猪瀬都知事が宣言した渋谷〜六本木の都営バス24時間運行。風営法改正とセットでなければ意味がないという声もある

写真拡大

先月、ニューヨークのMTA(大都市交通公社)を視察した際、「東京の公共交通も(ニューヨークのように)24時間化する」とブチあげた猪瀬直樹東京都知事。

その第一歩として、年内にも六本木〜渋谷間のバスを24時間運行させることを発表したが、実はこの案、識者の間ではあまり評判がよろしくない。

(※参考記事「猪瀬都知事の『都営交通24時間化』構想。利用するのはいったい誰?」http://wpb.shueisha.co.jp/2013/05/07/18873/)

“夜の経済”に詳しい「国際カジノ研究所」の木曽崇(きそ・たかし)所長は、「都市交通を24時間化するだけでは意味がありません」と指摘し、こう提案する。

「都市機能も24時間化させるべき。『真夜中だからダメ』というものをつくってはならないんです。特に深夜に客が入るビジネスを規制する風営法の改正は絶対に必要だと思います。東京を風営法の規制を緩和させた“特別特区”として扱うのがいいでしょう」

確かに、深夜に都営バスが動いても、利用する人が少なければ意味がない。だが一方で、風営店の終夜営業を認めることにより、東京の治安が乱れるのではないかという不安もある。

「逆です。認めないから無許可営業が増え、トラブルや犯罪が起きても警察を呼べずにアンダーグラウンド化してしまう。公共交通の24時間化とセットで風営店の深夜営業を認めれば、警察官の立ち寄りもできるし、店側も積極的に防犯に協力するようになるはず。結果的に夜の街の治安はよくなります」(木曽氏)

また木曽氏は、六本木〜渋谷間という路線設定にも意味がないと指摘する。

「六本木〜渋谷間のバスはあまり意味がありません。もし盛り場をつなぐのなら、六本木〜渋谷ではなく、六本木〜新宿間にすべき。新宿はホテルの客室数が多く、外国人観光客のベースとなる街。夜の街を活性化させたいのなら、六本木と新宿を結ぶほうがずっと効果的です。

ただ、それよりもオススメは山手線の各駅をグルッと回る深夜バスです。理由は山手線の利用客がいちばん多いからです。しかも都が深夜バスを山手線沿いに走らせれば、新宿、池袋、上野などのターミナル駅から郊外のベッドタウンへと接続する深夜バスを民間企業が必ず運行させるはず。そうなれば、利用客は郊外の自宅まで帰れるし、民間バス会社は新たなビジネスチャンスを得ることになります」(前出・木曽氏)

さらに、すでに2年前に24時間化が実現している羽田空港にも目を向けるべきだという。

「せっかく空港が24時間化しても、都市機能が24時間化しておらず、宝の持ち腐れ状態になっています。都内にカジノをつくり、深夜バスで空港と結ぶべきでしょう。というのも、深夜に羽田に到着し、そのまま一夜を過ごす外国人観光客が少なくない。ホテルにチェックインすれば、宿泊費が一泊分よけいにかかってしまうことを嫌っているんです。深夜バスで空港からカジノに移動してもらえば、その『深夜の空き時間』を有効に使ってもらえる。外貨の獲得にもつながります。

公共交通24時間化の際にはカジノも24時間化した都市機能のなかに組み込むべきです。羽田からせめて品川、お台場あたりに深夜バスを走らせることも必要でしょうね」(前出・木曽氏)

東京という都市自体を24時間化させるには、都庁、区役所などの公的機関の24時間化も欠かせない。その一方で、「静かな町・東京」を望む都民も多いはず。

はたして猪瀬都知事はどこまで構想を練っているのか、まだまだ議論は続きそうだ。