イニエスタの新天地について、ついに具体的な話が報じられた。「4月中に決める」と告げていた本人のコメントが待たれる。(C)Getty Images

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 バルセロナのキャプテン、アンドレス・イニエスタが今シーズン終了後に中国のスーパーリーグに移籍する――。昨年浮上し、これまで噂の域を出なかった話が、ここに来て一気に現実味を帯びてきた。

 移籍するだろうと言われているクラブは、天津権健足球倶楽部。アレッシャンドレ・パットやアクセル・ヴィツェルらが所属し、かつてのポルトガルの名手、パウロ・ソウザが指揮を執るクラブだ。

 提示された契約期間は3年で、さらに1年間の延長オプションがつく。気になる年俸は、税抜きで3700万ユーロ(約48億1000万円)。さらにイニエスタの父親が経営しているイニエスタ・ブランドのワインを中国市場に販売することで、膨大な金額の契約が交わされるという。

 このニュースを報道したのは、『カタルーニャラジオ』だ。同ラジオ局は、まだTVがなかった時代から、バルサの試合を声で伝えてきた地元の有力メディアであり、いわゆる“飛ばし”の報道は少ない。つまり、このラジオ局が報道するとき、多くの場合、信頼できる情報源がその背後にあるのだ。

 
 一方、『エル・コンフィデンシアル』紙の電子版は、ジョゼップ・マリア・バルトメウ会長が、イニエスタが納得する残留条件を提示する繊細さを持ち合わせていなかったことが決定的な要因だと断じている。

 ローマとの第2レグで80分に交代させられたことは、エルネスト・バルベルデからの信頼がフル出場を任せられるほどではないことを示していると指摘し、フィリッペ・コウチーニョの獲得や入団間近とされるアルトゥールの存在が、その証だと同紙は報じている。

 イニエスタはチームの問題因子になる前に、みずから身を引くことを決めたということだろう。ローマとの第2レグの後、「これがバルサのユニホームを纏って出場する最後のチャンピオンズ・リーグになってしまうのか?」と訊ねられた偉大なるキャプテンは、否定することなく、「それは一つの可能性だ」と返していた。

 現在、彼がピッチに立つたびに、スタンドからは「Andres, quedate 」(アンドレス、残って!)というサポーターのチャントが響くが、はたして、その声はイニエスタにどのように聞こえているのだろうか。

文●山本美智子(フリーライター)