サウジアラビア戦の出場を回避して回復に努めた打撲の状態は、快方に向かっている。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

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 グループリーグ最終戦のサウジアラビア戦に勝利し、日本は3連勝で決勝トーナメントに進出した。その破竹の勢いは、この男の右足から始まったと言っても過言ではない。
 
 初戦の北朝鮮戦の前半、日本の攻撃の起点となっていたのは、他の誰でもない右SBの室屋だった。果敢にオーバーラップを仕掛け、多くのチャンスを作り出すと、5分には突破からクロスを送りCKを獲得。このCKから植田のゴールが生まれた。植田、アシストした山中に注目が集まったが、室屋は“陰の功労者”、そう評して良いだろう。
 
 第2戦のタイ戦にも先発フル出場した室屋だが、試合中に相手選手と接触し、右足を打撲してしまう。その後2日間は別メニューで調整を続け、第3戦のサウジアラビア戦の出場も回避した。
 
 右足の状態はどうなのか、サウジアラビア戦から一夜明けた練習後、本人に聞くと「もう大丈夫です。(2日後の準々決勝に)もし出られたら頑張りたいです」と答える。
 
 そして続く準々決勝のイラン戦については「先制されるのは避けたいです。まずはSBとしてディフェンスから入って、行かせない、やらせない守備をしたい。攻守の配分やつなぐところと蹴るところの判断は、ノックアウトステージだからと変に意識するのではなく、いつもと変わらないのがベストだと思う。攻め上がることで相手のサイドハーフを下げさせる駆け引きもしたい」と語る。
 
 イランは基本的に4-1-4-1のシステムで戦い、サイドからの攻撃を得意とする。それに対抗するには、SBのパフォーマンスが重要になるだろう。さらに右膝の状態が思わしくない松原は長時間の出場が難しい状況で、サウジアラビア戦で試された本来左SBの亀川は不安定さを見せただけに、右SBとして唯一計算できる室屋の存在は非常に大切になる。
 
「ノックアウトステージはすごく難しい試合になるとは思います。でもこのチームなら乗り越えられるはず。五輪に懸ける想いは強いし、本大会に出場することが大事だと思っている。五輪を目指す気持ちは大会が始まる前も今も変わっていない」
 
 熱い言葉を聞いていると、これまで以上の期待をかけたくなる。日本を支える右の翼は五輪出場へ大きな仕事を果たしてくれるはずだ。
 
取材・文:本田健介(サッカーダイジェスト編集部)