大雨により道路が冠水する事態が多発しています。水深にしてわずか5cm程度の冠水でも要注意。特にアンダーパスは、通行止めにはなっていなくても、迂回を検討したほうがよいようです。

通行止め処置、追い付かず

 台風接近時など、強い雨のなかでクルマを運転する際、特に注意すべきポイントのひとつが、立体交差のアンダーパスにおける冠水です。


アンダーパス内の冠水に応じ、外の電光掲示板で「冠水注意」と表示する場所も(画像:東京国道事務所)。

 国土交通省 関東地方整備局によると、アンダーパスは周囲よりも路面が低くなっているため、内部が冠水した場合は通行止めなどの処置がなされますが、それに至っていなくても注意が必要だと話します。

「雨の状況にもよるので、アンダーパス内の水位が何センチに達したところで通行止めになるかは一概には言えません。都内の直轄国道(国土交通省が管理する国道)のアンダーパスであれば排水用のポンプも設置されていますが、雨が強くポンプによる排水が追い付かず、急激に水位が上がるケースもあります」(国土交通省 関東地方整備局 東京国道事務所)

 東京国道事務所によると、都内の直轄国道では冠水の水位に応じて、アンダーパス入口の電光掲示板で「冠水注意」の表示を出したうえで、国土交通省の職員あるいは委託業者が現場へ向かい通行止め作業を行っているといいます。しかし、それでは遅いケースもあるようです。

 総務省が2018年に中部地方の道路管理者を対象に行った調査によると、対象の道路では2015年から2017年の3年間で計30台がアンダーパス内で水没、そのうち1台ではドライバーが死亡しており、「特に近年はいわゆるゲリラ豪雨により、想定以上に早期に(アンダーパスが)冠水してしまうことに各道路管理者は苦慮している」としています。

 東京国道事務所は、「アンダーパスの内壁などが水に浸かっているようなケースは、もはや普通ではありません。大雨時にアンダーパスを通行する場合は、『何かあるかも』と思ってほしい」と話します。

5cmの冠水でも危ない!

 JAF(日本自動車連盟)は、水深5cmから10cmほどの比較的浅い冠水路でも、慎重に運転すべきとしています。

「一般的に走行可能とされる水深は、乗用車であればドアの下端で、床の低いクルマでもおおむね水深15cmくらいまでは走行できます。しかし、川が氾濫して道路が泥水をかぶっていると、5cm程度の水深でも水面下の状況がわからず、側溝などに脱輪して動けなくなる恐れがあります」(JAF九州支部)

 JAF九州支部によると、2019年にしばしば大雨に見舞われた九州では、車両が水没するケースと、側溝などにはまり動けなくなるケースのどちらも多かったといいます。「もちろんアンダーパスも極力避けるべきです。大丈夫だと思って通行し、脱輪や落輪により動けなくなると、あっという間に水位が上がります」と警告します。


冠水路の例。奥でクルマが引き返している(画像:写真AC)。

「クルマが動けなくなり、水がフロアに入ってきた時点で、その場から避難することを考えたほうがいいでしょう。そのまま水位が上がると、水圧でドアが開かなくなるほか、エンジンルーム内のバッテリーが水に浸かれば電機系統がショートし、窓も開かなくなる恐れがあります」(JAF九州支部)

 こうなってしまった場合は、水が引くまでクルマを放置するとともに、JAFや販売店に連絡してほしいそうです。また、たとえ水が引いたとしても、すぐにエンジンをかけるのは禁物だといいます。配線の腐食による漏電で車両火災が発生する恐れがあるからです。JAF九州支部は「極力、(JAFなどの)ロードサービスの到着を待つべき」と話します。