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最近、やたら"ものまねメイク"が話題になっている。ざわちんのメイク本は、発売2カ月で11万部を突破し、各メディアやイベントへひっぱりダコ。するとネット上で、「かじえり(梶恵理子)が元祖だ!」「全顔見せのかじえりが上」という反論が続出し、ちょっとした論争になった。

彼女たちの写真を見ると確かにスゴイ。有名人をマネたメイクは、もともと女性誌などの定番企画だったが、そのレベルをはるかに超えている。でも言ってみれば、「ニセモノ」であり、2人の知名度も低い。それなのになぜこんなに流行っているのか? そこには4つの理由が考えられる。

○【理由1 等身大な2人のヒロイン】

最もブログ連載が早かったのは、かじえり。その後、芸人のおかもとまりも続いたが、それほど話題を集めることはなかった。どちらかと言えば「タレントが芸の1つとしてやっている」というイメージが強く、その点ではコロッケや清水アキラと変わらない(古くは森口博子の工藤静香なんて名作メイクもあった)。

しかし、そこに"素人"のざわちんが現れ、ものまねメイクが芸でななく、一気に身近なものとなる。しかもブームを引っ張る、ざわちんとかじえりは、ともに学生で、芸能界的には売れていない部類だった。"ほぼ一般人"の2人だからこそ、多くの女性に「私もできそう」という親近感を持たせられたのだろう。さらに、メイク前などの写真で、すっぴんをさらすのも好感度アップに一役買っている。

○【理由2 本人をも巻き込むネット連鎖】

ティーン世代までネットが普及したことによって、メディアが飛びつき、口コミを生むものの質が大きく変わった。求められるのは、「実用性よりインパクト」「質よりスピード」「知名度より親近感」。ものまねメイクは、これら全てを満たしたコンテンツであり、写真の転載やSNSのシェアで、一気にメディア露出と口コミを増やしていった。

ネット上における最大の強みは、旬の人を取り込むフットワークの良さ。ざわちんがソチ五輪時に浅田真央選手&羽生結弦選手のものまねメイクをしたのはその代表例であり、本人や近しい人が「似ている」と認めることで、さらに火がつくという好循環が生まれている。また、ネット上の波及力が【理由3】にもつながっていく。

○【理由3 マスコミが飛びつく強烈な物販力】

ネットメディアは、広告と物販でお金を生み出すコンテンツへの嗅覚が鋭い。「見たら即購入」という販売モデルと、「広告収入がなければ赤字必至」という媒体特性があるからだ。また、ステマ騒動以来、メジャータレントを使いにくくなった美容業界は、ネット上の新たなスターを求めていた。そこに「私は目もと勝負」と言い切り、美容界のキラーコンテンツであるアイメイクに特化したざわちんが登場。一方のかじえりは、読者の購買欲求を高め、説得力を与えられる現役美容学生という肩書を持っている。

さらに2人には、「これだけ自分の顔にメイクをしている女性はいない」という他のメイクアップアーティストにはない強みもある。それだけに商品ラインナップが、まつ毛、アイライナー、カラコン、コスメショップ。さらに、イメージキャラ、使用モデル、商品プロデュースなど、多岐にわたるのだろう。

○【理由4 "見て楽しむ化"でメディア大露出】

かじえりが現在のブログでものまねメイクをはじめた2011年は、「私もマネしたい」というノリだったが、昨年あたりから徐々に風向きが変わってきた。特に、ざわちんが嵐のものまねメイクをした昨年12月ごろから、明らかにネタ化が進行。「これはテレビや雑誌向きでもある」と気づいたマスコミがこぞってクローズアップしたことで、ざわちんはさらにネタ化を進め、一気にトップランナーへ躍り出た。

いわば、「マネして楽しませる」「美容用品を売る」だけでなく、「見て楽しませる」エンタメ性を加えて仕事の幅を広げたのだ。スゴイのは、「写真は修整で何とでもできるけど、テレビには出られない」という声をはねのけたこと。実際、ざわちんは今月3日に『スッキリ!!』、19日に『とくダネ』などのテレビ番組に出演している。今後は企業のPRイベントなどへの出演も増えそうだ。

○今後はアンチエイジングにも拡大?!

ものまねメイクは、常に旬の有名人や、新たなスターを扱えばいいだけに、ネタ切れの心配は少ない。俳優、芸人、アーティスト、アスリート、政治家まで、男女を問わず何でもアリだ。 また、ざわちんやかじえりは21歳と若いが、30代、40代になったら、同世代だけでなく、年下有名人のものまねメイクでアンチエイジングの技を披露することもできる。あるいは近いうちに、30代の新たなものまねメイクタレントが現れるかもしれない。

最近では、飲み会や女子会にものまねメイクで登場する女性がいるという。それどころか、花見で披露しようと練習しているOLやサラリーマンもいるそうだ。 そこにあるのは、新たな自分の発見か、それとも遊び心か。そもそもメイクは、誰かをマネすることからはじめるもの。ざわちんやかじえりがタレント化しすぎて親近感が薄れない限り、多くの人たちからマネされ、楽しませてくれるのではないか。

■木村隆志コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ評論家、タレントインタビュアー。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴する重度のウォッチャー。雑誌やウェブにコラムを提供するほか、取材歴1000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書は『トップ・インタビュアーの聴き技84』など。

(木村隆志)