成長期の筋トレのやりすぎは背が伸びなくなる? そんな"都市伝説"が生まれるワケとは…

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連載「骨格筋評論家・バズーカ岡田の『最強の筋肉ゼミ』30限目」

「THE ANSWER」の連載「骨格筋評論家・バズーカ岡田の『最強の筋肉ゼミ』」。現役ボディビルダーであり、「バズーカ岡田」の異名でメディアでも活躍する岡田隆氏(日体大准教授)が日本の男女の“ボディメイクの悩み”に熱くお答えする。30限目のお題は「成長期の筋トレやりすぎは背が伸びない説」について。

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Q.高校1年生です。成長期に筋トレをやりすぎると、背が伸びないって聞いたんですが本当ですか?

 筋肉を鍛えすぎると、「成長を阻害する」とか「背が伸びない」という話は、よく聞く「筋肉都市伝説」の一つですよね。この説の真偽についてですが、現段階では因果関係を証明するデータはありません。

 骨の成長は、骨端線という骨の末端にある軟骨組織が源です。これが損傷すると成長が阻害されますが、そもそも子どもの筋トレで骨端線が損傷するほどの負荷をかけることは難しいでしょう。可能性はゼロではありませんが、たくさん筋トレをしたから背が伸びないとは、考えにくいと思います。

 なぜ、そのような説が絶えないのかを考えると、一つは筋肉が目立つ体操選手やボディビルダーとして活躍している人に、背が高くない人が多い傾向があるためかもしれません。筋トレで背が伸びないのではなく、体の小さい人の方が、体をコンパクトに操作しやすい(体操選手)、あるいは筋肉モリモリにみえやすい(ビルダー)、という可能性を考えるべきでしょう。

 背が高い(骨が長い)場合、コンパクトに素早く動かすには不利でしょうし(体操選手)、骨の長さに足りる十分な筋肉をつけるのは大変ですからね(ビルダー)。

 我々がテレビなどで目にするのはトップ選手ばかりです。要するに、適者生存で勝ち残ってきた選手ですから、これらの競技に有利な小さな骨格の選手をよく目にする故に、そういったイメージができ上がる、ということでしょう。

 筋トレを一生懸命やることで、成長に及ぼす心配点を挙げるとすれば、エネルギー不足です。成長期はただでさえ、筋肉と骨、両方の成長に必要なエネルギーや栄養がたくさん必要です。ですから、運動量に見合った食事をしっかり摂ること、そして、睡眠も十分にとって成長ホルモンを分泌させることがとても重要。この「運動して(運動)、食べて(栄養)、寝る(休養)」というよいサイクルができていないと、体が持つ成長の可能性を、最大限に伸ばせない可能性はあるでしょう。

早すぎる筋トレの目覚めは要注意「体をデカくするだけが正解ではありません」

 さて、思春期以降の体、だいたい高校2〜3年生になると、筋肉をデカくするトレーニング(限界まで筋肉を追い込む、いわゆるオールアウトするようなトレーニング)の成果を得やすくなります。非常に稀ではありますが、肉体的・精神的な才能がある高校生であれば、日本のトップクラスのボディビルダーに近い体に作り込める子もいます。

 しかし、早すぎる筋トレへの目覚めは、間違えるとコミュ障になる可能性もあるので要注意です。高校2〜3年生ぐらいですと、やったらやっただけ結果が出るようになりますし、面白くなってハマってしまう人はいると思います。しかし、筋トレは誰とも会話しなくてもできてしまう運動であり、ボディビルは練習相手がいなくてもできる競技です。つまり人と一緒に頑張るとか、練習相手に感謝をするというような、心の成熟を育む事にはつながりにくいかもしれません。

 もちろん、副次的には人とのコミュニケーション要素もあります。日体大にもバーバルクラブという部活動があり、そこには多くの同志がいます。ジムやSNS上で、筋トレ仲間同士の交流もあるでしょう。とはいえ、人ではなく筋肉と向き合うのが基本ですから、コミュニケーション能力の向上はほっておいても期待できるものではありません。

 筋トレを突き詰めるようになると、ひたすら己の肉体のみと向き合う生活を送るようになる人もいます。自分のプランに沿った食事と肉体改造のためのルーティンが最優先になり、友達との遊びも、メシ会もすべて断り、毎日、トレーニングにいそしむようになる。もちろん、人生を送る中で様々な学びと経験を経て、そこにたどり着くのはいいと思います。大人であれば「とにかくステージで輝ければいい」という選択も、いろいろわかった上でアリでしょう。

 しかし、思春期に筋トレを追求していった結果、図らずも人間関係を築けなくなってしまうのはツライ。自ら狙っていないのであれば、思春期にそのような人生は送って欲しくないなと思います。

 筋トレにハマることは否定しませんが、同時にスポーツもやるといいでしょう。筋トレの成果を競技にも生かせるだろうし、メンタル面の成長にもつながります。野球やサッカーといったチームスポーツに限らず、柔道のような個人種目でもいい。個人種目も練習相手がいなければ練習ができないので、人との関係性を学べますからね。

 思春期までに学び得たものは、後々、社会での生き方にもつながります。体をデカくするだけが正解ではありません。心もデカくしろ!(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)

長島 恭子
編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビューや健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌などで編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(共に中野ジェームズ修一著、サンマーク出版)、『つけたいところに最速で筋肉をつける技術』(岡田隆著、サンマーク出版)、『カチコチ体が10秒でみるみるやわらかくなるストレッチ』(永井峻著、高橋書店)など。

岡田 隆
1980年、愛知県生まれ。日体大准教授、柔道全日本男子チーム体力強化部門長、理学療法士。16年リオデジャネイロ五輪では、柔道7階級のメダル制覇に貢献。大学で教鞭を執りつつ、骨格筋評論家として「バズーカ岡田」の異名でテレビ、雑誌などメディアでも活躍。トレーニング科学からボディメーク、健康、ダイエットなど幅広いテーマで情報を発信する。また、現役ボディビルダーでもあり、2016年に日本社会人ボディビル選手権大会で優勝。「つけたいところに最速で筋肉をつける技術」「HIIT 体脂肪が落ちる最強トレーニング」(ともにサンマーク出版)他、著書多数。「バズーカ岡田」公式サイトでメディア情報他、日々の活動を掲載している。