話したキーワードってわかりました?
ええ? トゥン、トゥン、トゥントゥン(Hey ho, lets go)っていうのしかわからんかった。
―菜緒さんもそれに近い歌詞を歌ってますよ?
え? 私が歌ってるんですか?
―そうですよ。その歌詞はここから来てるんですよ?
「Rock Away」で歌ってるんですか? じゃあ、日高さんもこの曲知ってるんですか?
―もちろんですよ!(笑)
えー、どこー?
―ヘイ! ホー! レッツゴー!
あ! <Hey! Go! Hey! Letgo!>かー! えー、ここから来てるのー!?
―ここから来てます。それをイジって「Rock Away」に取り入れてるという。ちなみに、ラモーンズっていうバンドです。
ラモーンズ? わからん……。ありがとうございます、「Rock Away」がお世話になりました……。
―ラモーンズのTシャツを着てる人がよくいますよ。
あ、本人のことを知らずに着てる人たち!
―そうそう(笑)。メタリカみたいな。
そうそうそう、メタリカ着てる女の子いっぱいいる。「どんなバンドか知らないでしょ!」って思っちゃう。
―あはは! そういうの見てイラッとします?
イラッとはこないけど、「バンド自体のことは知らないだろうなあ」って思ってる。服屋さんにけっこう置いてあるじゃないですか。スリップノット、メタリカ、KORNもけっこうあるし。バンドTは流行りましたよね。
―けっこう定着してきてる感じもありますよね。
うん、「普通にかわいい」みたいな感じでみんな着てる。
―そうなると、自分が着たいバンドTが着られなくならないですか?
でも、本当にグロいTシャツとかあるじゃないですか。そういうのは周りがメタリカとかを着るようになったからこそちょっと着れる、みたいな。だから今年は、これまで部屋着として着てたのをよく外用に着てました。
「メタラーよりパンクバンドのほうが頭がぶっ飛んでるイメージがある」
編集部からのお題 その3
RUBY SOHO - ランシド
―さっき菜緒さんも言ってましたけど、何を歌ってるかわかりづらいですよね。
うん。みんな滑舌悪いですよね。
―みんな、吐き捨てるように歌いますからね
あ、日高さんにもそういうふうに歌うように「Rock Away」のレコーディングで言われました! メタラーよりパンクバンドのほうが頭がぶっ飛んでるイメージがあります。動きとかも……
―予測不能みたいな?
そうそうそう!「どんな動きしてんの⁉」っていう。
―さっきまでは70年代の曲でしたけど、これは90年代です。
70年代って何年前だ? 50年前ぐらい?
―そこまではいかないですけどね。
これが90年代っていうはわかるかも。音数が増えてる? 厚みがある? それが今に近づいてきてる感じがする。何が増えてるんだろう?
―レコーディング技術が発達して、楽器をいくつも重ねて録れるようになってるっていうのはあるでしょうね。あとは機材自体の進化だったり。
ああ、そういうことか。
―ちなみに、これはランシドです。
ああ、ランシドかあ! こないだサマソニで観ました! ランシドが好きな方は多かったです。でも、ビジュアルはごついのに音はライトな感じがしました。
―でも、曲はキャッチーじゃないですか?
うん。覚えやすいし、ノリやすいです。私も聴けるし、ゴリゴリなのが得意じゃない人でも聴けるから、一番いいとこにいるイメージ。
―なるほど。
私は偏っちゃってるから。
―ですね。そこをこじ開けようっていうのが今回の裏テーマなんですよ。
パンクは嫌いじゃないんだけど、昔から引っかからなかったんだよなあ。ファンが多いから理解したかったんですけど……。
編集部からのお題 その4
LEAVE IT ALONE - NOFX
あ、私、これ聴いたことある! なんかELLEGARDENみたい。
―おお、ELLEGARDENか。なるほど。
これは全然聴けます! でもそれはパンクとしてじゃなくて、ポップスとして聴いてます。「いい曲だな」って。いい曲だなって思わせるメロディってあるじゃないですか。
―ああ、これはまさにメロディック・パンク、メロディック・ハードコアって言われるものですからね。
へぇ〜。パンクだったらこっち系が好きです。歌えるパンク、みたいな。……さっきまでの曲ってコーラスありました?
―コーラスというよりも、みんなでシンガロングする感じでしたね。
ああ、だからか。
―これはNOFXと言います。N、O、F、Xと書いてNOFXです。
あ! それ、そうやって読むんだ! 読めなかった。
―わかりますわかります。僕も最初は読めなかったんで。
ノーフィックスとかだと思ってた(笑)。
編集部からのお題 その5
STRANGER THAN FICTION - バッド・レリジョン
あ、この人はちゃんと歌ってるイメージ! ちゃんと歌唱してる。これまでのはセリフっぽかったけど。
―さっきの曲もこれも、僕ら世代の青春です。今の菜緒さんよりもちょっと若い頃、毎日のように聴いてました。
へぇ〜。なんか、繰り返しはあるけど、単純すぎないし、どのフレーズもキャッチー。すごく聴きやすくて、ボーカルの声も聴きやすいけど、私はスルーしちゃかも……。もちろん嫌にもならないけれど、「すごくいい!」ともならないかも。
―それ、一番よくない感想ですね!
でも、こういう曲は王道としてヒットするんだろうなって思います。
―そうやって客観的に理解している自分もいるんですね。
いるんですけど、なかなか自分がハマりはしないんだろうなっていう。
―じゃあ、ここにどんな要素があったら好きになりそうですか?
ドラムですかね。どこかでテンポが変わったりしてほしいと思っちゃう。あとは世界観かな! 私は非日常的なのが好きかもしれない。ねちょねちょしてるのとか、日常にはいないし、あれが日常だったらしんどいじゃないですか。ねちょねちょはハリーポッターで修羅場に向かっていく最中みたいなイメージで、こっちは日常です。
―でも、反応としては正しいですよ。等身大ってことですもんね。
そう。これはナチュラルに聴けてしまって、どこか違う場所に行く感じというか、違う世界観に浸る感覚がなくて、そのせいで引っかからないのかな。やっぱり、hideさんとかHYDEさんとかLArc-en-Cielって、独特な世界観があるし、等身大で語りかけてくるんじゃなくて、自分たちの世界から話をしているから、そこに憧れを持って勇気づけられるのかもしれない。自分にリンクするっていうよりも、自分からリンクしたいっていう。そうやって背中を押してもらうことが多いのかも。
―そこまで言われちゃったら次の曲、どうしようかなあ。
あはは!
「パンクはお客さんとの一体感があってこそって感じがする」
編集部からのお題 その6
BEST TIME AROUND - THE MUFFS
―これは単純に僕が大好きな曲です。(注:この取材は、THE MUFFSのKim Shattuckが亡くなる前に行われました)
私、自分が風邪引いたときの声が一番好きなんですよ。だから、本当にこういうハスキーな声が出る女性がうらやましくて。桑田佳祐さんが枕にわーって叫んで声を枯らしたっていう話があるらしくて、私もそれをやりたいんですよ。
―あはは!
本当にハスキーな女性がうらやましいんですよ。私の声はわりと高くて、ハスキーではないので、本当にうらやましい。バンドになると余計にうらやましいですね。
―でも、ハスキーな声が出る代わりに高い音が出なくなったらどうしますか?
それは悔しい! ハスキーな声ってカッコいいっていうのもあるけど、かわいくもあるんですよね。YUKIちゃんとかが理想ですね。歌いながらハスキーにもなるし、クリアにもなるし、あれは本当にうらやましいしかわいい。
―この曲はどうですか?
私は引っかからないかもしれない……。声は好きですけど……。
編集部からのお題 その7
WHY CANT WE BE FRIENDS - スマッシュ・マウス
あ、ラッパが入ってきた! これまでと全然違うヤツがきた。こういう感じの曲のほうが好きかも。ホーンが入ってるのもそうなんですけど、なんかディズニーみたいなテーマパークで流れててもよさそう!
―この曲はスカも入ってますね。
入ってますね! パンク全体に言えることかもしれないけど、音源を聴くよりもライブで観たいって感じです。ライブだったら私も楽しいんだろうなっていうのは思います。
―音源に物足りなさを感じるんですね。
もったいなく感じるというか、パンクはお客さんとの一体感があってこそって感じがするから。メタルは見せつけてナンボみたいなイメージがあって、バンドが自分に酔ってるのを見てこっちも酔うって感じだから一方的に来られてもいいんです。でも、パンクはこっちから参加することありきだと思うから、どれもライブで観てみたいって思いますね。みんなが踊ったり声を出してる感じが想像しやすい曲が多いし。メタルで声を出すっていうイメージはそんなにないんですよね。
―……ぐうの音も出ない。
あはは!(笑)
編集部からのお題 そ8
アンパンマン - SNUFF
あ! あれやん。日本の歌やん。すごい、頑張って日本語で歌ってる!
―そう。イギリスのバンドでSNUFFといいます。
これ、大の大人が聴きながら泣いてそう。
―あはは!
なんか理不尽なことがあって、一人で泣いてそう。それか、車に乗ってるときにこれがかかって、どこかで車停めて泣いてそう。車の中が一人になれる唯一の場所だから。
―ストーリーがしっかりしてますね(笑)。
こういう日本語のカバー曲は海外の人が歌ってるからこそのよさが絶対ありますよ。日本人が歌うよりもいい意味で楽観的じゃないですか。日本人だと気持ちが入っちゃうと思うし。曲の背景をそんなに理解しないで歌われるほうがこっちも気がラクになるというか。
―このバンド、ドラムボーカルなんですよ。
そうなんだ! 珍しいですね。
―で、奥さんが日本人なので、日本語のカバーが得意なんです。
え〜、私もそういう奥さんになりたい!
―コリィ・テイラーの奥さんに(笑)。
え〜、なりたいなりたい!(笑)