今季、米ツアーに本格参戦を果たした石川遼。レギュラーシーズンでは思うような結果を残せず、来季のシード入り(賞金ランキング125位以内)を逃したが、下部ツアー選手との入れ替え戦となるウェブドットコムツアー・ファイナルズ(計4試合)に参戦し、総合ランク13位でフィニッシュ。上位50位以内(下部ツアーの賞金ランク上位25位以内を含む)という条件をクリアし、土壇場で来季米ツアーのシード権を手にした。

 ファイナルズの最終戦、ウェブドットコムツアー選手権(9月26日〜29日/TPCソーグラス・ダイズバレーコース/フロリダ州)に出場した石川は、明るい表情を見せて、終始リラックスした様子だった。ファイナルズの1戦目こそ、予選落ちを喫したものの、2戦目で5位、3戦目で7位タイと結果を残して、最終戦の結果にかかわらず、来季のシード権を確定させていたからだろう。

「(表情が明るい?)そうですかね。(結果を求めて)ガツガツしないようにしているからかもしれません。というのも、ファイナルズが始まる前に、この4試合は自分の来季がかかっているので、すべてメジャー大会だと想定してプレイしようと思っていたんですね。でも、1戦目ではその気持ちが強過ぎてか、空回りしてしまった。今年一番、と言っていいくらいに体も切れていたし、練習ではドライバーやアイアンの飛距離も出ていたんですが、試合に入ったら(体が)硬くなってしまった。仮想メジャーの調整をしても、試合では自然体でやろうと思っていたのに、それができなかった。その経験を踏まえて、(その後は)試合で必要以上に気合いを入れないように心掛けました。そこはかなり意識して、この試合で何位になれば(総合で)何位になれるとか、結果を考えることなく、自分のやるべきことをやればいいと思ってプレイしました。そういう意識が(表情に)出ているのかもしれないですね。コースに出たら笑顔でいようと、特別に意識しているわけではないですよ(笑)」

 来季のシード権を得たことで気持ちの面でも余裕がうかがえた石川だが、最終戦に臨むモチベーションが下がることはなかった。なぜなら、ファイナルズのランキング次第で、来季ツアーの出場試合数が変わるからだ。昨年までの実績では、およそシーズン40戦のうち、1位の選手で28試合、15位までの選手で25試合、25位までの選手で20試合、50位の選手で18試合程度出場できた。同じ50位以内でも、下位と上位では10試合近く出場試合数に差が出ることを考えれば、ひとつでも順位を上げておきたい。3戦を終えて総合ランク10位という好位置につける石川も、さらなるランクアップを目指していた。

「できる限り、上(のランク)に行きたい。(ファイナルズの)ランキングによって、来季の出場試合が2、3試合減るかもしれないし、増えるかもしれない。それは(自分にとって)すごく大事なこと。そういう意味では、(シード権を獲得していても)危機感はある。今大会も、なるべく上位でフィニッシュできるように、気を引き締めていきたい」

 初日、石川は前半でスコアを落としたが、後半で巻き返して31位とまずまずのスタートを切った。2日目にはさらに順位を上げて15位で予選通過を果たすと、決勝ラウンドでもスコアを伸ばして、4日間通算6アンダーの8位タイでフィニッシュした。ただ、ファイナルズの総合ランクは10位から一歩後退して13位となった(同ランキングの3位〜50位は、今後もリランキングと言って、ツアーの成績によって数カ月ごとに入れ替えられる)。

「全体的には悪くなかったと思いますが、(最終日は)やや不完全燃焼の部分もあった。(ファイナルズの)総合ランクも落としてしまい、(シーズン最後の試合の)終わり方としては、ちょっと残念。ファイナルズ4試合を振り返ると、限られた時間の中で結果を出せたことで、ホッとした思いがある一方で、こんなところでもがいていてはいけない、という気持ちもある。(総合ランク)13位という結果にしても、満足していちゃいけないだろう、という自分がいる。5位以内に入ることができれば、次のシーズンに向けても自信を持てたと思うので、そこは悔しいですね」

 それでも、予選落ちが続いたシーズン当初と比べたら、石川のゴルフは明らかにレベルアップしている。ショートゲームに磨きがかかり、安定感が増した。プレジデンツカップ(10月3日〜6日)の翌週には、早くも新たなシーズンが開幕する(フライズドットコムオープン/10月10日〜13日)が、石川自身「調子はいい」というだけに、米ツアー2年目に向けて楽しみは広がる。

「シーズン序盤は(米ツアーに)慣れない面もあったけれども、来季もまたPGAツアーでプレイできるということに、自分自身、安心しています。なんとか1年間を乗り切ったので、また来季、這い上がっていきたいと思う。ゴルフ自体は、2009年に日本で賞金王を獲ったときより、もちろん昨年よりも、ずっと良くなっている。今季は日本になかなかいいニュースを届けられなかったけれども、"来年こそは"と思っています。そうは言っても、今季が終わったという実感はないし、1週間空くだけで、すぐに来季が始まります。でもそれは、僕にとって好材料です。秋は、体の状態も、ゴルフの状態も上向いてくる時期。まずは、年内に出場する試合でがんばって結果を残したい。そこで、来季の目処(シード権内)をある程度立てたいと思っています」

 アメリカに家を持って、ゴルフ以外の生活面でも基盤ができつつある石川。「心身ともにドタバタだった」というこの1年からすれば、来季はかなりの活躍が見込めそうだ。

「将来のことを考えると、基本的には日本に住みたいな、と思っていますよ。例えば、自分の子どもがこちらの学校に通うことを考えると、どうなんだろうって思うし、近所づき合いとか考えると、無理かなって思うし(笑)。でも今は、英語はまだまだですけど、アメリカで生活するのは楽しいです。ツアーに関しても、米ツアーに集中していきたい。ワールドランキングを上げていって、メジャー大会に出る、そして次(2015年)のプレジデンツカップに出る、というのが目標です」

 また、来季はライバルの松山英樹も米ツアーに参戦する。彼の存在が、石川の秘めた力を引き出してくれるだろう。

「(松山が)フジサンケイクラシックを優勝したあと、英樹から連絡をもらって『お互いにがんばろう』という話をした。英樹がこちらに来るのはすごく楽しみ。(米ツアーでも)ふたりで活躍して、こっちで戦ってみたいと思うジュニアゴルファーが増えてくれればいいな、と思っています。そうすれば、日本のゴルファーがもっともっと強くなると思う」

 ほとんど休む間もなく開幕する、米ツアーの新シーズン。ゴルフ、生活、あらゆる面において態勢が整ってきた石川の、2年目の飛躍に期待したい。

武川玲子●協力 cooperation by Takekawa Reiko
text by Sportiva