フランスで暮らしていて、いつまでも慣れないのが手紙や小包のやりとりだ。荷物を送るとき、日本ではそれほど配送過程に気をかけることはないだろう。しかしフランスでは、発送したものがきちんと相手に届くかどうか、毎回不安になる。

最近日本では宅配便の話題がしばしば上がるが、これは荷物が確実に宛先に届くことを前提にした話。フランスで配送を頼むと……こうなります!



そもそも配送業者を信用できない


以前、配送員が荷物を乱暴に扱い話題になったことがあった。フランスでは……とりあえず中身に破損がなく、きっちり宛先に届けば大満足。それがクリアできれば、その過程は問わない(いや、問うべきなのだろうけど、満足度の基準が下がっているため、そこまで求めず妥協してしまう)。

フランスにおいて、配送業者を100%信頼している人は、ほとんどいないのではないだろうか。郵送や宅配便による手紙の紛失や遅配は日常茶飯事。最近起きた身近な例で言えば、先週すぐ隣の番地の郵便物が、私が住むアパートの番地の集合ポストの上に配達された。

フランスの住所は通りの名前に番地を加えた表記であるため、日本のものより分かりやすい。例えば「パリ通り」という名前の通りがあるとすると、その通りの片側は奇数順に、もう一方は偶数順に番地が記されている。つまり片側の住所が「パリ通り1番地」「同3番地」「同5番地」となるなら、通りを挟んで反対側は「パリ通り2番地」「同4番地」「同6番地」となる。それら数字は、各建物の入口付近に表記されている。

分かりやすいにもかかわらず、時々前述したようなミスは起きる。どのような顛末で隣の番地に配達されたかは分からないが、すでに届けられたのだから「配達済」だが、その配送物を待っている人からすれば「届かない」ということになる。私個人も数カ月前に発送した郵便物1通が、まだ相手に届いていない。



在宅でも不在として扱われる


もし留守中に配送業者が訪れた場合は、不在票に従い再配達の連絡をするか、翌日郵便局などに荷物を直接受け取りに行く。これは日本でも同じだと思う。しかしフランスでは、在宅なのに呼鈴を鳴らされず不在票を置かれることが、ときどき起こる。確実に受け取るため、荷物が来る日にドライバーが来るのを家で待ち構えていても、いつの間にか不在票が置かれ拍子抜けすることもあり……「せっかく待っていたのに」とやるせない(もちろん、ちゃんと仕事をしている真面目なドライバーもいます)。

そのため自分で何か注文する際には配送先を自分の家にせず、最初から最寄りの郵便局か各配送業者が提携する商店にして、そこで荷物を受け取る指定をする人も多い。不意にやって来る小包に限っては、不在票が置かれたら、もはやこういうものだと考えて、素直に翌日指定の場所に受け取りに行くしかない。

ただし日本のような1時間配送サービスもある


届くまでの過程に不安は多いが、日本と同じく当日即配サービスも存在している。例えば仏アマゾンは、日本と同じくプライム会員向けに、別途配送料を上乗せし食品などを中心に1時間で品物を届けるサービス「プライム・ナウ」を行っている。加えて仏小売大手カルフールも、同様に食品など日常品を1時間で配送するサービスを始めた。



「この国で本当にできるのだろうか」という疑念はフランス人自身も感じており、仏大手新聞パリジャンも「1時間で届くかテストしてみた」といった記事を書くくらいだ。日本で暮らしていると信じがたいかもしれないが、フランスでは宅配便に限らず、例えば電気屋やガス屋、インターネット工事業者など、客相手でも約束の時間に現れないことがよくある(約束しても連絡なしに来ないこともある!)。

他社のテスト結果を紹介するだけでなく、我々も試してみねばと思いプライム・ナウで1時間配送を頼んでみた。結果……14時29分に注文し15時03分に到着! かかった時間はたった34分。

フランスの配送環境に散々批判的なことを書いてきたけれど、一部では、やればできる部分もある国でした。でも、まだ信用していないけど。
(加藤亨延)