肉塊でトロッ、ジュワッ! ならば、老舗のローストビーフしかない

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イギリスの伝統料理である、ローストビーフ。古くから日本に伝来され、親しまれてきた。伝統と格式を兼ね備えた、ローストビーフの名品をご賞味あれ。

ラ ブラスリー

素材選び、焼き方…etc.その味わいには理由がある

1890年(明治23年)開業。今年で125周年を迎えた日本を代表するグランドホテルといえば、『帝国ホテル』だ。その長い歴史を彩る“食”のトピックとしては、シャリアピンステーキや、ブフェスタイルのレストラン「バイキング」を生み出したことが有名だが、もうひとつ忘れてはならぬのが、ローストビーフ。

現在、館内の『ラ ブラスリー』と『インペリアルバイキング サール』で供されているこの料理もまた、帝国ホテルの伝統を彩ってきた。歴史を遡ると明治天皇の誕生日を祝った晩餐のメニューにも「ロース牛肉」という名でその存在が記録されているほどだ。

ホテル内のレストランに於いてメインディッシュを代表する料理、に位置づけられているだけに、素材選びから気が抜けない。ブッチャーシェフの村野哲司氏によると、「『ラ ブラスリー』のローストビーフには、USリブロースを使います。色が鮮やかで、持った時にハリのあるものを選び、一晩の水抜きと丁寧な掃除の後、厨房へ渡します」。

ブッチャーから届いた肉を仕上げるのは、シェフの八坂繁之氏。「塩をしっかりと打ちフライパンで焼き目をつけたら、しっとりとした食感を損なわぬように低温のオーブンで、肉にストレスをかけずに焼くのがポイントです」。そして、サーヴする際に約1?の厚みにカットするのは、ソースがよく絡むようにという配慮から。長い歴史が紡いだ逸品には死角なし、である。

ローストビーフの店 鎌倉山本店

真似できない専門店の味 滋味深き肉汁を堪能すべし

店名が示す通り、創業以来の44年間、ローストビーフ一徹の姿勢は揺るがない。こだわりの逸品を味わいに、全国各地から人が訪れる人気店だ。

こちらで使用するのは適度にサシの入った黒毛和牛。塊肉をオーブンで蒸し焼きにすることで、余分な脂を落としつつ、ジューシーでコクのある、専門店ならではの味を実現させている。桜色と表現しようか、はたまた桃色か…ひと目で他との違いが分かる、控えめで上品なピンクの色合いは、まさにローストビーフ日本代表といった趣。この状態に仕上げるのに、10年ほどの修業が必要だという。

歴史ある邸宅を改装した店は、自然豊かな鎌倉山の中腹。約1,000坪の敷地は緑にあふれ、鳥のさえずりに包まれる。特別なひとときが約束された、とっておきのアドレスとして覚えておきたい。

ビヤホールライオン 銀座7丁目店

昭和の銀座の活気を伝える老舗ビヤホールの名コンビ

創建は1934年。店内に一歩踏み入れば、当時の雰囲気を残す、重厚な石造りの内装に圧倒されるはず。国内に現存する最古のビヤホールとしても名高いこの店には、“ビール注ぎ名人”が注ぐ生ビールと名物のローストビーフという、鉄板の組み合わせを心待ちにする人が大勢いる。

ローストビーフの提供は、1日2回の焼き上がりに合わせて行われ、すぐに売り切れることも多いとか。肉には塩とこしょうを多めにすり込み、8時間ほど寝かせて馴染ませ、遠赤外線オーブンでじっくりと火を通す。すっと噛み切れる柔らかさだが、しっかりした塩気ゆえ、ビールとの相性はいわずもがな。

気になる焼き上がり時間は、月曜から土曜なら午後5時と7時半、日曜・祝日だと午後3時と5時。こんな最高のコンビを味わえるなら、スケジュール調整も苦にならない。