7日、テレビ朝日「Get Sports」では、昨季をもって現役を引退した元巨人・鈴木尚広氏がゲスト出演。盗塁成功率は、歴代最高となる.829を誇る「走塁のスペシャリスト」が、「盗塁の極意」を語った。

2週に分けて放送された本企画の前半では、リードや構え、スタート、スライディングといった技術面を説明した鈴木氏。後半となる今回は、ピッチャーとの驚くべき駆け引きの数々を明かした。

まずは、「相手を徹底的に調べ上げます」と切り出した鈴木氏は、「秒数なり、けん制の傾向なり、色んなことを調べる。映像でも見て、ベンチでも見て、塁上でも確認する」と続けた。

その中でも、「ピッチャーの呼吸を見る」という同氏は、1塁ランナーに背を向ける右ピッチャーの場合でも、身体の動きから、その呼吸を感じ取り、「呼吸に合わせていかないと」とキッパリ。その他にも「(相手投手を)ずーっと見てます。何かないかな。ずーっと意識をその人に働きかけている。自分のチームの選手が(塁に)出たとき、自分も走者になった目線でずっと見ている。常に意識を働きかける。そうしないと、あそこでは成功できない」と言い切った。

続いては、けん制について。「ランナーとしては、けん制を貰いたい」と発言し、番組MC・南原清隆らを驚かせると、「けん制を貰うと、スタートを切る感覚が養われていく」と理由を説明。一塁上から相手投手のピッチングを見ているだけでなく、けん制を貰うことで動き出すリズムが出てくるという鈴木氏は、「けん制貰えば貰うほど、スタートが切りやすくなる」と語りつつ、「左ピッチャーは(盗塁が)楽でしたね」とも。

通常、一塁方向を向いている左投手は、けん制がし易く、盗塁の難度は(右投手に比べれば)高いとされる。だが、鈴木氏の現役時代は、対左投手の方が高い確率で成功しているのだ。

「(相手投手の)表情が見えた方が走りやすい。見れてるからこそ走れる。目線を逸らさない。顔を見ながら『来いよ、来いよ』と駆け引きをする。常に駆け引きでプレッシャーを与える」
その理由をこう説明した鈴木氏は、「こっちがピッチャーを見ているという意識を植え付けさせる。見られていると思えば動けないですけど」と補足した。

その他にも、鈴木氏は「走らないっていうのも一つの作戦」と話す。「盗塁ではなく、ホームに帰ってくる(得点)ことが仕事」という同氏は、あえて走らないことで、相手バッテリーにプレッシャーを掛け続けることもあるという。

「バッテリーは『いつ走るんだ、いつ走るんだ』って。『走るのにきているのになぜ走らないんだ』っていう心理が働く。いつも走者をケアしておかないといけない。そうすると(打者への)球種も限られてくる」
鈴木氏の盗塁を警戒する相手バッテリーは、盗塁されないようストレート系の配球が中心となる。これにより、味方のバッターは球種が絞れて打ち易くなり、結果として得点力アップに繋がる。

「リードを構えている時点でキャッチャーの動きも見ている」という鈴木氏は、「カウントが整って、けん制を何回もしてくる時は『変化球投げたいんだろうな』とか。その時にいってやろうとか。初球からいける条件はクイックが遅いとか。球(カウント)が整えば整うほど成功する率が高くなってくる。そういうところでも駆け引き」
こう説明した鈴木氏だが、試合終盤のチャンスに代走として登場することが多く、責任も重大。番組の最後には、「アウトになって帰ってきた時は、ずっと下向いて顔を上げれない。失敗の重みが全然違う」などと苦笑いを浮かべた。