試合前、中国国歌を拒んで“自分たちの国歌”を熱唱する香港サポーターたち。この抗議活動も世界中のメディアに取り上げられた。(C)Getty Images

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 混迷が続いている香港で、ワールドカップ・アジア2次予選のゲームが開催された。

 現地9月10日、香港スタジアムで行なわれたのは香港代表対イラン代表の一戦だ。香港は守備を固めて鋭いカウンターを何度か繰り出したものの、やはり力の差は歴然。23分にアズムンに先制点を決められると、54分にはアンサリファルドにリードを広げられ、強豪イランの後塵を拝した。

 その一戦のキックオフ前だ。国歌斉唱の際に、耳をつんざくような大ブーイングが会場にこだました。香港サポーターが中国国歌に対して、予告通りの強い抗議活動に出たのである。ピッチに対して大多数のファンが背中を向け、「BOO」と書かれた紙を掲げて声を絞り出したのだ。一方で、イランの国歌に対しては大きな拍手が贈られた。

「逃亡犯条例」の改正案を発端とした混乱は、いまだ終息の気配を見せていない。今回のイラン戦を前に、サポーター間ではSNSなどを通じて国際社会にアピールしようとの向きを強くなり、「香港は中国の領土ではない!」「自由を掴もう!」などの横断幕がそこかしこに掲出された。そして彼らは、非公式ながら自分たちの国歌と自負する『Glory to Hong Kong(香港に栄光を)』を大合唱したのである。

 
 フランスの通信社『AFP』は「僕たちの要求をアピールするためには、フットボールの試合がもっとも平和的なんだ」という香港ファンのコメントを紹介し、「以前から香港代表の試合において中国国歌はブーイングの対象となっていたが、今回の1万4000人によってなされたそれは、かつてないほどの大音量だった」と伝えている。

 アジア2次予選で1分け1敗の香港は、グループCで最下位(5位)に沈んでいる。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部