入らなくてもなんとかなる医療保険・傷害保険

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病気やケガ、死亡など、さまざまなリスクや不安に備えるのが、保険である。不安は数え上げればきりがなく、無意識のうちに不安を煽られた結果、もしかして保険に入りすぎているのかもしれない。

たとえば、保険の営業員から毎月の保険料が2万4000円になるプランを提示されたら、「高いかな」と躊躇するはずだ。しかし、「これではご負担でしょうから、この特約は外しましょう。ガン保障も外しましょうか、でも、ちょっと心配ではありませんか……」と畳み掛けられたらどうなるだろう。

不思議なことに不安感が頭をもたげ、高いと感じていた保険料を必要な費用と認識してしまう。これは相手の心にガン保険特約の存在を認知させておいてから、次に不安感を煽りながらそれをクサビのように打ち込んでいく「アンカリング」と呼ばれる心理テクニックを使った営業手法なのだ。

過剰な保険加入をしないためには、保険の必要度合いを認識する必要がある。図は保険の必要度合いをマトリクスで示したもの。横軸にはリスクが発生する頻度、縦軸はリスクの高さを示しており、頻度が高く、リスクが発生した場合の経済的なダメージが大きいほど、保険の必要度合いは高くなる。

たとえば火災保険や自動車保険。家を失う、事故で賠償責任を負うといった場合の経済的なダメージは計り知れない。誰しも自動車事故や火災に遭わないとは言い切れず、やはりこれらの保険には入っておくべきだ。

■意外な盲点「主婦の死亡保障」

次に必要度合いが高いのは世帯主の死亡保障である。定期付終身保険などで死亡保障を確保している人が多いが、その場合は保障の内容を点検してみよう。会社員では遺族厚生年金を受給できるほか、勤務先から死亡退職金が支給されることも多い。家族が必要とする金額と、公的保障を含めた保険以外で準備できる額との差額が、確保すべき保障額だ。保障額が過大になっている場合は、適切な保障額にすることで保険料を抑えることができる。

また、保険金を年金形式で受け取る「収入保障保険」もお勧めだ。死亡時期が遅いほど受取期間が短くなり、受取総額は減少するが、末子の誕生以降は必要な保障も小さくなるため、合理的な仕組みといえる。保障が減少するデメリットはあるが保険料は割安になっている。

意外な盲点として挙げておきたいのは、子育て中の専業主婦の死亡保障。妻が死亡したあと、親が子育てに協力してくれればいいが、それができない場合、夫は時間的な制約が生じて、仕事に支障を来す恐れがでてくる。ベビーシッターなどの費用を考え、末子の小学校卒業くらいまで妻の死亡保障を確保しておくと安心だ。共働きでも、妻の収入を見込んで住宅ローンを組んでいたりする場合は同様である。

一方、病気やケガによる入院は誰にでも起きうるリスクであるものの、これに備える医療保険や傷害保険の必要度合いは意外と低い。健康保険には高額療養費という制度があり、1カ月の医療費が一定額を超えた分は還付される。仮に1カ月に100万円の医療費がかかったとしても、所得が多い人の場合で1カ月の自己負担額は15万円程度。制度の改正リスクもあるが、必須とはいえない保険だろう。

保障額を適切な額にすること、不要な保障(特約など)をつけないことはもちろん、保険料が低い保険会社、商品の利用によって、保険料負担軽減の余地がある。非喫煙、健康体など、リスク区分型の保険保険料が安くなるケースがあることも覚えておきたい。

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家計の見直し相談センター 
藤川 太
1968年生まれ。自動車メーカー勤務を経てファイナンシャルプランナーに。著書に『小遣いは削るな!』など。

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(家計の見直し相談センター 藤川 太 構成=高橋晴美 撮影=坂井 和)