皮膚科医も人の子。肌のカサカサや肌荒れなどは起こるだろう。果たして、普段、皮膚科医はどんな肌ケアを実施しているのだろうか?
しのぶ皮膚科の、蘇原しのぶ院長に日頃の肌ケアの方法を教えてもらった。

皮膚科医は肌ケア、どうしてる?


皮膚科医といえば、皮膚のエキスパート。最もいい状態は、素人でも分かるとおり、うるおっていてツヤのある若々しい肌である。そんな肌状態を保つための肌ケアは、普段、どんな風に行っているのだろうか?

「皮膚科医は、実は外科なんです。ほくろをとったり、やけどを治療したり。ですので、施術の前後で手を洗う機会がとても多いんです。どのような人であっても、保湿ケアは非常に重要。私も普段、よく保湿剤を塗っています。ただ、カルテなどを触りますから、ベタベタし過ぎるものは避け、乳液や美容液を乾燥対策として使っています」

家に帰っても保湿ケアはやめないのだという。

「家に帰っても、家のあちこちに保湿剤を置いて、こまめに塗っています。足の裏にワセリンを塗って、ビニール袋に足を入れて、その上から靴下を履いて家事をしたりします。
また、水に入った後は肌が乾燥しやすいため、お風呂上がりには絶対に保湿します」

皮膚科医ならではのオリジナル保湿剤づくり



そして使う保湿剤は、皮膚科医ならではのものだった。

「皮膚科医をしていると、さまざまなメーカーの保湿剤をいただくことが多いので、それらを混ぜて、自分に合う形状にして使うことが多いです。例えば、乳液と化粧水を混ぜて100ccの容器に入れて、オリジナルでつくっています。皮膚科で処方する皮膚の薬は基本的に混ぜて作るので、それと同じ発想です」

ちなみに複数の保湿剤を混ぜても大丈夫か聞いたところ、同じメーカーの同じシリーズの化粧水や乳液、美容液などは、基本的に肌に塗り重ねることが前提で作られているため、混ぜても問題ないのだという。ただ、作り置きをして長期間放置すると変色することがあるため、少量を一週間程度で使い切ろう。

唇は医療機関限定グロス・ハンドクリームは手指に


唇や手の保湿ケアも欠かさないのだという。

「唇も乾燥すると、梅干しみたいにシワシワになりますよね。保湿ケアは欠かせません。最近、医療機関限定のグロスが患者さんに人気で、私もよく塗っています。12色あるのですが、クリア色は夜寝るときに、赤や薄いピンクは服の色に合わせるなど、使い分けています。オシャレを楽しみながら使えるのがいいですね」

「ハンドクリームは、よく手の甲に多く塗りがちですが、乾燥しやすい指先や爪のほうに多く塗っています。寝る前は、塗りながらマッサージをして血流をよくすれば、眠りにもいい影響が。乾燥しやすい膝から下、足の裏、手足の指などにしっかりと塗っています」

ポイントは“ちょこちょこ塗り”にあった!



あらゆる全身の乾燥しやすい部位に、一日中保湿を欠かさない。塗り方にはポイントがあるのだという。

「保湿ケアのポイントは、ちょこちょこ、こまめに塗ること。仕事場、お茶の間などあらゆるところに保湿剤を置いておき、こまめに塗っています。
なぜなら、乾燥しやすい部位は、外にむきだしになっていることが多いため、洋服や触った物などについて、とれてしまうからです。皮膚科で処方する塗り薬でも、1日2〜3回塗るように指導します。1回大量に塗っても限度がありますし、高級な保湿剤よりも、こまめに塗ったほうが乾燥を防げるんですよ」

気になる顔の肌の保湿は?


ところで、女性はとくに欠かせない顔の肌の保湿。どんな風に行っているのだろうか?

「顔は洋服で隠れている部位と違い、外気にさらされているため、乾燥しやすい部位です。さらに、女性はメイクのクレンジングで脂をとりすぎるため、乾燥しがちです。また、他の部位よりも顔の肌は非常に薄くて、水分・油分も少ない傾向にあります。顔も保湿ケアは欠かさずしています。普段、お化粧の上から目元だけかくして、スプレータイプの保湿剤をこまめにかけるのもいいでしょう。

夜は、パックがおすすめ。皮膚科でも『ODT療法』といって、軟膏を染み込ませたガーゼで覆い、密封することで、肌への吸収率が上がる方法をとることがあります。これと同じように、コットンに保湿剤をたっぷり含ませて、皮膚の細胞と細胞の隙間にうるおいをしっかり補給するのがポイントです。ただし、パックをしていて、痛い、赤くなる、かゆくなるなどの場合には、その保湿剤は肌に合わないので、使用を中止しましょう」

皮膚科医が肌荒れしていると「説得力がなくなる」


このように多様な肌ケアを毎日行っている理由を、次のように話していた。

「基本的に皮膚科医が肌荒れしていると、説得力がないですよね。ですから、こまめに保湿ケアをしています」

さすが皮膚科医というべき、徹底ぶり。自分に合う形状のオリジナル保湿剤や、手指へのハンドクリーム、「ちょこちょこ塗り」など、参考にしてみよう。
(石原亜香利)

取材協力


しのぶ皮膚科院長 蘇原 しのぶ先生
東海大学医学部卒業後、北里大学皮膚科、獨協大学皮膚科を経て、白斑専門の新宿皮フ科副院長。2016年にしのぶ皮膚科開業。皮膚科・皮膚外科歴13年。ヒアルロン酸、ボトックスマスター認定医、日本アンチエイジング外科・美容再生研究会認定医。オールアバウト美と健康のガイドでもあり、「スッキリ」・「この差って何ですか?」等のメディア活動も精力的にこなしている。
http://shinobu-skincareclinic.jp/