72歳で出産したインドの女性(出典:http://www.aljazeera.com)

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インドで体外受精が最初に行われたのは今から40年ほど前である。インド社会では子どもがいない夫婦への社会的プレッシャーが大きいといわれ、体外受精を扱うクリニックはインドの地方都市にまで一気に広がり、不妊治療は一種のブームとなってきた。しかし超高齢でも望めば妊娠出産が可能になっている現在、その倫理観が問われている。実際に高齢で出産した人々の声を拾うことで、その厳しい現実がみえてきた。

2008年、70歳で出産し世間を騒がせたRajo Devi Lohan(ラジョ・デヴィ・ロハン)さんは、現在78歳。出産後は子宮破裂、癌、潰瘍などに苦しみ、これまで3回もの手術や化学療法に耐えてきた。しかし未だに体調は優れず、胃痛に悩まされている。

不妊治療の際、高齢出産後に起こり得る危険性について、私の担当医からは一切の説明がありませんでした。私も子どもを産むことが自分の身体に与える影響について、真剣に考えてはいなかったのです」と語る。

しかし現在の彼女の主治医は「健康問題は高齢出産によるものです。70歳から不妊治療を始めたということは、いじってはいけないホルモンを刺激してしまったのです」と断言する。

今年4月には、72歳のダルジンダー・カウアー(Daljinder Kaur)さんが男の子を出産し話題となった。子どもを授かったことに感謝し、母親となってもうすぐ5か月となるダルジンダーさんだが「ここにきて身体が弱っているのを感じます。この子が泣き止まないのはよくあること。でもなだめることもできず、とても神経質になってしまいます。ほんとうにつらいわ」と現在の心境を明かしている。

ラジョさんやダルジンダーさんを担当したハリヤナ州ヒサール不妊治療センターのアヌラーグ・ビシュノイ(Anurag Bishnoi)医師は「60代、70代の父親は珍しくないでしょう。だったら女性も年齢に関係なく妊娠する権利があるはずです」と豪語する。

これまでに不妊治療により50歳以上の女性100名の妊娠に携わったというアヌラーグ氏は「不妊治療の前には母体が妊娠、出産に耐えられるかきちんとチェックしています。高齢だからといってリスクが高いとは言い切れないと思っています」と胸を張る。

一方で「不妊治療に関わる医師は名声や金に目がくらみ、母体や産まれてくる子供、さらには卵子の提供者のリスクをおざなりにしているのです」と批判する者もあとを絶たない。今のインドには体外受精の年齢を規制する法は存在しない。

「補助生殖のためのインド協会(Indian Society of Assisted Reproduction)」の理事を務める医師ナレンドラ・マルホトラ(Narendra Malhotra)氏は「科学がいくら進歩したからといって、72歳の女性を妊娠させるということは危険すぎます。ビシュノイ氏は神の領域に踏み込んでしまっているのです。高齢出産に関しては、私たちひとりひとりが“非倫理的である”ともっと声をあげるべきです」と憤る。