かぜやインフルエンザ予防は常日頃から徹底したい。職場は特に多くの人が行き交う場所。毎日、長時間過ごすのであればとくに気にしておきたい。
そこで感染症医師に聞いた、オフィスにおける、かぜやインフルエンザ、ウイルス性胃腸炎などの感染症予防策のうち、意外と知られていない内容を紹介する。

オフィスの感染予防策


のぞみクリニックの筋野恵介医師によれば、オフィスでは、次のことに注意するのがよいのだそうだ。

1.感染している人との会話や会議中
感染している人と会話をするときは、あまり近距離で離さないこと、そして、風上にいることが基本だという。

「ウイルスに鼻汁や唾液などが付着した飛沫は約1〜3m、強い咳やくしゃみは約4〜5m飛ぶこともあります。よくTV等で見かける偉い方の会議の風景を見ていると、少人数にも関わらず、広々と円形や四角形にテーブルを並べ、距離を置き、マイクで話していることが多いと思います。これは、国の偉い方がみんな同時に病気に感染しては困るからといわれています」

「狭い部屋での会議中は、近距離になりすぎないよう意識したほうがいいでしょう。風上に自分かいることが大事です。席を選べるなら換気扇から離れた位置に座る、窓やドアが開放されている場合はその近くに座るほうがいいでしょう」

2.公共トイレのハンドドライヤー
「ハンドドライヤーとは、手の水滴をジェット気流で弾き飛ばすもの。このハンドドライヤーの内部、特に底に弾き飛ばされた水滴、飛沫核(ウイルス)を再度巻きあげてしまうことがあります。メーカーが指定するうまいタイミングとスピードで手を引き抜けば問題ないですが、手を早く引き抜いたり、ゆっくり引き上げていて途中で気流が止まってしまったりした場合は、手に飛沫核がついてしまう可能性があります」

3.オフィスのトイレ
「普段何気なく使用しているオフィスのトイレで、ウイルス性胃腸炎に感染するケースが多いです。オフィス、外出先のトイレは、不特定多数の人が使っており、自分の前にトイレに入った方がどんな方かはわかりませんし、外出先のトイレの便座やドアノブをきれいに拭いて行ってくれる方なんてまずいませんよね。
最近は便座の除菌シートを置いているところも多いので、しっかり除菌し、その後しっかり手洗いしてからトイレを使用するといいです。使う方の間で、5個トイレの個室があったら、換気扇のある一番奥は胃腸炎の方が優先などと決めてしまうのもいいですね」

4.オフィスの速乾性手指消毒剤
「最近オフィスで、速乾性の手指消毒剤が置かれていることが多いです。基本的には補助的な役割と考えてください。指先、指間、手の甲等、隅々までは洗えません。
基本は手洗いですが、毎回部屋から出るたびに手洗いしていたら大変ですよね。そのために簡易的に置いてあるものです。部屋を出入りするたびにシュシュッとして、あまりたよりすぎないようにしましょう」

3秒ルールはやっぱり間違いだった


ところでオフィスに限らず、外で飴やスナック菓子などの食べ物を落としても、3秒以内に拾えば大丈夫という「3秒ルール」が昔からある。筋野先生によれば、この考えはやはり間違いなのだという。

「3秒ルールは、昔は私も信じていましたが、海外の文献でこれを検証したものがあります。トイレ、学校の床、道路等、色々な場所でチョコレートや飴などを落として、菌がどのくらいつくかを検証しています。結果は、3秒以内も、3秒以上も雑菌の付着している数に差はないというものです。
ただし、落とした場所、落とした物によって付着する菌の数は変わります。お分かりかと思いますが、オフィスの床で落とした物のほうが、トイレで落とした物より雑菌の付着は少ないですよね。飴玉のように乾燥している物のほうがチョコレートのようにべたべたしているものより菌の付着は少ないですよね。とはいえ、落としたものは決して口にしないようにしてください」

オフィスや公共の場所には、目に見えないウイルスが潜んでいる可能性がある。意外と盲点だったハンドドライヤー、トイレなどはぜひ注意して過ごそう。
(石原亜香利)

取材協力
医師 筋野 恵介先生
埼玉医科大学病院に勤務し、海外・国内の感染症の治療、抗菌薬の適正使用の指導が専門。ER科にも所属し、外科・整形外科等の救急疾患治療に従事。現在はのぞみクリニックに勤務。
http://www.nozomiclinic.jp/