コンプレックスだらけの自分を解放したくて――広瀬アリス、女優道を突き進む。
2015年に『Seventeen』の専属モデルを卒業する際、広瀬アリスは「私は女優の道に進みます」と固い決意を見せた。そしてその宣言通り、映画にドラマにと活躍の場を広げ、2017年1月11日から上演の『世界』で、舞台に初挑戦となる。実際の殺人事件をモチーフにした映画『葛城事件』で話題を集めた赤堀雅秋作・演出の“やるせない喜劇”作品で、風間杜夫、大倉孝二、早乙女太一などベテラン俳優陣との共演で演じるのは、風俗嬢のあずみ役。舞台デビューを前に、意気込みを聞いた。
撮影/アライテツヤ 取材・文/江尻亜由子
スタイリング/櫻井まさえ ヘアメイク/宮本 愛
――広瀬さんは小6のときにスカウトされて芸能界入りし、まずはモデルとして知名度を上げられましたよね。
スカウトされた当初は、芸能界のお仕事はすぐにやめるつもりでいたんです(笑)。バスケを続けたくて。でも、日が経つごとに楽しいなと思い始めて。
――最近は、映画やドラマなど数々の映像作品作に引っ張りだこですが。
ここ2〜3年の話ですけど、きちんと女優のお仕事をやっていこうと決めました。
――20歳を超えてから、お仕事への意識が変わった?
そうですね。本気で続けていこうと思うようになりました。このお仕事を始めた最初は、モデルではなくお芝居のほうが先だったんです。だから今、お芝居がメインになって、本来のお仕事に戻った感じかな、と思います。
――今、女優のお仕事は楽しいですか?
役について考えているときとか、お芝居のプランとかを考えているときが、一番楽しいです。実は、自分でいる時間は短くしたいというか……あんまりいろんなことを考えたくなくて(笑)。
――その「自分でいる時間を短くしたい」という理由が、自分があまり好きではないからだ、という発言を耳にしたのですが。それは一体なぜでしょう?
誰もがそうだと思うんですけど、コンプレックスって、自分が一番わかってるじゃないですか?
――はた目から見るとコンプレックスなんてないのでは、と思いますけど。
いやいやいや。
――たとえば、どんなことですか?
私は、自分の性格がイヤ。面倒くさいんです。周りからもよく言われるんですけど、すごく気分屋なんですよね。友だちだったら一番イヤなタイプだと思います(笑)。
――さきほど、お芝居について考えている時間が楽しいとおっしゃっていましたが、こんなに立て続けに大きな役での出演が続いて、つらいな、大変だなっていう思いはないですか?
このお仕事って楽しいですけど、実は8割くらいがそっちで。わからないことしか、ないですし……。相手の方もタレントさんなので、役柄と素の状態、どちらで接したらいいのか悩んだり。どんなお仕事でも、壁には毎回、100%ぶつかります。
――それは、どうやって克服を?
事務所に入って10年が経つんですけど、映像では最近やっと、お芝居の現場での時間の使い方というか、リズムが作れるようになったんです。ただ、舞台はゼロからのスタート。今はまだ、自分が舞台に立って、たくさんのお客さんの前でお芝居をしているっていうのが、まったく想像つかないです。
――2017年1月11日から上演となる『世界』で、舞台に初挑戦ということで、詳しくお話を伺っていきたいんですが、もともと舞台への興味はあったんですか?
事務所の先輩にあたる鈴木 杏さんや勝地 涼さんの舞台を観に行かせていただいていたので、いつかやりたいなとは思っていたんですけど、まだまだ先かなって。自分のポテンシャル的な問題もあるし、映像でやっと自分のリズムができ上がってきた頃なので。2〜3年くらいして、自分のお芝居がもっと確立されてからと思っていたら……(笑)。
――もう舞台が決まったぞ、と(笑)。
でもこのタイミングで、大先輩のみなさんと一緒に初舞台をやらせていただくっていうのは、本当にありがたい経験です。
――鈴木 杏さんが出演された舞台『ムサシ』は3回ご覧になったそうですが、それは何か惹かれるものがあったんですか?
キャストが何度か変わったので、そのたびに観に行かせていただきました。舞台を観るのは好きです。その場の空気感とか、お客さん含めての一体感だったりが、観てる側としてはすごく楽しいんです。だけど出る側になってみると……イヤだな、どうしようっていう(笑)。
――「イヤだな」って言っちゃった(笑)。
気が楽だったんですよね、観る側としては。でも出る側になっちゃうと、好きなぶん、緊張につながってしまうので。なるべく考えないようにはしているんですけど。
――今回の舞台のお話を初めて聞いたときは、どう思いました?
いやぁ…とうとう来たかって(笑)。もちろん、うれしい気持ちはあるんです! お話をいただいたのが夏だったんですけど、ちょうどその頃、映画『巫女っちゃけん。』の撮影で福岡にいたんです。だからあんまり現実味がなくて。そこから月日が経って、舞台関連の取材を受けたり、ポスター撮影をしたり、稽古が始まってみたりっていうなかで、現実味が増してきたというか。
――いよいよ始まるぞ、ということで緊張してきましたか?
緊張のしすぎで、体調も崩しちゃって(笑)。稽古初日、家を出る前に緊張をまぎらわすため、飼ってるワンちゃんと遊んでたんですよ。そしたら、うちの真っ白なワンちゃんが、急に赤くなったんです。「え!?」ってビックリして、ワンちゃんから血が出たのかと思ったら、自分の鼻血だったという(笑)。
――えーっ!?
自分の鼻血だってわかった瞬間、ドキドキが止まらなくなって(笑)。「ダメだ、あと1時間で私は家を出ないといけないのに!」みたいな。そんな感じで、結局その日は何も食べられずに稽古に行って、終わってやっと安心して、夜ごはんをちょっと食べて寝る、みたいな感じでした。
――実際に稽古場に行ってみての初日はどうでした?
緊張しちゃって、誰とも、ほとんど話ができず。ただひたすら、床をあんなに見ていたのは久々でした(笑)。
――(笑)。和田正人さんとは、共演経験があるんですよね。
はい。だから笑われました。「なにそんなに緊張してんの?」って。
――稽古に入って少し経ちましたが、今はいかがですか?
やっぱり映像とは違うなって。映像は、短い期間でぎゅっと撮影することが多いですけど、舞台では、共演者のみなさんと1〜2ヶ月のあいだずっと一緒にいることになるので。またちょっと違う空気だなっていうのは感じます。
――稽古場で、少しでもリラックスするための対策は?
ストレッチです。脚を伸ばしたり、逆立ちしたり(笑)。
――さすがの運動神経(笑)。でも、逆立ちで心を落ち着かせられるんですか?
循環をよくすると、スッキリするというか。自分がお芝居しないときには座って台本を見てることが多いんですけど、やっぱり舞台なので、1シーンが長いんですよ。だから体が固まらないように、休憩時間になったらストレッチしたり、逆立ちしたりとかすると、気分転換になるんです。
――本作では、地方都市の町工場を営む家族を中心とした、閉じた世界の日常がリアルに描かれますよね。広瀬さんが演じるあずみは、どんな役柄なんでしょう。
あずみは風俗嬢なんですけど、風俗をやってることに関しては、そんなに抵抗はない子で。「寂しいから」とか、自分の中にぽっかり空いた穴を埋めるためにやっているっていう、感覚としては“イマドキの女の子”だと思います。
――途中まで台本を拝見しましたが、あずみは淡々とした感じですよね。
彼女のセリフだったりは、けっこう「うわぁ」ってなることを言ってるんですけど、それをかなり「軽く言って」と、(演出の)赤堀(雅秋)さんからずっと言われていて。風俗という仕事に対しての壁がなくて、全然重く捉えていないというか。私自身も、あずみのそういう部分はすごく理解はできたので。
――どういう部分ですか?
自分で自分を騙しているというか。「寂しいから風俗をやる」って聞くと、普通は「え?」ってなるんですけど、たぶん彼女は、そこしかすがるところがないんだと思うんです。本当は「彼氏が欲しい」とか「家族と一緒に楽しく暮らしたい」みたいな気持ちがあるんだけど、そういう自分の気持ちを騙して風俗に走っている部分は、共感とはいえないけど、理解はできるなと思いました。
――役作りのプランはありますか?
今回は役作りっていうのはとくになくて、稽古場で吸収できるものを吸収するつもりです。舞台は初めてなので、それぐらいでいったほうがいいのかなって思っています。
――映像のお仕事だと、役作りの方法みたいなものはあるんですか?
思ったことを、ざっとノートに書き出してみたりとか。映像は瞬発力が一番大事だと思っていて、カメラの前で一瞬でバッと出して、また次のカット、次のカットって撮影していくイメージなんです。だから、ここまで作品全部を長い期間考え続けるって、なかなかなくて。
――今までは、撮影期間中は日常でも役を引きずるほうだと発言されていますよね。
でも、プライベートで風俗嬢を引きずりたくないです(笑)。
――稽古期間も長いですし(笑)。
そう。舞台だと稽古っていう場があるので、そこに集中して、家ではなるべく考えないようにしてます。
――そう考えると、稽古が長いぶん、安心感はありそうですね。
今は緊張しすぎてセリフが頭に入ってこないんですけど、いつかはセリフも覚えられるだろう、くらいの感じでやってます。何回も何回も同じことをやっていたら、慣れますよね……?(笑)
撮影/アライテツヤ 取材・文/江尻亜由子
スタイリング/櫻井まさえ ヘアメイク/宮本 愛
お芝居のプランを考えているときが一番楽しい
――広瀬さんは小6のときにスカウトされて芸能界入りし、まずはモデルとして知名度を上げられましたよね。
スカウトされた当初は、芸能界のお仕事はすぐにやめるつもりでいたんです(笑)。バスケを続けたくて。でも、日が経つごとに楽しいなと思い始めて。
――最近は、映画やドラマなど数々の映像作品作に引っ張りだこですが。
ここ2〜3年の話ですけど、きちんと女優のお仕事をやっていこうと決めました。
――20歳を超えてから、お仕事への意識が変わった?
そうですね。本気で続けていこうと思うようになりました。このお仕事を始めた最初は、モデルではなくお芝居のほうが先だったんです。だから今、お芝居がメインになって、本来のお仕事に戻った感じかな、と思います。
――今、女優のお仕事は楽しいですか?
役について考えているときとか、お芝居のプランとかを考えているときが、一番楽しいです。実は、自分でいる時間は短くしたいというか……あんまりいろんなことを考えたくなくて(笑)。
――その「自分でいる時間を短くしたい」という理由が、自分があまり好きではないからだ、という発言を耳にしたのですが。それは一体なぜでしょう?
誰もがそうだと思うんですけど、コンプレックスって、自分が一番わかってるじゃないですか?
――はた目から見るとコンプレックスなんてないのでは、と思いますけど。
いやいやいや。
――たとえば、どんなことですか?
私は、自分の性格がイヤ。面倒くさいんです。周りからもよく言われるんですけど、すごく気分屋なんですよね。友だちだったら一番イヤなタイプだと思います(笑)。
――さきほど、お芝居について考えている時間が楽しいとおっしゃっていましたが、こんなに立て続けに大きな役での出演が続いて、つらいな、大変だなっていう思いはないですか?
このお仕事って楽しいですけど、実は8割くらいがそっちで。わからないことしか、ないですし……。相手の方もタレントさんなので、役柄と素の状態、どちらで接したらいいのか悩んだり。どんなお仕事でも、壁には毎回、100%ぶつかります。
――それは、どうやって克服を?
事務所に入って10年が経つんですけど、映像では最近やっと、お芝居の現場での時間の使い方というか、リズムが作れるようになったんです。ただ、舞台はゼロからのスタート。今はまだ、自分が舞台に立って、たくさんのお客さんの前でお芝居をしているっていうのが、まったく想像つかないです。
緊張しすぎて鼻血が…!? 初舞台を前にした現在の心境
――2017年1月11日から上演となる『世界』で、舞台に初挑戦ということで、詳しくお話を伺っていきたいんですが、もともと舞台への興味はあったんですか?
事務所の先輩にあたる鈴木 杏さんや勝地 涼さんの舞台を観に行かせていただいていたので、いつかやりたいなとは思っていたんですけど、まだまだ先かなって。自分のポテンシャル的な問題もあるし、映像でやっと自分のリズムができ上がってきた頃なので。2〜3年くらいして、自分のお芝居がもっと確立されてからと思っていたら……(笑)。
――もう舞台が決まったぞ、と(笑)。
でもこのタイミングで、大先輩のみなさんと一緒に初舞台をやらせていただくっていうのは、本当にありがたい経験です。
――鈴木 杏さんが出演された舞台『ムサシ』は3回ご覧になったそうですが、それは何か惹かれるものがあったんですか?
キャストが何度か変わったので、そのたびに観に行かせていただきました。舞台を観るのは好きです。その場の空気感とか、お客さん含めての一体感だったりが、観てる側としてはすごく楽しいんです。だけど出る側になってみると……イヤだな、どうしようっていう(笑)。
――「イヤだな」って言っちゃった(笑)。
気が楽だったんですよね、観る側としては。でも出る側になっちゃうと、好きなぶん、緊張につながってしまうので。なるべく考えないようにはしているんですけど。
――今回の舞台のお話を初めて聞いたときは、どう思いました?
いやぁ…とうとう来たかって(笑)。もちろん、うれしい気持ちはあるんです! お話をいただいたのが夏だったんですけど、ちょうどその頃、映画『巫女っちゃけん。』の撮影で福岡にいたんです。だからあんまり現実味がなくて。そこから月日が経って、舞台関連の取材を受けたり、ポスター撮影をしたり、稽古が始まってみたりっていうなかで、現実味が増してきたというか。
――いよいよ始まるぞ、ということで緊張してきましたか?
緊張のしすぎで、体調も崩しちゃって(笑)。稽古初日、家を出る前に緊張をまぎらわすため、飼ってるワンちゃんと遊んでたんですよ。そしたら、うちの真っ白なワンちゃんが、急に赤くなったんです。「え!?」ってビックリして、ワンちゃんから血が出たのかと思ったら、自分の鼻血だったという(笑)。
――えーっ!?
自分の鼻血だってわかった瞬間、ドキドキが止まらなくなって(笑)。「ダメだ、あと1時間で私は家を出ないといけないのに!」みたいな。そんな感じで、結局その日は何も食べられずに稽古に行って、終わってやっと安心して、夜ごはんをちょっと食べて寝る、みたいな感じでした。
――実際に稽古場に行ってみての初日はどうでした?
緊張しちゃって、誰とも、ほとんど話ができず。ただひたすら、床をあんなに見ていたのは久々でした(笑)。
――(笑)。和田正人さんとは、共演経験があるんですよね。
はい。だから笑われました。「なにそんなに緊張してんの?」って。
――稽古に入って少し経ちましたが、今はいかがですか?
やっぱり映像とは違うなって。映像は、短い期間でぎゅっと撮影することが多いですけど、舞台では、共演者のみなさんと1〜2ヶ月のあいだずっと一緒にいることになるので。またちょっと違う空気だなっていうのは感じます。
――稽古場で、少しでもリラックスするための対策は?
ストレッチです。脚を伸ばしたり、逆立ちしたり(笑)。
――さすがの運動神経(笑)。でも、逆立ちで心を落ち着かせられるんですか?
循環をよくすると、スッキリするというか。自分がお芝居しないときには座って台本を見てることが多いんですけど、やっぱり舞台なので、1シーンが長いんですよ。だから体が固まらないように、休憩時間になったらストレッチしたり、逆立ちしたりとかすると、気分転換になるんです。
風俗嬢役に挑戦 役作りはあえてのノープラン
――本作では、地方都市の町工場を営む家族を中心とした、閉じた世界の日常がリアルに描かれますよね。広瀬さんが演じるあずみは、どんな役柄なんでしょう。
あずみは風俗嬢なんですけど、風俗をやってることに関しては、そんなに抵抗はない子で。「寂しいから」とか、自分の中にぽっかり空いた穴を埋めるためにやっているっていう、感覚としては“イマドキの女の子”だと思います。
――途中まで台本を拝見しましたが、あずみは淡々とした感じですよね。
彼女のセリフだったりは、けっこう「うわぁ」ってなることを言ってるんですけど、それをかなり「軽く言って」と、(演出の)赤堀(雅秋)さんからずっと言われていて。風俗という仕事に対しての壁がなくて、全然重く捉えていないというか。私自身も、あずみのそういう部分はすごく理解はできたので。
――どういう部分ですか?
自分で自分を騙しているというか。「寂しいから風俗をやる」って聞くと、普通は「え?」ってなるんですけど、たぶん彼女は、そこしかすがるところがないんだと思うんです。本当は「彼氏が欲しい」とか「家族と一緒に楽しく暮らしたい」みたいな気持ちがあるんだけど、そういう自分の気持ちを騙して風俗に走っている部分は、共感とはいえないけど、理解はできるなと思いました。
――役作りのプランはありますか?
今回は役作りっていうのはとくになくて、稽古場で吸収できるものを吸収するつもりです。舞台は初めてなので、それぐらいでいったほうがいいのかなって思っています。
――映像のお仕事だと、役作りの方法みたいなものはあるんですか?
思ったことを、ざっとノートに書き出してみたりとか。映像は瞬発力が一番大事だと思っていて、カメラの前で一瞬でバッと出して、また次のカット、次のカットって撮影していくイメージなんです。だから、ここまで作品全部を長い期間考え続けるって、なかなかなくて。
――今までは、撮影期間中は日常でも役を引きずるほうだと発言されていますよね。
でも、プライベートで風俗嬢を引きずりたくないです(笑)。
――稽古期間も長いですし(笑)。
そう。舞台だと稽古っていう場があるので、そこに集中して、家ではなるべく考えないようにしてます。
――そう考えると、稽古が長いぶん、安心感はありそうですね。
今は緊張しすぎてセリフが頭に入ってこないんですけど、いつかはセリフも覚えられるだろう、くらいの感じでやってます。何回も何回も同じことをやっていたら、慣れますよね……?(笑)