かつては「遠の朝廷」と呼ばれた古都、太宰府

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かつては“遠の朝廷”と呼ばれた古都・太宰府。悠久の歴史を感じる、緑豊かなこの地に祀られるのが「太宰府天満宮」(福岡県太宰府市)だ。菅原道真(すがわらのみちざね)公の御墓所の上にご社殿があり、その御神霊を永久に祀るこの神社は、全国約1万2000社ある天神さまを祀る神社の総本宮と称えられ、年間約800万人の参拝者が訪れている。

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■ 梅香る太宰府の地、学問の神「天神さま」にあやかって

左大臣藤原時平の陰謀により大宰府に流され生涯を終えた道真公。その後無実が証明され、「天満大自在天神(てんまだいじざいてんじん)」という神様の御位が贈られ、“天神さま”とご崇敬されるようになったそう。

道真公は 一流の学者・政治家・文人として名を馳せたことから、“学問・至誠・厄除けの神様”としても日本全国に広く知られ、受験シーズンともなると多くの受験生が合格祈願に訪れ、その姿が冬の風物詩に。境内には道真公を慕い京都より飛来したとされる「飛梅」など歴史を間近で感じられる場所が多くある。

■ 「過去」「現在」「未来」を現す橋がかかる「心字池」

太宰府天満宮の境内にある「心字池」。その名の通り“心”という漢字をかたどるこの池に架けられた三つの橋はそれぞれ太鼓橋、平橋、太鼓橋という。御本殿にはこの橋を渡って入るのだが、渡る順序があるので覚えておきたい。太鼓橋は「過去」、平橋は「現在」、太鼓橋は「未来」を現しており、御本殿に向かう人は過去から未来に向けて橋を渡るということになる。三世一念という仏教思想を残すこの橋。水辺の清々しさを感じながら、心身ともに清められるはず。

橋を渡ると御本殿へと続く楼門が見え、右手にある巨大な一枚巖の手水舎の奥には宝物殿がある。

実は太宰府天満宮は戦国一の知将といわれた黒田官兵衛(如水)ゆかりの地としても有名で、宝物殿の近くには如水の井戸が、その奥には如水社が建てられており、見どころが満載だ。

■ 善政や誠心を貫いた道真公の生涯を象徴し1852年に奉納された「麒麟像」

太鼓橋を渡ると右手、うっかり見過ごしてしまいそうな場所に佇む「麒麟像」。頭は狼、胴体は鹿、足は馬、尻尾は牛と、それぞれの生き物の一番美しい箇所が組み合わされた空想上の聖獣であり、「徳をもって世を治める王者の象徴」といわれる。

この「麒麟像」、かつて二体存在したことはあまり知られていない。太平洋戦争の真っただ中、金属供出の対象とされたものの、凛とした美しさに一体だけが辛うじて免れ、以来この場所にひとりで立っているそう。長崎のグラバー邸で有名なトーマス・グラバー氏も、数度にわたって天満宮を訪れ、「麒麟像」を鑑賞するほど虜だったとか。聖獣の中でも頂点とされるその精悍な佇まいは、実際に目で見て確かめてほしい。

■ 知恵を授かる十一体の「御神牛」

境内に奉納された「御神牛」は全部で十一体。金属製や石で彫られたものなど、大きさも様々で実に個性豊かな表情をしている。

広い境内のあちこちにいる十一体すべての牛を、参拝しながら探してみるのもおもしろい。頭をなでると知恵が授かるといわれ、多くの参拝者になでられた牛たちの頭や角はピカピカに!

太宰府駅周辺や参道には複数の店が並び、そこで売られる名物「梅が枝餅」も人気。道真公の誕生日と命日にちなんで、毎月25日にはヨモギが入った梅が枝餅も販売される。

福岡市中心部から車や電車で30分ほどと、都心近くに広がる大自然に囲まれて、四季折々の風情とともに「太宰府天満宮」を満喫しよう!

【九州ウォーカー編集部/取材・文=八木あお、撮影=鍋田広一(パンフィールド)】