夫婦とは、不思議なものである。赤の他人同士が一緒になり、そして家族となって家庭を築いていく。

しかし、厚生労働省が発表している人口動態統計調査によると、2017年度で21万2,000組の夫婦が離婚している。

-永遠の愛を誓いますか?

そう誓ったはずなのに、どうして離婚を選んだのか。踏み留まった方が良かったのか、それとも離婚して正解だったのか…。当人たちにしかわからぬ事情。

この連載では、離婚まで至った背景とその原因について探ってみた。

これまでに、嫁の浮気が発覚した太郎や、子供ができなかった正人、レスだった信弘や家計問題で離婚した麻衣に迫った。今週は?




名前:謙太郎
年齢:37歳
職業:総合商社勤務
年収:約1,400万
結婚歴:5年
前妻の年齢と職業:30歳・専業主婦

「前妻の由利恵は、元々気が強い性格でした。結婚前はそんな所が可愛いと思っていたのですが、結婚後は当たりが強くなり、束縛の厳しさにも辟易して...」

3年ほど前に離婚したという謙太郎の離婚理由は、単純明快。

謙太郎の不貞行為だった。

「こちらにも言い分はあるんですよ。ただ一つ言えることは“女の勘は怖い”、ということでしょうか。絶対にバレるはずがないと思っていたのに...」

細心の注意を払って行動していたという謙太郎。

しかしそんな気遣いも虚しく、気がつけば全ての情報を由利恵は握っていたそうだ。

果たして、由利恵はどうやって証拠を掴んだのだろうか?


謙太郎が不貞行為に走ってしまった理由とは?


元々CAをしていた由利恵と謙太郎の出会いは、よくあるお食事会だった。

「CAと商社って、国際思考が強い者同士で気が合うのか、結婚するパターンが多いんですよね。食事会の相手も、CAの子が一番多かった気がします」

そんな定番の相手であるCAの可愛い彼女を手に入れ、すんなり結婚までし、全てが順調に思えた結婚生活。

だが謙太郎の中で違和感が広がり始めたのは、結婚2年目の頃だったという。

結婚してから暫くは、甲斐甲斐しくご飯を作ってくれ、おとなしく謙太郎の帰りを待っていた由利恵。

しかし徐々に飲み会などで24時を過ぎるとLINEが嵐のように送られてきたり、それに返信しないと、出るまで鬼のように電話がかかってくるようになったそうだ。

「クライアントや先輩と飲んでいても、電話口で毎回“誰といるの?いつ帰ってくるの?”を連呼し、“男の人と飲んでいるなら、証拠として電話を代わって!”と言われる始末でした」




そんな謙太郎を見て、周囲は呆れると共に哀れんでいたそうだ。

「“謙太郎は嫁の尻に敷かれっぱなしだからなぁ”とよく言われていましたね」

毎回毎回好きで飲んでいる訳ではない。
仕事上の付き合いで、断れない誘いもある。

だが由利恵はそんなことお構いなし。

帰宅が遅いと罵り、浮気を疑い、そして機嫌が悪くなる。

最初のうちはその茶番にも付き合っていた謙太郎だが、徐々に不満が蓄積されていったのは、言うまでもない。

一生懸命働くのは由利恵のためでもあるというのに、どうしてそんな風に言われないといけないのか、と苛立ちすら覚え始めたのだ。

「その時まで、僕は妻一筋でした。だけど毎日そんなことを言われ、してもいない不貞行為を疑われるのに耐えられなくなってきて」

皮肉なことに、謙太郎の不満が増えるのと比例するように由利恵の束縛は強くなり、FacebookやInstagram上で繋がっている女性とは、どんな関係なのかと問いただされるようにもなった。

コメント履歴やいいね履歴までチェックされ、事細かく追及されたそうだ。

そんな夫婦に決定打となる事件が起きたのは、謙太郎が出世し、多忙を極め始めた頃だった。

「仕事柄海外出張は多かったのですが、特にその年はアジアで一個大きなプロジェクトが決まり、マレーシアと東京を往復する機会が増えたんです」

そこで、謙太郎は決定的なミスを犯してしまったのだ。


どうしてバレた?謙太郎が日々の生活の中で見せたほころび


現地に住む日本人女性と、関係を持ってしまった謙太郎。

一度関係を持ってしまって以降、謙太郎は仕事でマレーシアに行く度に、彼女と密会を重ねるようになる。

「でも決して本気ではなかったし、向こうも僕に妻がいることを知っていました。由利恵と離婚するつもりもなかったから、いつか終わる関係だったんです」

お互いに合意の上での割り切った関係、さらに“海外だからバレない”と油断していたことは否めない。

「興信所をつけられる心配もなかった訳ですし。大丈夫だろうと高をくくっていました」

しかし、浮気とはいつかバレるもの。

謙太郎の行為も、当然のごとく由利恵にバレることになる。ただ、それは意外な方法でバレたのだ。




「なんと、その浮気相手と由利恵の元CA仲間が繋がっていたんです・・・世間が狭すぎて、震えました」

しかし、由利恵が謙太郎の浮気に気がついたのはそれだけではない。

今まで無法地帯だった携帯にロックをかけ、後ろめたさから急に由利恵に対して優しくなったこと。

由利恵がお風呂に入ろうとすると、いそいそと携帯をいじり始めること。仕事の出張のはずなのに、週末にかぶせて行く機会が増えたことなど、数々の要素はあった。

「そんな行動が重なり、何か怪しいと思った由利恵が元CA仲間で現在マレーシアに住んでいる友達に聞いたみたいです。誰か怪しい子はいないか、と。」

女の執念は、鬼の如し。

海外における日本人コミュニティーは極端に狭い故、由利恵が浮気相手を特定するのにそう時間はかからなかった。

そして相手を特定した途端に、由利恵は徹底的に“SNSパトロール”を始めたのだ。

「彼女のSNSを徹底的に調べ上げ、デート向けのレストランなんかで微妙に写り込んでいた腕時計などを証拠に、なんと直接本人にダイレクトメッセージを送りつけたんです。

極めつけは僕が寝ている間に指紋認証で携帯のロックを解除され、そこに残っていた過去のやり取りを見られて、動かぬ証拠となってしまいました」

結局、高額な慰謝料を請求され、財産分与も綺麗に折半となる。もちろんマレーシアの彼女とも別れた。

しかしそれだけでは終わらず、由利恵は相手の女性にも慰謝料を求める裁判を起こしたのだ。

“ほんの少しの出来心だった”と謙太郎は言うが、弁明の余地はない。世間も会社も、皆由利恵の味方だった。

現在は高額な慰謝料を支払いながら、独りで勝どきでに住んでいる謙太郎。あまりにも痛い代償を支払うことになった。

「もう、浮気はこりごりです。一生懸命働きます」

そう話す謙太郎は、まだまだ離婚の傷が癒えていないようだ。



結婚とは、赤の他人同士が一つの家族になるという不思議な制度である。

それは時として不幸になる場合もあるし、最高の幸せが待っている場合もある。

どんな結婚生活を送るかは、本人たち次第。

日々の積み重ねや、ほんの些細なキッカケで、その幸せはあっという間に崩れることもある。