家族にたとえられるほどクルマに愛着を感じているのであれば、できるだけ買い換えをせずに長く乗り続け、洗車を怠らず常に「きれい」にしておくのは当然だろう。実際、近年は同じクルマを長く乗り続ける傾向が強くなっているそうだ。

 かつてのバブル時代には、クルマをステータスシンボルとしてひけらかすために所有し、ひんぱんに買い換える人も少なくなかった。しかし現代では、自分が本当に気に入ったクルマをメンテナンスをしながら大事に乗り続ける人が多くなっているようなのだ。

 さすれば、バブル時代ほどクルマが売れなくなった原因は「若者のクルマ離れ」というより、単純に一人当たりの買い換えの回数が減ったことにあるのかもしれない。

「洗車文化」の広がりが「共感」あふれる豊かな社会をつくる
 『クルマを「きれい」にする美学 【KeePer】』では、KeePer技研株式会社の活動を、同社の創業社長・谷好通(たに よしみち)氏の経営哲学を紹介しながらリポートしている。

 KeePer技研は「日本に新しい洗車文化を。」を企業ビジョンに掲げ、ミネラルを含まない純水で汚れを落とし、塗装を研磨しないでも美しい艶(つや)を実現できる独自開発の「キーパーコーティング」をメインに事業を展開。直営およびフランチャイズの専門店「キーパーLABO」と技術認定店「キーパープロショップ」を全国展開し、研修や技術検定、ケミカル製品の開発と販売などを手がける会社だ。

 前述のように、クルマに愛着を持つ人は洗車を怠らないはずだ。また、日本人は「きれい好き」であり、市街地の道路を眺めても、泥だらけだったり、車体がデコボコだったりする自動車はめったに見かけない。ほとんどの国ではボロボロの車が平然と走っていたりするので、来日して驚く外国人観光客は少なくないらしい。

 ところがそんな日本人でも、洗車を専門業者に依頼する人はカーマニア以外少なかった。自宅で自分で洗うか、ガソリンスタンドで給油のついでに洗車をする人がほとんどだった。KeePer技研の谷社長に言わせれば「洗車文化」がなかったのである。

 KeePer技研のキーパーコーティングは「お化粧のようなもの」と谷社長は言う。同社のような専門業者に自分のクルマを預けるのは、これまで自宅で洗髪したり、10分で仕上がる理容店で散髪するだけだった人が、ちょっとおしゃれな美容室で髪をセットをしてもらうようなものなのだろう。

 さらに谷社長は「弊社が提供するカーコーティングは、『いま』だけではなく、施工した時点から1年、種類によってはそれ以上先の『未来』まで、美しさが保たれます」とも説明している。つまり、近年増える傾向にある「愛車に長く、大切に乗り続けたい」人たちにとって、同社の技術はうってつけなのだ。同社や、同社の技術を採用するガソリンスタンド、あるいは同業の専門業者が、そういう人たちのニーズを拾っていくことができれば、日本により良い「洗車文化」が浸透するのは、時間の問題かもしれない。

 谷社長はKeePer技研の人材採用の際に、応募者が「自分がしたことで人が喜んでくれると、自分自身もうれしいかどうか」を必ず確認しているそうだ。共感力があるかどうかを採用の基準にしているのだ。
 お客様の「きれいにしたい」に寄り添える共感力がなければ、細かい塗りむらや拭き漏れなどにも気づけず、施工の品質に影響するからだという。

 「モノ」を大切するという気持ちは、人への共感力にもつながるのではないだろうか。それゆえ新しい「洗車文化」は、共感あふれる豊かな社会を実現するのに貢献するかもしれないのだ。

(文=情報工場「SERENDIP」編集部)
『クルマを「きれい」にする美学 【KeePer】』
-日本人特有の国民性が生んだ高性能カーコーティング
鶴蒔 靖夫 著
IN通信社
230p 1,800円(税別)