今大会で2ゴールの宮代大聖も韓国戦では無得点に終わった。(C) Getty Images

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 宿敵・韓国に敗れてベスト16敗退は、当然悔しい。圧倒的に攻め続けながらも、決定機をフイにして、逆にワンチャンスを決められた。あと一歩だったのかもしれないが、16強はある意味、日本の限界でもあった。力を出し尽くした末の結果である。

 そもそも、メンバー選考の段階から、日本は難局に立たされていた。久保建英、安部裕葵、大迫敬介がA代表のコパ・アメリカ招集のために選外となり、この世代では代表の常連だった橋岡大樹、谷晃生、滝裕太も負傷によって本大会に間に合わなかったのだ。

 ただ、主力不在でも選ばれたメンバーが意地を見せる。エクアドル戦の前半こそ初戦の硬さがあったものの、ハーフタイムに影山雅永監督が檄を飛ばして勇敢さを取り戻した日本は、68分に山田康太がネットを揺らして同点にした。

 続くメキシコ戦は前節の反省を活かし、3−0で完勝。とりわけ、相手エースのディエゴ・ライネスを潰した包囲網は素晴らしく、決定的なピンチはほとんどなかった。
 
 第3戦のイタリア戦から限界が見え隠れし始める。

 今大会のレギュレーションでは各グループ3位の上位4チームも決勝トーナメントに進出できる。第3戦は引き分け以上でグループステージ突破を決められる状況だった。中2日の3連戦を考慮すれば、ターンオーバーの選択肢もあったかもしれない。だが、「イタリアに勝って1位で(決勝トーナメントに)行ってやろう」(影山雅永監督)として、スタメンの入れ替えは最小限にとどめた。郷家友太、宮代大聖、藤本寛也に休養を与え、三國ケネディエブスと西川潤が初先発を飾った。
 
 結果的には大幅ターンオーバーをした引き分け狙いのイタリアを崩せず、スコアレスドロー。1位突破を逃しただけでなく、田川亨介、斉藤光毅が負傷離脱し、アタッカーを同時に2枚も失ってしまった。
 
 満足に選手を選べないなか、強敵揃いの“死の組”と目されていたグループBを通過に導いた影山監督の手腕は素晴らしい。ただ、そこに余力はなかった。三國と西川はイタリア戦でチャンスを活かせたとは言い難いし、他のサブメンバーに至っては出番を与えてもらえるほどアピールできていたかと言われると、疑問符が付く。
 
 幸い、手負いの状態だったなか決勝トーナメント1回戦まで中5日となったのは大きかった。チームの核である郷家、宮代、藤本がコンディションを回復させられている。
 
 迎えた韓国との決戦では、田川の代わりに郷家、斉藤光の代わりに西川を起用。前半は5バックで守備を固めてきた韓国の牙城を崩せなかったが、後半になると、4バックにして相手が攻勢に出た影響もあって試合はオープンになった。

 50分、こぼれ球を拾った齊藤未がゴール前に山なりのボールを送り、これに宮代が反応。シュートは相手GKに弾かれたものの、郷家が詰めてゴール……と思われたが、VARで宮代がオフサイドと判定され、得点とはならなかった。
 
 その後は、70分に中村敬斗がヘッドで、76分にはCKから小林友希もヘディングで、78分にはゴール前のこぼれ球を宮代が詰めたが、どれも惜しくもゴールとはならなかった。
 
 すると84分、自陣で菅原由勢がボール奪取後のパスをカットされると、そのままクロスを供給され、ゴール前のオ・セフンにヘッドで決勝点を決められてしまった。
 
 複数の決定機に「惜しかった」と見る人もいるだろうし、VARによるゴール取り消しに「不運」と感じる人もいるだろう。ただ、キャプテンの齊藤未は「点を取ったチームが勝つのがサッカー。点を取れなかった僕らが負けて、点を取った韓国が勝った。本当にシンプルなゲーム」と言い切った。その通りである。日本には決定力という面で、韓国よりも実力が劣っていたのだ。

 敗退が決まると、良くないと思っていても、ないものねだりしてしまうのが人間の性である。「久保建英だったら、点が入っていたかな」「大迫敬介だったら、あの失点は……」。「たら・れば」を言っても仕方がないことは承知しているが、どうしてもそんなことが頭に浮かんだ。
 
 正直に言えば、グループステージの期間にはそんな感情は忘れていた。強敵揃いのなかで本当に素晴らしい快進撃だった。ただ、影山監督や選ばれた選手たちの力を出し尽くした結果、16強の壁に直面したのである。だからこそ、齊藤未は敗退後に「やることは全部やった」と言う。
 
 そして、キャプテンはこう話した。
 
「もう終わったので。次はキャプテンマークを巻いて10番で立ってやろうと思います。東京五輪は18人ですけど、そこに全員で選ばれよう。オリンピックじゃなくてもA代表で選ばれるチャンスはみんなあるから、まずは日本に帰って切り替えてやろう」
 
 すでに同世代のトップランナーはA代表入りを果たしている。宿敵に突き付けられた限界は、次に進むべき目標を示すものだった。
 
取材・文●志水麗鑑(サッカーダイジェスト編集部)