次のキャリアとしてどちらを選ぶべきか迷っています(写真:Zephyr18/iStock)

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私は新卒で教育ベンチャーに入りマネジャーにも抜擢されましたが、14カ月で転職しました。しかし、2カ月でさっそく転職活動をしているところです。現在、外資戦略系コンサルファームと教育ベンチャーのオファーを持っています。どちらを取ったほうがいいかについてアドバイスいただけたら幸いです。
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目指すゴールに向けての手段の違いでしかない

Jさんが非常にアクティブにキャリアを切り開いている様子が目に浮かびます。内定も複数、それも異なる業種からもらっているあたり非常に優秀な方なのだと察します。


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さて、教育ベンチャーとコンサル会社のどちらを次のキャリアとして選択するかですが、こればっかりはご自身のキャリアに対する考えによりますので、正解はありません。

その選択はあくまでも、目指すゴールに向けての手段の違いでしかないのです。

最短距離で突き進み試行錯誤の中で成長を図るか、遠回りを通じて経験の引き出しを増やし勝負するか、その違いだけです。

割愛させていただいたご相談内容をみますと、Jさんはすでに長きにわたって教育に携わっていきたいという明確なビジョンを持ちですから、その道に進んで実務を通じて業界における経験や勉強をしていくのが当然の近道です。

とりわけJさんにとって教育ベンチャーは2社目です。2社の対比による効率化の追求や学びもあるでしょう。Jさんは、将来自分で会社を起こすことも目指しているのですから、参考事例の蓄積という意味においては非常に有益な経験となりうるでしょう。

ただし、この場合気をつけるべきは、ベンチャーという会社における実務はあくまでも実務なのですが、包括的に学べるのではなく、世の中にある一例を学ぶに等しい側面があるということです。

つまりそこで学んだことがつねに正解であるという保証はないわけですし、知っているべきすべてを包括的に学ぶこともできません。

したがって、その弱点を補完するべく、たとえば夜間や週末に経営の勉強を幅広くしてみたり、セミナー参加をしてみたりと、自分自身で知見を広げるとともに、ベンチャーにおける「個別事象」または「個別解」ではなく、いわゆる「一般解」を身に付ける努力が必要です。

優秀なコンサルが優秀な経営者になれるわけではない

一方でコンサルはどうか?

確かに書かれているように、幅広く物事を学んだりすることはできるでしょう。そしてそこで学んだことが後ほど事業を経営するにあたって役に立つこともありうるでしょう。

ただし、コンサルとして優秀な人が優秀な経営者になれるかというと、残念ながらそのかぎりではありません。

したがって、この場合はコンサル勤務を通じて自分は何を学びたいのかを明確にしたうえで、どんな状態になったら卒業をするか、を考えつつ「修業期間」を過ごすべきです。

このようにこの2者の選択はどっちにも良しあしがありますから、どちらが正解というのもありません。そして両方やってみる手もあるのです。

たとえば、今しかできないであろうコンサルを先に数年経験してまた教育ベンチャーに戻る、という選択もありでしょう。

何を隠そう、私自身もベンチャーを経てコンサルで経験を積んでまた事業会社に戻っている口です。しかも同じ会社に、です。

おそらく、年齢や経験を考慮するとここで教育ベンチャーを選択し数年過ごすと、その次にコンサルから内定をもらえる可能性は今よりもだいぶ小さくなるでしょう。現状はコンサル会社からするとJさんはポテンシャル採用なのです。

次はポテンシャル採用ではなく経験者採用となりますから、一般的にはベンチャー企業経験だけでは採用されるのは困難な歳になってきます。

であれば、今しかできないコンサルを「期間限定で」経験して、「教育ベンチャーにおける実務×コンサル的戦略思考」の双方で自分を差別化し、それをもって教育業界に戻るという選択もありでしょう。

「あえて遠回りをする」という手段もある

どちらも将来につながる可能性がある以上は、今しかできないことを優先するという手段もあるのです。

もちろん、一般解などは学習で補いつつ、ベンチャーでの業務を通じての成長を選択するということも全然ありです。

私自身は、事業会社における経営者になるというビジョンを持ちながら、なぜ戦略コンサルを経験したかというと、やはりベンチャーでしか経験のなかった自分に自信が持てなかったからです。だからこそ慎重になり、あえて「遠回り」をしたのです。

しかしながら、キャリアが長期戦である以上は「急がば回れ」的にあえて遠回りをして、その遠回りを通じて経験の引き出しを増やすという手段もあるのだと思います。

遠回りによって自分の中での知識や経験の引き出しを増やし、遠回りを労働市場における自分のとっての差別化要素とすることができればしめたものです。

臆病者の戦略とでも言いましょうか。その「一時的な遠回り」の結果、私は結果的には最短で経営者になるというゴールに近づけたと思っています。

ゴールが同じでも、どの手段を取るかの選択については、結局は自分の性格やキャリアに対する考え方によりますので、Jさんにとっての価値観や優先順位で決めればよいでしょう。

どちらの選択をすることがよりJさんにとっての将来のキャリア上の選択肢を増やしてくれそうか、そういった視点で選んでみてください。Jさんが教育関連で将来大きく成功されるであろうことを応援しております。