学生にとって「印象の良かったインターンシップ」を実施する企業の特徴は?(画像:kikuo/PIXTA)

今やインターンシップは就活の最大イベントになりつつある。2021年卒学生をメイン対象としたサマーインターンシップが、今、真っ盛りとなっている。

本来は学生に長期の就業体験を与え、成長の糧にするものだったが、この数年で1Dayと称される短期インターンシップが急増し、実質的な会社説明会、学生とリクルーターを結びつける接触機会になっている。

重要性が増しているだけに、魅力あるインターンシップにする工夫が欠かせない。どのようなインターンシップを学生は歓迎しているのか? 


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HR総研は、「楽天みん就」と共同で、2020年卒就活生を対象に「印象の良かったインターンシップ」(2018年6月〜2019年2月実施分)を調べている。その結果を紹介したい。この設問に1588人の就活生が回答しているが、1人1社しか投票できない。つまり、最も印象の良かった企業のインターンシップのランキングである。

1位は三井住友海上火災保険

近年の就職人気企業ランキングでは航空系2社(ANAとJAL)がトップと2位を占めることが多いが、今回のインターンシップ調査ではトップ10に入ったものの4位と5位にとどまっている。そして、最も多くの評価を得たのは三井住友海上火災保険だった。

コメントを読むと、なぜか早慶大クラスの学生からの支持が多く、1Dayと5日間のプログラムがあることがわかる。

「1Dayのものだったが、社会人で必要なスキルを体感できたと感じたから」(文系・早慶大クラス)

「5日間で営業ワークや新規事業立案などいろいろできたから」(文系・早慶大クラス)

プログラムの中身も充実しているようだ。多種多様なものがあり、就活本番の予行演習としても好適な経験になったはずだ。

インターンシップのフォローアップがあったから。プレゼンやグループワーク、ロールプレイングなど様々なプログラムがあった」(文系・早慶大クラス)

「あらゆる種類のグループワークが盛り込まれていて、内容の濃いインターンシップだったから」(文系・上位私立大)

そして好感度を上げているのは「フィードバック」だ。きちんと学生の発表を聞いて講評を返している。こういうフォローによって学生はコミュニケーション実感を持つはずだ。

「発表ごとにしっかりしたフィードバックがある」(文系・早慶大クラス)

「フィードバックが細かくある」(文系・上位国公立大)

参加型ゲームで好評のニトリ

2位のニトリインターンシップはゲーム主体のプログラムになっており、好評だ。短期のインターンシップは講話主体の説明会になりがちだが、演壇からの話は退屈だ。参加型プログラムは学生を飽きさせないのだろう。

「雰囲気がよく、社員の方の人柄もよかったため。グループワークゲームや自己分析を行った」(文系・旧帝大クラス)

「1日のインターンシップで、実際の配転教育などを体感できたから」(文系・早慶大クラス)

「業務内容を理解しやすいボードゲーム」(文系・早慶大クラス)


インターンシップ好感度3位はJTBグループだ。好感度の高いインターンシップはゲーム形式のものが多いが、JTBグループは正攻法だ。コメントを読むと、グループディスカッションで企業や業務への理解を深め、法人営業を擬似的に体験させている。

人事や社員の印象が良いと感じる学生が多い。接客は業務で鍛えられているから、評判がいいのは当然だろう。

「人事、内定者の印象がとても良かったから」(文系・旧帝大クラス)

「法人営業体験。社員さんのサポートが手厚く、具体的なFBを頂くこともできた」(文系・早慶大クラス)

「旅行商品造成企画体験」(文系・早慶大クラス)

JALとANAは「社員が親切」

エアライン系2社の就職人気は高いが、ほとんどの調査でANAが上位になる。たぶん国内線、国際線ともに旅客数首位ということが影響しているのだろう。しかし、今回のインターンシップ好感度調査では、JALが4位、ANAが5位になった。

JALのインターンシップでは、新規事業立案を新鮮に感じた学生が目立つ。「パイロットインターン」という言葉もあるから、いろんな職種向けインターンシップを実施していたようだ。

「新規事業立案、社員座談会」(文系・旧帝大クラス)

「社員さんがとにかく親切だった。内容はパイロットインターンで、機長、副機長の方のお話が聞けたり、シミュレーター体験をしたりした」(文系・上位私立大)

「社員の方がとても優しかった」(文系・上位私立大)

JALでも社員への評価は高かったが、ANAも負けていない。「雰囲気」「温かかった」「和気あいあい」「親切丁寧」「気遣い」と、絶賛と言ってもいい。エアラインは旅客サービス業だから接客サービスに長けているのは当たり前とも言えるが、インターンシップに参加した学生の志望度は間違いなく上がっただろう。

「職場の雰囲気をつかみやすかった」(文系・中堅私立大)

「就活生に対しての気遣いがすごい」(理系・その他国公立大)

「一人ひとりの学生に最初から最後まで親切丁寧な対応をしてくれた」(文系・上位私立大)

6位の三菱UFJ銀行インターンシップは本格的な印象を受ける。専門性が高く、涙するほど感動する内容とはただ事ではない。また、自行や銀行業界だけでなく、他業界への批評も話してもらえるようだ。聞いてみたいものだ。

「非常に専門性の高いプログラムを行っていたから」(文系・中堅私立大)

「感動して涙が出た。素晴らしい仕事だと思った」(文系・その他私立大)

「他業界を暗にディスっている内容で面白かったから」(文系・早慶大クラス)

7位の東京海上日動火災保険インターンシップでも、社員の人間力を評価する学生が多い。期間は5日間と長く、一緒に過ごす大人(社員)が自分たちを理解しようとしてくれれば、感激するだろう。

豪華な昼ご飯に驚いている学生がいるが、どんなランチだったのだろうか? 食べてみたい。

「社員の方がとても丁寧に接してくださったから」(文系・旧帝大クラス)

「人が良かった。特にメンターが支えてくれた」(文系・早慶大クラス)

「お昼ご飯が豪華だった!」(文系・上位国公立大)

キーエンスは「自己分析合宿」

合宿形式でインターンシップを行うのが同じく7位のキーエンスだ。内容は自己分析だ。下記のコメントを読むと、宣伝は一切しないようだ。設計業務を体験させたり、掘り下げて自己分析をさせたりとハードに見えるが、学生は喜んでおり、「利益度外視」の姿勢を評価している。理系からの支持が多い。

「企業宣伝より学生のことを考えたプログラムだった。就職活動で大切にすべきことなどについてのプログラム」(文系・早慶大クラス)

「自己分析を非常に深くできた」(理系・旧帝大クラス)

「設計の業務体験ができたこと」(理系・旧帝大クラス)

「利益度外視でお金をインターンシップにかけていたから」(理系・旧帝大クラス)

9位はソニー。「ソニー神話」という言葉がある。Appleのスティーブ・ジョブズ氏もソニー製品に一目置いていたそうだが、現在でも理系学生にとって「ソニー」は憧れの的のようだ。なにしろ印象が良かった理由が「職場に入れた」ことなのだ。ほかの企業ではこんな理由は出てこない。


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コメントから正確な日数は不明だが、数日以上であることは間違いない。部署配属でのOJTだけでなく、他部署の社員との懇談会もあり、プログラムが練られている。

「職場に入れたから」(理系・旧帝大クラス)

「職場体験、社内見学」(理系・早慶大クラス)

「担当部署に配属され、OJT形式で取り組んでいく。最終日に成果報告をする。途中で様々な職種の社員との懇談会も用意されていて、多方向から意見を聞くことができた」(理系・上位国公立大)

ゲーム形式のウケが良い

10位の明治安田生命保険インターンシップは楽しそうだ。コメントから若者が集まる風景が浮かび、にぎやかな様子がわかる。グループ発表の優勝チームにはゴディバの菓子が与えられるそうだが、獲得チームはきっと盛り上がったことだろう。

「明治安田生命のインターンシップで、グループ発表の優勝チームにはゴディバが与えられたこと」(文系・早慶大クラス)

「長期だったため社員の方とも仲良くなれた」(文系・上位私立大)

「短い時間でも自分たちで考える時間やワークがあり、積極的になれるプログラムだったのが好印象」(文系・その他国公立大)

同じく10位のジェーシービーインターンシップはゲーム形式で行われ、グループワークも取り入れられている。もしかするとゲームをグループでやるのかもしれない。

こういう形式は学生の好感度が高いのだが、職種、業界や企業をより深く理解してもらうためには、ゲームを作り込み、レベルを上げていく必要がある。毎年の反省をもとに改良していけば磨かれていくはずだ。

「事業内容をゲーム形式で体感でき、分かりやすかった」(理系・旧帝大クラス)

「ゲーム形式でクレジットカードの加盟店増加、取扱額増加の戦略を考えたこと」(文系・上位私立大)

今回紹介したトップ10では、ゲーム形式のインターンシップに好感を抱く学生が多かったが、職場配属型のインターンシップを経験して企業や業務への理解が深まったという学生も目立つ。

これが本来のインターンシップと言うべきだが、ゲーム形式インターンシップも増えている。その理由は、学生が楽しく学べるようにするための工夫と、職場の協力を得ることなく、受け入れ人数を増やすことが可能だからだ。どの形式で開くにしても、学生を受け入れるための知恵が必要だ。