欧州に比べ、アジアの方が社会的にも政治的に不安定。混沌としている。治安のレベル、警備のレベルも低い。ACLのアウェイ戦の観戦は、欧州CLのアウェイ戦観戦より危険度は高いのだ。暴徒化したファンが、周辺を巻き込みながら「悲劇」を起す可能性を否定することはできない。関係のない人まで、そこに巻き込まれる可能性がある、実は危険な場所。

 非スポーツ的な政治家はともかく、サッカー協会の会長、クラブの社長が、正論を吐くだけの物言いに、観戦のリスク管理の甘さを感じずにはいられない。観戦旅行の安全性の確保に尽力することこそが社長、会長のいちばんの仕事。これが崩れると、エンターテインメントは成立しない。

 問われているのは、アウェイの嗜み。ところが、最近の日本はアウェイ戦をしていない。ACLに出場する各チームの話ではない。日本代表戦の話だ。大会以外で、最後にアウェイ戦を行ったのは2013年11月。ブリュッセルで行ったベルギー戦以降、3年半ご無沙汰している。国際親善試合は国内でするものと決まっている。ホーム&アウェイで行われる予選のアウェイ戦は、これまで何試合かこなしているとはいえ、この状態はさすがに異常だ。アウェイ感覚の乏しさに日本は覆われている。そう言いたくなる。川崎の一部のサポーターに限った話ではない。

 そうした意味で、興味深く映るのが、アジア予選の最後に行われるサウジアラビアとのアウェイ戦だ(6月のイラク戦は、テヘランという中立地で行われる)。3位以下と競った状態で迎えれば、まさに雌雄を決する大一番。もちろん僕も現地まで取材に出向く予定だが、多少の用心はしていくつもりだ。たかがサッカー観戦で命を落としては、洒落にならないのである。