こうした課題を解決するため、採用チャネルの多様化やプロセスの最適化などを支援する新しい手法を提供するサービスも出てきている。そのため、これまでの「待ち」から「攻め」の採用手法へ転換し、候補者を積極的に発掘する企業が成果を上げている。

 そして、企業が候補者に直接アプローチするダイレクト・リクルーティングへの採用担当者の関心は年々高まっている。

 外資系・グローバル人材専門の求人サイト「キャリアクロス」を運営するシー・シー・コンサルティング社長の平山博之氏は「これまでは規模が大きい外資系企業だけが取り組んでいましたが、現在では日系企業でも広がっています。採用競争が激しさを増す中で必要な人材を採用するためには、求職者からの応募を待つだけではなく、潜在的な候補者にもアプローチしていくことが欠かせなくなっています」と話す。

 ダイレクト・リクルーティングでは、これまで人材紹介会社に任せていた「候補者集め」と「候補者とのコンタクト」を採用担当者が担わなければならない。候補者を集めるには、自社サイトの採用ページの最適化、有効な求人メディアの選択、SNSの活用、リファラル(社員紹介)の強化、候補者データベースの構築などが必要になる。

 採用が必要になったら、データベースから最適な候補者を抽出してメールや電話で連絡を取るが、候補者は転職希望者でないこともあるため慎重に接触して面談を説得しなければならない。

 求人サイトを利用する場合は、登録者にスカウトメールを出す機能があるのでふさわしい人材を探してアプローチする。この場合は相手が転職希望者であるためコンタクトは容易だが、他の企業や人材紹介会社も同じデータベースを閲覧しているため他社より早く連絡を取ったり、候補者から返信があるような関心を持たれるスカウトメールを出して面談に導く。

 例えば、「キャリアクロス」ではサイトオープン時からスカウト機能を備えていたが、従来は主に人材紹介会社による利用が想定されていた。今は、企業の採用担当者がいかにスカウト機能を上手く使いこなせるかが重要になっているという。

 そして、採用の成功につながっている企業は「企業紹介特集ページで積極的にPRしたり、求人の魅力やキャリアステップを募集要項やジョブ・ディスクリプション(職務記述書)にしっかり記載するといった工夫を行っています」(平山氏) 新卒採用でもバイリンガルの学生に対して積極的にアプローチする外資系企業の動きが見られる。インターンシップに力を入れ、早期から優秀な学生への接触を図る有力な日本企業が出てきたことで、採用の競争相手が増えているからだ。

 人材サービス会社ディスコがバイリンガル人材の就職活動のために毎年開催している「キャリアフォーラム」は、開催地をボストン、ロサンゼルス、サンフランシスコ、東京、大阪、ロンドン、シドニー、上海へと拡大している。

 同社グローバル営業推進部の山粼真司副部長は「キャリアフォーラムにはフルタイムのポジションはもちろん、インターンシップポジションや企業研究を目的とした学生も多く参加しています。そのため、出展企業側も翌年度の入社だけではなく、インターンシップ参加者の獲得を狙いとするケースが増えています」と説明する。

 日本での知名度不足は外資系企業の採用の大きな悩みとなっているため、同社はイベント型のキャリアフォーラムだけでなく、「オンラインキャリアフォーラム」を開設して、バイリンガル人材向け求人掲載やスカウトサービスに力を入れる。 「攻め」の採用へ転換して成果を上げていくためには、これまでのリクルーティング体制では不十分なことが多い。専任のリクルーターを配置する企業も出てきているが、採用の専門スキルを備えた人材を確保するのは簡単ではない。こうした企業に対して、採用力を高めるためのコンサルティングや採用業務のアウトソーシングを提供するのがRPOサービスだ。