東京都中央区にある日清紡の本社(資料写真:常井健一)

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紡績大手の日清紡<3105>は25日、半導体メーカーの新日本無線<6911>株式に対して実施している公開買い付け(TOB)で、1株あたりの買い付け価格を従来の840円から880円に変更すると発表した。同社は、引き上げの理由を「TOBの成功をより確実なものにし、可及的速やかな早期決着を図りたい」と説明。その上で、同無線の企業価値・株主利益の向上を強調しながら「製造業者として、マネーゲームにはしないとの意思表明」と、同じくTOBを仕掛けている村上ファンドをけん制した。

 この変更で、日清紡側がめざす同無線株50.49%の買い付けに必要な資金も、総額約167億円から約175億円に増える。また、11月9日付の公開買い付け届出書を訂正して、関東財務局に再提出するため、買い付け期限も当初の同29日から12月8日に延長する。

 新日本無線株をめぐっては、村上世彰(よしあき)氏率いるM&Aコンサルティングの関連会社が11月21日から12月15日までTOBを実施しており、買い付け価格を日清紡の840円を上回る900円としていた。

 一方、新日本無線の取締役会は24日、村上ファンド側のTOBへの反対を表明。25日には、同無線の労働組合も経営陣と同様の意見表明を行い、村上ファンドの敵対的な立場が強まった。これらの動きや買い付け価格の値上げで、同無線株50.49%保有し、日清紡側のTOBに理解を示していた日本無線<6751>にとって、予定通り日清紡側に応諾しやすい環境が整ったものと見られる。【了】

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