「(A代表に招集されたことで)気持ちの面で変化はあったと思います。あとはハリルホジッチ監督から、こことあそこが駄目だ、それにここをもっと伸ばせと、宿題を告げられています。自分の苦手なプレーが分かったうえで練習し、実戦に結び付けることもできています。それに浦和の紅白戦はレベルが高いから、日々、挑戦できている。周囲の目も厳しくなりました。ペトロヴィッチ監督からの要求も高まっています」
 
 ふたりの指揮官から高難度の宿題が出されれば、「来たな」と喜ぶ。課題は現在地を知る材料であり、明日への成長の糧となっている。
 
 そんな槙野のストイックな一面は、プライベートの時間でも見られる。自宅や移動中、暇さえあれば欧州を中心としたあらゆるカテゴリーの試合の映像をチェックしている。
「最近はコパ・アメリカを観ていましたね。自分のプレーを確認することもあるけど、基本的にはいろんな国やクラブの最先端のサッカーに触れて研究しています。多分レッズで他にいないぐらい、いろんな選手を知っていますよ。元々そうでしたけど、さらにハマっています。今でも大好きです、サッカーを観るのは」
 
 例えば、ブンデスリーガの注目チームを問うと、すぐに3チームの名前が挙がった。
「ドイツは全チームに特長がありますからね。なかでも現在のレッズが理想とするバイエルンの試合は、必ずチェックしていました。ただ浦和との共通点を考えれば、レバークーゼンの統率のとれた攻守の切り替え、走力の部分は、参考にしていました。もちろん、個人的には(以前在籍した)ケルンは応援していて、必ず試合は確認していますよ」
 
 昼夜ともサッカー漬け。その旺盛な探究心は、世界への挑戦に直結するものだ。それだけに第1ステージの快進撃を振り返る際、触れなければいけないのが、5試合勝ち星なくグループステージ敗退が決まったアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)についてだ。昨季から続く悪循環に呑まれ、突き付けられた現実を、槙野はどのように咀嚼し、吸収したのか。
 
「目標にしていた重要なタイトルだっただけに、ショックは大きかったです。それだけに、自分たちに足りないものを痛感させられたのも事実でした。ただ、結果はネガティブだったけど、大会後に残ったものは、Jリーグの戦いに活かせる前向きなものばかりだったと思っています」
 
 槙野が注目したのが、相手チームの監督や選手のコメントだった。そこから本音を見出し、改善点を探っていった。
 
「まず『浦和は素晴らしい』『強かった』という前置きのあとに、必ず『けれど』となる。そこからですね、ここが駄目だねという彼らの本音が出ます。今回は耳が痛くなる話も多かったけど、そこに自分たちの不甲斐なさが表われていました。それを理解したうえで、Jリーグの戦いに還元していったんです」
 
 ちょうど日本代表に復帰した時期でもあった。今一度、自らに不足する部分に目を向けた3月から4月にかけての葛藤が、結果、彼を一段と奮い立たせる原動力にもなった。
 短い2週間のインターバルを経て、後半戦の17試合――第2ステージが始まる。まず浦和は、松本(7月11日/アウェー)、山形(15日/アウェー)、広島(19日/ホーム)という9日間での3連戦に臨む。チームの目標は、年間勝点1位、2ステージ制覇、そして年間王者のタイトル獲得だ。さらにナビスコカップと天皇杯も当然狙う。
 
 槙野は『浦和包囲網』突破を誓う。
「ファーストステージ優勝を受け、相手チームも綿密にスカウティングし、『対浦和』の戦い方を変えてくるでしょう。僕らはそれを上回るサッカーをする。『浦和はこういう戦い方をしてくるはず』という予測を超える、さらに進化したスタイルを見せていきたい」