薬は「食前・食間・食後」と飲むタイミングが定められていることがある。しかし、決められたタイミングに飲み忘れてしまうことはよくあることだ。そんなときに、どうするのがいいのか薬剤師に聞いた。

食前に飲む薬を飲み忘れたら


食前に服用する薬を飲み忘れ、ものを食べてしまった。食べながら飲み忘れに気づいたが、食事の最中、もしくは食後に飲んでもいいのだろうか?
日本調剤の薬剤師・井原綾子さんに聞いてみると、食前に飲む薬は、主に次のように、薬ごとに食前に飲む理由と対処法が異なる。飲み忘れてもすぐ飲んでしまわずに薬剤師に聞くのがいいという。

1.食後に飲むと吸収が悪い薬
「食事によって吸収が悪くなる薬です。飲まないよりは気がついた時点で飲んでもらったほうがいいですが、効果が十分に出ないこともあります」

2.食事で生じる症状を抑える薬
「吐き気止めなどの薬です。食事中、食後など、飲み忘れたと気づいた時点で飲んだほうがいいでしょう」

3.食後に薬が効いてほしい薬
「もし食前に飲み忘れ、食事中に気づいた場合にはすぐに飲んだほうがいいですが、食後に気づいた場合には飲まないでください。例えば、糖尿病の薬です。糖尿病は血糖が高い状態が続くため、食事により血糖が急激に上がるのを防ぐために、食前に薬を飲むことがあります、このような薬の場合、食後に飲むと薬の効果が出る時間のタイミングがずれて、血糖が下がりすぎて低血糖を起こすことがあり、危険です。この場合は、すぐ飲まずに次の食事の前に飲んだほうがいいでしょう」

基本的に、薬ごとに対処法が異なるため、飲み忘れてもすぐ飲んでしまわずに薬剤師に聞くのがいい。

食間に飲む薬を飲み忘れたら


では、食事と食事の間に飲む「食間」に飲む薬を、飲み忘れたと気づいたらどうすればいいのだろうか? 井原さんによれば、食間に飲む薬には次のような理由があり、やはり対処法がそれぞれ異なるのだという。

1.食べ物で吸収が悪くなる薬
「ものを食べると薬の吸収が悪くなるため、食間に飲むよう指定されている薬があります。食間に飲む薬は、基本的に食事の2時間後に飲むのが目安となっています。しかし、生活の中で、食後2時間よりも早く飲まなければならないこともあり、この場合には2時間待たずに飲んでもらっています。また、飲み忘れたと気づいた場合には、多少時間が前後していてもその時点で飲んでいいです。なるべく早く飲むほうがいいでしょう」

2.お腹が空いているときに胃が荒れてしまうのを防ぐ薬
「胃の粘膜を保護する薬などがこれに相当します。これも気づいたときに飲んだほうがいいですが、食事中や食事の直後は避けたほうがいいでしょう。飲む場合には、食後2時間くらいしてからがいいです」

飲み忘れて「2回分を飲む」のはリスクが高い



井原さんは、飲み忘れたときの対処でとくにリスクが高いものがあるという。

「どのような場合でも、薬を飲み忘れたときに、その1回分を次に飲む分と合わせて、2回分を一度に飲むというのは避けてください。薬の効きすぎや副作用のリスクが高くなります」

飲み忘れたときは薬剤師に聞こう


実際、薬を飲み忘れてしまうことは、よくあることだという。

「薬は飲み忘れて当たり前と思い、ぜひ遠慮なく薬剤師に相談してください。よく、小さいお子さんのいる親御さんから、お子さんの薬を飲み忘れたけどどうすればいい、というお問い合わせがあります。また、次の薬をもらいにこられたときに『こないだ、飲み忘れたんだけど』と尋ねられる方もいらっしゃいます。電話でも大丈夫ですので薬剤師に問い合わせましょう」

間違った飲み方をしてしまったら…


薬を飲み忘れても、あわてて飲むのはリスクが高い。しかし、もし間違った飲み方をしてしまったらどうすればいいのだろうか。

「意識がもうろうとしたり、息苦しさが出たりするなど、何かしら症状が出た場合は、早急に医師に問い合わせてください。症状はないものの不安な場合には、薬局・薬剤師に相談してください」

薬は飲み方を誤ると身体にリスクが出ることもある。十分注意して扱おう。
また、食前・食間・食後に指定されている薬は、処方薬であっても、市販薬であっても、きちんとすべてに意味がある。処方薬であれば、その意味を事前に薬剤師に聞いておく、もしくは飲み忘れたときの対処法を聞いておくというのが一番良さそうだ。
(石原亜香利)

取材協力
日本調剤 薬剤師 井原 綾子さん
https://www.nicho.co.jp/