A子はそういうプロセスを経なかった自分の人生になんとなく物足りなさを感じた。

もし、あのとき夫と結婚しなかったら、自分も彼女たちのようにいろんな恋愛を楽しめたのだろうか。

うんと年上の男性との大人のデートなんかも満喫できたのだろうか。

実際、独身の女友達と仲良くしているうちに、A子にも独身男性の知り合いが増え、彼らのほうが自分の夫よりもなぜか魅力的に見えてしまう。

ああ、もし彼らのうちの誰かと夫を取り替えることができたら……。

そんなパラレルワールドへの興味は尽きない。

そんなとき、今度は同世代のシングルマザーたちにも感化された。

彼女たちは一度離婚を経験したものの、子供がまだ小さいため、国からの母子手当や元夫からの養育費、両親からのバックアップなど、さまざまなサポートを受けながら意外に充実した暮らしを送っている。

しかも、彼女たちはまだ20代だからか、恋愛も諦めていない。

すでに新しい男性と付き合っていたり、より好条件の男性をゲットしようと、”再婚活”に夢中だったりする。

かくして、A子はますます夫の取り替えに興味が湧いた。

夫が嫌いになったわけではないけれど、昔のように好きでたまらないというわけでもない。

友達を見ていると、シングルマザーもそれなりに楽しそうだし、なにより気楽だ。

自分も彼女たちのように、もう一度恋愛をしてみたい。

夫を取り替えるなら、30歳を前にした今が最後のチャンスだ。

もちろん、世の女性みんながA子と同じではないけれど、実際これまで僕が見聞きした中で、こういう経緯と心理で離婚を決意した女性が複数いたから驚いた。

彼女たちにとって離婚と再婚は、なんとなく物品の取り替えに近いものがあるのだ。