「安いものを大量に」という工業生産モデルからの脱却、そして経済成長モデルの転換に取り組む中国政府は今年、「匠の精神」を培うという方針を大々的に打ち出した。これは日本やドイツの職人が持つ精神に学んだものと言え、中国式の「匠」が一体どのように育まれていくのかに注目が高まっている。(イメージ写真提供:123RF)

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 「安いものを大量に」という工業生産モデルからの脱却、そして経済成長モデルの転換に取り組む中国政府は今年、「匠の精神」を培うという方針を大々的に打ち出した。これは日本やドイツの職人が持つ精神に学んだものと言え、中国式の「匠」が一体どのように育まれていくのかに注目が高まっている。

 中国メディア・捜狐は23日、「あなたは日本人が愚かだと思いますか」とする記事を掲載した。日本の職人が頑固に守る「匠」の精神を、「そこまでやらなくても」と愚かに感じるか、それとも賞賛する姿勢を持っているのか、という問題提起である。

 記事はまず、東京・銀座で開店から60年あまりの間コーヒーしか出さないでやってきたカフェを紹介。日本で「コーヒーの神」と崇められる店主・関口一郎氏が「コーヒーもちゃんと淹れられないのに、他のものが出せるか」と本式のコーヒーへの飽くなき探求を続けて来たことを説明した。そして、一生をコーヒーに捧げる人生について「本当にそれほどまでする価値があるのか。日本人は愚かではないのか」と疑問を呈した。

 そのうえで、関口氏のひたむきな、「愚か」にも思えてしまう姿勢が実は「先人の遺志を受け継いできたものに過ぎない」とし、「日本の発展はこの執拗、頑固さに掛かっていたのだ」と解説。その例として、89年の生涯を絵画に捧げ「100歳で何とか一人前の絵が描けるよう精進せねば」との精神を貫いた葛飾北斎の生涯を挙げた。さらに、15年以上の経験を積み、20段階あまりの試験をパスすることで初めて「匠」の称号を得られるという、レクサス九州工場の塗装作業についても紹介している。

 記事は、日本の「匠」の精神について「歴史と現代の絶え間ない衝突によって新たな火花を生み出す」と評価。「忙しい中で立ち止まり、『なぜ』を考えるところから出発し、前進するという実践の繰り返しこそ製造業の基本である」ということを、「利益至上主義とは背反する『愚直』な執念を代々守り続けることで、世界に向けて証明しているのだ」と論じた。

 物事を突き詰めようとすると、往々にして寝食をはじめ、その他の生活や活動が疎かになる。そして周囲からはしばしば奇異の目で見られたり、「変人」呼ばわりされたりするのである。「匠」と「愚直」はしばしばセットになる。彼らにとっての「愚」はむしろ褒め言葉だろう。傍から見て「愚か」に見えるほどの好奇心、執着心、向上心がなければ、世人をあっと言わせるほどの高みに到達することは難しいのだ。中国で「匠」が育つかどうかは、まさに「利益至上主義」の呪縛を解き払い、愚直にその道を突き詰めることができるかにかかっているのである。(編集担当:今関忠馬)(イメージ写真提供:123RF)