産経新聞は2019年春の採用を激減させた

写真拡大

例年は数十人規模で新卒採用を行っている全国紙の中で、産経新聞の2019年春入社に向けた内定者がわずか2人だとして、波紋を広げている。産経が18年春入社に向けて内定を出したのは38人で、わずか1年で激減させているのだ。

大手紙はここ10年で2〜3割程度部数を落とす厳しい状況が続くが、ここまで採用を絞ったのは産経だけだ。一体何があったのか。

他社は男女ともに二ケタ確保する中で...

今回の事態が明らかになったのは、日本新聞協会の「新聞協会報」がきっかけだ。協会報では毎年新聞・通信各社の採用動向を特集しており、19年は2月19日付の紙面で掲載された。それによると、19年春の入社予定者は、朝日新聞が72人(うち女性25人)、毎日新聞が61人(同32人)、読売新聞が80人(同22人)、日本経済新聞が52人(同20人)、共同通信が55人(同26人)、時事通信が39人(同22人)といった具合で、男女ともに二ケタを確保している。そんな中で、産経に入社するのは記者1人、ビジネス職1人の2人。2人とも男性だ。

18年の新聞協会報の特集によると、産経が17年度(18年春入社)に内定を出したのは38人で、そのうち12人が女性だった。職種も多岐に及び、取材記者10人(うち女性4人)、サンケイスポーツ10人(同2人)、写真記者2人、夕刊フジ1人、販売3人(同1人)、営業・事業8人(同2人)、情報システム・技術3人(同3人)、総務1人といった具合だった。

産経新聞の17年度の売上高(単体ベース)は前期比2.6%減の736億500万円で、本業のもうけにあたる営業利益は同12.7%減の6300万円だった。日本ABC協会の調べによると、08年下期に213万288部あった産経新聞朝刊の部数は、18年下期には145万1451部に。10年で31.9%減らしている。ただ、朝日、毎日も10年で3割程度、読売・日経が2割程度部数を減らしており、産経だけが飛びぬけて部数を大きく減らしているわけではない。

取材・販売網縮小のしわ寄せ?

にもかかわらず、産経だけ採用が減るのはなぜなのか。一般的に考えられるのが、支局を統廃合するなどして必要人員が減った場合、その人員を配置転換した分新規採用を抑える方法だ。産経は18年だけで高知、徳島の両支局を閉鎖している。今後も取材網の縮小が続く可能性があることに加えて、販売網も他紙に委託したり郵送に切り替えたりして縮小する可能性が指摘されている。

産経新聞社広報部はJ-CASTニュースの取材に対して、19年春の新卒入社は記者1人、ビジネス職1人の計2人と認めた一方で、採用が激減した理由については、

「人事施策についてはお話ししておりません」

と回答した。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)