【U-20W杯総括】主力不在も強敵揃いの“死の組”を突破。一方で宿敵に突き付けられた決定的な差
![今大会で2ゴールの宮代大聖も韓国戦では無得点に終わった。(C) Getty Images](https://image.news.livedoor.com/newsimage/stf/9/7/970ef_1429_c4eae60b_f797cbc3-m.jpg)
そもそも、メンバー選考の段階から、日本は難局に立たされていた。久保建英、安部裕葵、大迫敬介がA代表のコパ・アメリカ招集のために選外となり、この世代では代表の常連だった橋岡大樹、谷晃生、滝裕太も負傷によって本大会に間に合わなかったのだ。
続くメキシコ戦は前節の反省を活かし、3−0で完勝。とりわけ、相手エースのディエゴ・ライネスを潰した包囲網は素晴らしく、決定的なピンチはほとんどなかった。
第3戦のイタリア戦から限界が見え隠れし始める。
今大会のレギュレーションでは各グループ3位の上位4チームも決勝トーナメントに進出できる。第3戦は引き分け以上でグループステージ突破を決められる状況だった。中2日の3連戦を考慮すれば、ターンオーバーの選択肢もあったかもしれない。だが、「イタリアに勝って1位で(決勝トーナメントに)行ってやろう」(影山雅永監督)として、スタメンの入れ替えは最小限にとどめた。郷家友太、宮代大聖、藤本寛也に休養を与え、三國ケネディエブスと西川潤が初先発を飾った。
結果的には大幅ターンオーバーをした引き分け狙いのイタリアを崩せず、スコアレスドロー。1位突破を逃しただけでなく、田川亨介、斉藤光毅が負傷離脱し、アタッカーを同時に2枚も失ってしまった。
満足に選手を選べないなか、強敵揃いの“死の組”と目されていたグループBを通過に導いた影山監督の手腕は素晴らしい。ただ、そこに余力はなかった。三國と西川はイタリア戦でチャンスを活かせたとは言い難いし、他のサブメンバーに至っては出番を与えてもらえるほどアピールできていたかと言われると、疑問符が付く。
幸い、手負いの状態だったなか決勝トーナメント1回戦まで中5日となったのは大きかった。チームの核である郷家、宮代、藤本がコンディションを回復させられている。
迎えた韓国との決戦では、田川の代わりに郷家、斉藤光の代わりに西川を起用。前半は5バックで守備を固めてきた韓国の牙城を崩せなかったが、後半になると、4バックにして相手が攻勢に出た影響もあって試合はオープンになった。
50分、こぼれ球を拾った齊藤未がゴール前に山なりのボールを送り、これに宮代が反応。シュートは相手GKに弾かれたものの、郷家が詰めてゴール……と思われたが、VARで宮代がオフサイドと判定され、得点とはならなかった。
その後は、70分に中村敬斗がヘッドで、76分にはCKから小林友希もヘディングで、78分にはゴール前のこぼれ球を宮代が詰めたが、どれも惜しくもゴールとはならなかった。
すると84分、自陣で菅原由勢がボール奪取後のパスをカットされると、そのままクロスを供給され、ゴール前のオ・セフンにヘッドで決勝点を決められてしまった。
複数の決定機に「惜しかった」と見る人もいるだろうし、VARによるゴール取り消しに「不運」と感じる人もいるだろう。ただ、キャプテンの齊藤未は「点を取ったチームが勝つのがサッカー。点を取れなかった僕らが負けて、点を取った韓国が勝った。本当にシンプルなゲーム」と言い切った。その通りである。日本には決定力という面で、韓国よりも実力が劣っていたのだ。
敗退が決まると、良くないと思っていても、ないものねだりしてしまうのが人間の性である。「久保建英だったら、点が入っていたかな」「大迫敬介だったら、あの失点は……」。「たら・れば」を言っても仕方がないことは承知しているが、どうしてもそんなことが頭に浮かんだ。
正直に言えば、グループステージの期間にはそんな感情は忘れていた。強敵揃いのなかで本当に素晴らしい快進撃だった。ただ、影山監督や選ばれた選手たちの力を出し尽くした結果、16強の壁に直面したのである。だからこそ、齊藤未は敗退後に「やることは全部やった」と言う。
そして、キャプテンはこう話した。
「もう終わったので。次はキャプテンマークを巻いて10番で立ってやろうと思います。東京五輪は18人ですけど、そこに全員で選ばれよう。オリンピックじゃなくてもA代表で選ばれるチャンスはみんなあるから、まずは日本に帰って切り替えてやろう」
すでに同世代のトップランナーはA代表入りを果たしている。宿敵に突き付けられた限界は、次に進むべき目標を示すものだった。
取材・文●志水麗鑑(サッカーダイジェスト編集部)