「順調とは言えない厳しい決算」という三菱UFJフィナンシャル・グループの平野信行社長(記者撮影)

3メガバンクグループの2019年3月期中間決算が14日に出そろった。当期純利益ベースの進ちょく率(通期予想数値に対する上期実績の割合)は6〜7割となるなど、各社の業績は期初想定よりも好調に推移している。

メガ最大手の三菱UFJフィナンシャル・グループの当期純利益は前年同期比3.8%増の6507億円。与信関連費用で1179億円の戻入益を計上したことに加え、持分法会社であるアメリカのモルガン・スタンレーの業績も好調だった。

三井住友フィナンシャルグループの当期純利益も、前年同期比12.4%増の4726億円。期初想定を1626億円も上回った。法人向けやカード関連の手数料ビジネスが好調だったほか、2018年2〜3月に関西アーバン銀行とみなと銀行を非連結化したことによる経費減少と与信関連費用の戻入益が寄与した。

前期減益のみずほも順調だが…

一方、前期に3メガバンクで唯一、連結最終減益に沈んだみずほフィナンシャルグループの純利益は、前年同期比13.4%増の3593億円だった。通期の予想当期純利益5700億円に対し、進ちょく率は63%とここまでは好調だ。手数料収入が伸長したことに加え、与信関係費用の戻入益や政策保有株式の売却益も利益を押し上げた。


3メガバンクとも一見好調に見える決算だが、今後の見通しが明るいとは言えないようだ。三菱UFJの平野信行社長は「本業である業務純益が大幅な減益となり、順調とは言えない厳しい決算だ」と表情を引き締める。

その大きな要因はマイナス金利と競争激化による利ザヤ(調達と運用の金利差)の縮小だ。平野社長は「大企業(向け)ではほぼ下げ止まったが、中小企業(向け)や引き続き低下の傾向が著しい」と話す。

本業の利益である業務純益がプラスとなった三井住友とみずほの2社も、収益柱である傘下銀行(三井住友銀行、みずほ銀行)の国内資金利益は前年比マイナスとなった。


ビジネス環境も不透明感を増しており、各社は慎重な見方を強める。その見方は下期の見通しに顕著に現れている。上期の実績は期初想定を上回っているにもかかわらず、三井住友とみずほの2社は従来の予想を据え置いた。唯一上方修正を行った三菱UFJも、上期に利益が2000億円上ぶれたのに対し、通期の上方修正幅は1000億円にとどまる。「実質的に下期の下方修正」(平野社長)という。

米中貿易摩擦の深刻化に加え、アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)の利上げにより、市場のボラティリティは拡大。日米の株価は乱高下している。

ATM共通化にも踏み出す

こうした厳しい事業環境の中で、メガバンク各社に求められるのは業務の効率化と収益力の強化だ。支店の統廃合や人員削減など経費削減に努めているほか、三菱UFJと三井住友はATMの相互開放に踏み切ろうとしている。

相互開放の対象として検討されているのは、両行が運営する支店外のATM約2000カ所以上だ。他行のATMを利用する場合、現在は平日昼間で108円の手数料がかかるが、相互開放することで無料化される。

ATMの運営は銀行にとって大きなコスト要因だ。三井住友の國部毅社長は「競争する部分と共同で進める部分を考えていく必要がある。ATM以外にも(決済に用いられる)QR(コード)の統一化など、インフラの部分は各社共同してコストを下げていく」と語る。将来的には他銀行を巻き込み、さらなる効率化を進めたい考えだ。

今回の相互利用に参加していない、みずほの坂井辰史社長は「ATMのコストは銀行界共通の問題だ。外部との積極的な連携、内部でのスクラップアンドビルドを検討していく」と話すにとどまる。コスト削減策として、今後もっと大胆な提携や共同化プロジェクトが飛び出すかもしれない。