投資銀行家のぐっちーさんは、ビジネスの面から見ても「中国を決して信用してはならない」と警鐘を鳴らす(写真:ロイター/アフロ)

アメリカのトランプ政権には、いわゆる「MMT」と呼ばれた強力ラインが機能していました。ハーバート・マクマスター大統領補佐官、ジェームズ・マティス国防長官、レックス・ティラーソン国務長官の3人です。しかし、ドナルド・トランプ大統領のわけのわからなさのせいで、ティラーソン国務長官に続き、ついにマクマスター大統領補佐官まで更迭されました。

トランプの本質は「プロレス劇場型」だが…

まさにトランプ劇場の真骨頂と言えるような展開になりました。まあ、「どうせ続かねーだろ」、と言っていた人も多いんですが、これ、1980年代にトランプ氏と私がある事業をやっていた経験からすると、まさにデジャブー(既視感)。あの時も責任者がそれこそ1年も持たないので、ビジネスをしようと思っても、もうわけがわからない。私が「トランプ担当」を5年やった後は、私のいた会社もそのわけのわからなさに愛想をつかし、付き合うことをやめていた、とも聞きました。


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このわけのわからなさ……ニューヨークではこういう人やこうしたことをwholly smokes!と表現するのですが、彼はまさにwholly smokes!でありまして、いやはや、これに付き合うってのは得策ではありませんな。

ただ、当初からここでも書いているように、基本的に彼は「プロレス劇場型」でありまして、まず、おどかすんですが本気で技をかけてくることはありません。ただ、人の入れ替えだけはちょっと要注意で、その場所がトランプカンパニーならまだしも、ホワイトハウス、というところに一抹の不安を覚えるわけであります。マクロ経済的にはそれこそ1点の曇りもないアメリカ経済なんですが、この「ホワイトハウスリスク」、というのはちょっと予想もできないので、まあ、投資戦略となると命綱の「OTM(out of the money)オプション」は手放さない、ということなんでしょうかね。

もう一つ。これも多くの専門家が恐れていた事態が起きてしまいました。フェイスブックのデータ漏洩事件であります。

ウォールストリートジャーナル紙の一部を引用します。

“【ワシントン】2016年の米大統領選でドナルド・トランプ陣営と関係のあったデータ分析会社がフェイスブックの個人情報を利用していたことを巡り、米連邦取引委員会(FTC)がフェイスブックの調査に着手した。事情に詳しい関係者が明らかにした。”

トランプ政権との兼ね合いも気になるものの、いわゆる「FANG」「MANT」と言われる、これまでナスダック市場でアメリカ株を引っ張ってきたその一角が不測の事態で崩れる、というのが、おそらく今目の前にある一番大きなリスクだと言っていいと思います。それがある意味起きかけている。ナスダックも大きく値を崩しましたし、ほかの銘柄にも影響を与え始めており、問題の深刻さが現時点ではわかりませんが、この種のもの……特に情報漏洩など……は実に恐ろしい威力を持っています。

その意味では日本でも信じられない事件が起きております。日本年金機構が500万人分のデータ入力を、あろうことか中国の会社に再委託されていた、という事実であります。マイナンバーなどの情報も入っており、500万人分の個人情報が中国の会社に漏れた、ということはそれ自体で中国国家に機密を握られたに等しい。

「情報」を外国会社・勢力に扱わせることに、この機構と委託会社の面々は、何の抵抗も感じなかったのだろうか。再委託された先が、よりによって共産党一党支配の国の会社であれば、それはなおさらのことではないか。

共産党支配の中国は、やっぱり信用できない

ここから中国です。

はっきりいいますが、中国には純粋な民間企業などは存在せず、もう共産党がだめ、と言えば全部だめなのですよ。

1つの良い例が、ニューヨークのウォルドルフ・アストリアという超高級ホテルが、中国の安邦保険集団という所に数年前に19億ドルで買収されたのですが、ここは、金融関係者はもとより、ホワイトハウス関係者が集まることでも有名で、その意味では秘密の巣窟のようなホテルともいえるわけですよ。

そこを中国企業が買収して、まあ民間企業だから平気だろう、と高を括っていたら、先日、習近平国家主席の命令一下、その創業者の呉小暉会長が詐欺罪で訴追され、なんと中国政府が事実上、会社ごと乗っ取ってしまったわけです。買収じゃないですよ。

そのまま株式を全部取ってしまったのです(元々共産主義国家では、私有財産の保有は認められないことになっているので、何も文句が言えない)。そして今や中国政府が株式をすべて掌握しており、結局このホテルは事実上、中国政府の保有となっているわけです。そんなところでホワイトハウスの会議なんてできるわけないですよね。

トランプ政権は慌てて中国政府による買収を制限する法案の作成に取り掛かっていますが、これ、ある日突然中国政府が民間企業を乗っ取るなんてことは朝飯前なわけですからね。遅すぎた……あるいは中国という国を信用しすぎた、と言えるかもしれません(参考)。

日本だって、中国資本による「タワマン」の爆買いとか、いろいろな不動産購入とかで喜んでいる場合じゃないですよ。ある日突然、オセロゲームのようにすべてが中国政府の持ち物になってしまう。この恐ろしさに気が付いていない日本人はほんと、頭悪いとしか言いようがない。「尖閣諸島がどうのこうの」どころの話じゃないですよ。

「君主危うきに近寄らず」

なにしろ、東京のど真ん中が中国政府の持ち物になってしまい、「何を言っても改修すらできない」なんて話になったら、タワマンの価値なんてゼロですし、都市計画自体が成り立たなくなります。そのうち、極端な話「そこは中国政府が保有しているから中国の領土だ」、などと言い出しかねませんよ。そうしたら、どうするつもりなんでしょうかね。

習近平の最近の動きを見るにつけ、「こりゃ、最後は中国政府にみんな持ってかれるな」、と考えておりまして、だから私は10年前からビジネスでは中国とは一切かかわらない、と決めているわけですが、いよいよ本性を出してきたな、という所であります。

中国のことわざに「豚は太らせてから食え」というのがありまして、対中ビジネスはさんざん儲けたつもりになっていても最後は持っていかれてしまう、のが常なんであります。

ここは君子危うきに近寄らず、でありまして、もうモリカケなんてどうでもいいので、早くこっちを何とかしろ! と言いたい訳であります。習近平が牙をむきだしてきた今、もういよいよ世界は乗っ取られるかもしれません。ヨーロッパなんて、今頃気が付いても遅いかもしれませんね。

もし、「国内の企業に買われるのも、中国企業に買われるのも同じだろう」、なんて言っていたら、それ自体が間違っています。

日本人は海外のルール、慣習になんとか合わせようと頑張るわけですが、中国人は自分たちこそがルールなんです。ドイツがそういう価値観が通用する相手ではない、ということにやっと気が付いたようではありますが、正直時すでに遅し、かもしれませんよ……。

あの小澤征爾氏も驚いた中国人のマインド

最後に……。もう20年ほど前になりますが、あの巨匠の小澤征爾氏に直接伺った話を披露しておきます。

元々中国(旧満州)生まれの小澤先生は中国には思い入れがあり、長年中国のオーケストラを指導されておられました。この話がおもしろい。日本人のオケだと、できるだけベルリンフィルに近づこうとか、ウィーンフィル並みの音を出してやろうとか、要するにクラシックの本家である国のオケをまずは目標にして頑張るわけです。今でもまだそういう傾向があると思いますが、それは当然でしょう。本家を追い越してなんぼ、というのが多くの日本人の考え方、だと思います。

ところが、小澤先生が初めて中国のオーケストラを指揮してブラームス交響曲第1番をリハーサルしたところ、正直まるでブラームスに聞こえなかったそうです。要するに、中国人の解釈をそのまま当てはめて、「本家本元のブラームスを本気で学ぶ気なんてまったくなかった」、というのですよ。挙句の果てに、「バイオリンなんて、中国の二胡がオリジンなんだから俺たちの解釈があっている」、と言い張る始末で「本当に最初は困った」、とおっしゃっていました。

みなさん、わかります!? これが中国なんですよ。自分たちの考え、ルールがすべてで、まして日本人のルールに合わせようなんて微塵も考えてない人たちとビジネスして……楽しいわけないですよね。

とにかく、「東京都と尖閣諸島(中国ではこうは呼んでいませんが)を交換してやろうか」、とか言われる前に、何とか手を打たねばなりませんよ。

ここからは恒例の競馬コーナーです。さあ、いよいよG1シリーズが始まりますぞ。

この高松宮記念(25日、中京競馬場11R、芝1200メートル)で口火を切るわけで、迫力のあるスプリンターレースが毎年繰り広げられます。

高松宮記念の穴馬はレーヌミノル

まず、間違いなく1番人気はレッドファルクスでしょう。実績も血統もまさにスプリンター。去年は道悪にやられましたが、今年はどうなるか。

1つ気になるのはこの馬、7歳なんですよ。やはり短距離レースでは瞬発力が求められるわけですから、年齢(馬齢)というのは微妙に響くことが多い。事実、高松宮記念を7歳で勝ったのはキンシャサノキセキくらいなもんで、多分、内国産馬では今まで例がないんじゃないでしょうかね。

そうなると、どこからか飛び込んでくる馬の可能性も十分で、期待を込めてレーヌミノルを穴馬にお勧めしたい。父はあのダイワメジャー。母親は大した戦績はないものの、母の父(つまり母方のおじいさん)はあのタイキシャトルにたどり着く。

フランスのG1であるジャック・ル・マロワ賞(1600メートル)を制したタイキシャトルの血統となれば、これはまがいもないスプリンター血統。事実レーヌミノルはG1の桜花賞(1600メートル)は制しており、その後ぱっとしないのはどうも距離のせいだとしか思えない。ここはまさにぴったりの舞台で穴としてぜひお勧めしておきたいです。