錦織は緊張も忘れる圧勝劇、続いて19歳大坂がウィンブルドン初出場で好発進 [ウィンブルドン]

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 今年も「ウィンブルドン」(イギリス・ロンドン/7月3〜16日/グラスコート)が盛大に幕を開けた。初日は、第9シードの錦織圭(日清食品)のほか、女子3名の日本選手が登場。錦織は世界ランク102位のマルコ・チェッキナート(イタリア)を6-2 6-2 6-0と一蹴した。また、19歳の大坂なおみ(日清食品)は20歳のサラ・ソリベス トルモ(スペイン)との初出場同士の若手対決に6-3 7-6(3)で勝利。しかし、グランドスラム初勝利を目指す日比野菜緒(LuLuLun)は第17シードのマディソン・キーズ(アメリカ)に4-6 2-6で屈し、奈良くるみ(安藤証券)は20歳のフランソワーズ・アバンダ(カナダ)に2-6 4-6で敗れた。

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 錦織とネットをはさんだチェッキナートはウィンブルドン初出場。それどころか、プロサーキットで芝の大会を戦ったことがない。この3週間も毎週のようにクレーのチャレンジャーに出場し、先週はミラノで準決勝まで進出してわずか中1日で芝に乗り込んできた。ウィンブルドンに対する特別な意気込みは感じられないスケジューリングだ。そしてその印象は間違いではなかった。

 グランドスラムの初戦の前夜はいつも寝付けないという錦織は、今回も例外ではなかったらしいが、立ち上がりから一気に4ゲームを連取。「相手もそんなによくなかったので」、緊張はすぐにほぐれたという。

「先にブレークして余裕があったので、いろいろと試しながらやることができた。自分のプレーを貫いて、前にいってプレッシャーもかけられた」と錦織は大満足の様子。第2セットも2度のブレークに成功、第3セットは1ゲームも与えず、わずか1時間12分で締めくくった。ベースラインからの14本のウィナーに加え、ネットでも13本。チェッキナートはそれぞれ0本と5本。数字が示す通り、24歳のクレー巧者を圧倒した。

 ハレで痛めた左腰のケガはまだ完治していないと2日前に語ったが、痛みもぶり返さず、この試合を見る限り何の心配もなさそうだ。1試合で判断すべきではないが、2回戦以降に向け、今できる最高の戦い方をし、最高の結果を得たことは間違いない。こうなると、「戦いながら回復することができた」という全仏オープンでの経験と自信は、回復への勢いを加速させるのではないだろうか。

 2回戦の相手は芝巧者のセルゲイ・スタコウスキー(ウクライナ)。今回は予選からの勝ち上がりだが、自己最高ランキングは31位で、4年前にこのウィンブルドンの2回戦でロジャー・フェデラー(スイス)を破っている。そして、錦織は過去2敗。苦手意識も覗かせた錦織は、「また、"いちゃもん"をつけられて負けるので」と冗談めかしたが、審判や観客も巻き込みながら自分の空気をつくり、相手をかき乱すのがスタコウスキーの常套手段だ。大人の精神力、対応が求められる。

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 出会う前から相性の良さを予感していたウィンブルドンで、大坂は周囲と自分自身の期待を裏切らなかった。

 ソリベス トルモは今年初めて100位をきった成長期の20歳。粘り強く、強打鋭く、ガッツあふれるプレーが印象的だった。気迫では押されがちだった大坂だが、サービス力とパワフルなストロークで第1セットを6-3で先取。第2セットは両者キープの5-5から大坂が第11ゲームでブレークに成功したが、すんなりとは終わらなかった。第12ゲームは7度のデュースを繰り返し、しかもその中にはオーバールール(ジャッジの訂正)あり、際どいジャッジありともつれにもつれ、結局ソリベス トルモが執念のブレークバックを果たした。

 3つのマッチポイントを逃した大坂にとっては、もっとも苦しい時間だっただろう。

「泣きたい気分だった。でも誰かが『泣くな』と叫んでくれたおかげで、持ち堪えたの」

 タイブレーク勝負になったが、タイブレークには自信があった。2-1からの2ポイントをブレークし、ひとつは返されたが、5-2からふたたびブレーク。最後はこの日、5度目のマッチポイントで、力まず、バックハンドのスイングボレーをていねいに決めた。

 スーパースターが欠ける分だけ、若手が注目されるウィンブルドンでもある。全仏オープンで劇的優勝したエレナ・オスタペンコ(ラトビア)をはじめ、そういえばこの日に奈良を破った相手も20歳だった。逸材豊富と期待されるジェネレーション。そこを抜け出すポテンシャルの大きさを、誰よりも大坂自身が信じていることが非常に頼もしい。

(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)

※写真は「ウィンブルドン」1回戦でマルコ・チェッキナート(イタリア)を6-2 6-2 6-0で一蹴した錦織圭(日本/日清食品)(撮影◎小山真司/テニスマガジン)