槙野がチームの改善点として挙げるのが、守備面だ。大勝したとはいえ新潟戦の終盤には2失点を喫した。ただしそれは「今のままではダメだぞという警告を受けたのだと受け止めている。むしろタイミング的には良かったのかもしれない」と、ひとつの教訓として受け止める。
 
「(西川)周作をはじめ守備陣で、失点数は(第1ステージ通算で)15以下を目標にしていた。しかし17失点と、ちょっと上回ってしまった。特にシーズン序盤はなかった複数失点が目立ってきている。失点数の減少は、後半戦のテーマになる」
 
 もうひとつ浦和の選手にモチベーションをもたらしているのが、Jリーグ王者になれれば、12月10日から日本で開催されるクラブ・ワールドカップの出場権を得られる可能性があることだ。G大阪と柏がACLの決勝トーナメントで敗れればという条件付きだが、チャンピオンシップに進む浦和は世界挑戦の権利を手にしているわけだ。
 
 もしもACLの「敗者復活」でその挑戦権を手に入れられれば、失地から豪快に突き抜ける浦和らしい展開だ。それは周囲から色々と言われながらも、改善を繰り返しつつ大切な信念は貫き、ピッチでしっかり結果を残してきた、槙野の歩みとも通底する――そんな物語をぜひ実現してもらいたい。
 
「90分間のなかで相手を上回る走力と球際の強さを見せ、よりヨーロッパの強豪に近いスピードのあるサッカーを展開したい。とはいえ、まずは一つひとつの積み重ね。一つひとつのプレーにこだわりを持って取り組んでいくことが大切。ひとつのミスに対し、よりシビアに向き合い、良い緊張感を持って、締めるところは締めていきますよ」
 
 大原の練習場に行くと、大きな声を張り上げる槙野の姿が必ずある。明るく、ストイックに、勝利のために。すべてのメニューを終えたあとの涸れた声は、日々、進化の証だ。
 
取材・文:塚越 始(サッカーダイジェスト編集部)

■プロフィール
まきの・ともあき/1987年5月11日生まれ、広島県出身。182センチ・77キロ。広島ユース-広島-ケルン(GER)-浦和。日本代表17試合・2得点。恩師ペトロヴィッチ監督の要望に応えて、12年に加入。13年、完全移籍を果たした。左のストッパー。