横にも移動、独社が仕掛けるエレベーター革命
上下左右、最短ルートで移動
「我々が業界のイノベーションのリーダーになるだろう」。ティッセンクルップ・エレベーターのアンドレアス・シーレンベック最高経営責任者(CEO)は「革命」への手応えを示す。
エレベーターに乗る人が行きたい階の場所を指定すると、ソフトウエアが他のキャビンの混雑状況を勘案しながら最短移動ルートを計算する。建物の高さを問わず、15―30秒の待ち時間で乗ることができる。
「500トンの鉄道を動かせるのならば、1トンのキャビンを動かせるだろうと考えた」。シーレンベックCEOは開発の経緯を語る。同社はエレベーターの売り上げは世界4位、欧州で最大のシェアを握るが、鉄鋼を中心とした複合企業グループの一角でもある。中国のリニアモーターカーの開発で培った技術を横展開した。
デザイン制約を減らす
課題はコスト。価格は従来機の3―5倍ともいわれ、競合他社幹部は「果たして普及するか」と首をひねる。こうした指摘にシーレンベックCEOは「設置スペースが半分になるメリットの方が大きい」と自信をのぞかせる。有効利用できるようになったスペースを貸し出せば初期投資の回収も難しくない。ニューヨーク・マンハッタンの100階建てビルで試算すると従来のエレベーターに比べて、10年で1億―1億5000万ドルの費用効果があるという。
大都市では土地が限られる中、開発を建物の高層化で対応してきた。ビルが高くなればなるほどキャビンをつり上げるための機構なども大きくなり、床面積に占めるエレベーターの設置スペースは今では4割にも達する。
一つのシャフトに1台のキャビンを置き、ケーブルでつりあげる。19世紀半ばから変わらない構造が建物のデザインの制約にもなっていた。
新型エレベーターは21年にドイツのベルリンで初号機が稼働予定。約20プロジェクトが控えており、日本の案件も進んでいる。
