by Ted Van Pelt

スマートフォンの普及によって、街を歩いていても手元の小さな画面を見るために常にうつむき加減の姿勢を取る人をよく見かけるようになりましたが、スマートフォンを操作するためにうつむきがちな生活を送ると、首の骨や筋肉に負担がかかって体に悪影響が出ることも。そんな中、特にスマートフォンをよく使う現代の若者たちの間で、頭蓋骨と脊椎の接合部近くにある「外後頭隆起」と呼ばれる骨がどんどん伸びているという驚きの調査結果が報告されています。

A morphological adaptation? The prevalence of enlarged external occipital protuberance in young adults - Shahar - 2016 - Journal of Anatomy - Wiley Online Library

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/joa.12466

Humans Are Growing Weird, Bone Spikes on Their Skulls. Smartphones May Be the Culprit.

https://www.livescience.com/65711-humans-growing-bony-skull-spikes.html

2016年、サンシャインコースト大学の健康科学者であるデヴィッド・シャハール氏率いる研究チームは、18〜30歳の患者218人のX線写真を調査しました。外後頭隆起は通常だとおよそ5mmほどの大きさですが、全体のおよそ41%の患者で10mm以上の外後頭隆起の突出が見られ、10%は20mm以上にまで成長していたとのこと。また、外後頭隆起の突出は女性患者よりも男性患者の方に多く見られ、最大で35.7mmも突き出していたそうです。

さらに、シャハール氏は2018年に行った研究で、18歳から86歳までの1200人を対象に外後頭隆起の肥大を調査しました。すると、調査対象グループ全体の33%で外後頭隆起が10mm以上に成長していたそうですが、30代・40代・50代のグループに比べて18〜29歳のグループでは2倍以上の割合で外後頭隆起突出が見られたとのこと。

以下の画像は28歳の男性(上)と58歳の男性(下)のX線写真で、黄色い矢印で指し示されているのが外後頭隆起です。28歳の男性は27.8mm、58歳の男性は24.5mmも突出しているのがわかります。



直立2足歩行を行うヒトは、およそ4〜5kgほどの重さもある頭部を脊椎で支えています。しかし、うつむいて背中を丸めるような前傾姿勢を多くとると、どうしても首の骨をはじめとした脊椎に負荷がかかり、腕にしびれや痛みを覚えたり、頭痛やめまいなどの自律神経症状などが引き起こされたりします。これらの症状は「ストレートネック」あるいは「テキストネック」と呼ばれ、現代病の1つに数えられます。

重い頭部を支えるため、テキストネックでは特に頭部と首の接合部に圧力がかかりがち。シャハール氏は「外後頭隆起の突出が若年層に比較的多く見られる」というこれまでの研究結果から、スマートフォンを見るために首を前傾に曲げることで頭部と首の接合部にかかる圧力が生まれ、これを分散するために外後頭隆起が突出したのかもしれないと推測しています。



by Claudio Alvarado Solari

シャハール氏は「外後頭隆起の突出が医学的な問題を引き起こすことはめったにありませんが、もし不快感や違和感を覚えるのであれば、まずは姿勢を改善してみてください」と述べました。