衝撃的な見出しが躍った

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米大リーグ、タンパベイ・レイズを2012年シーズン途中で退団した松井秀喜選手の「引退報道」が流れた。例年なら年末に帰国し、年明けから日本でトレーニングを開始するが、今年に限っては様子が違うというのだ。

仮に大リーグでの所属先が決まらなかったら、日本の球団から声がかかっても引退の道を選んでしまうのだろうか。

戦力事情によってはキャンプに招待する球団出るかも

「松井引退か」と大きな見出しで報じたのは、2012年12月27日付のサンケイスポーツだ。レイズを退団後、自宅のあるニューヨークに戻っているという松井選手だが、現時点では来季のプレー先は未定となっている。その中でサンスポは、米国内でのハードな練習を取りやめている、例年なら年末から2月中旬まで日本国内で練習場を確保しているが今年はまだその手続きをしていない、といった「異変」を伝えている。

松井選手は今年も所属チームが決まらないままシーズンを迎えた。レイズとマイナー契約を結んだのは、開幕から1か月が過ぎていた。それまで練習を積んできたにもかかわらず、メジャー昇格後は本来の勝負強さを発揮できないまま打撃成績が低迷し、途中解雇となった。「来季もメジャーで」と考えるなら例年通り、年明けからハードなトレーニングに入るはずだ。だが練習場の予約もしておらず、帰国のメドも立っていないことからサンスポは引退の可能性を指摘したようだ。

この報道を受けて、松井選手の父親の昌雄さんは時事通信の取材に、「(本人の)明言はないが、(引退の)可能性は十分にあると思っている」とこたえた。毎年正月には帰省しているが、今回は難しいとの連絡も入ったという。いつもと違う動きであることは間違いなさそうだ。

米国は現在クリスマス休暇中で、各球団が補強を軸とした戦力の調整を再開するのは年明けになる。スポーツジャーナリストの菅谷齊氏は、松井選手が来季も米球界に残りたいという意思があれば、球団によっては戦力事情に応じて2月中旬に始まる春季キャンプに招待するところが出てくるかもしれない、と考える。

ただし状況は芳しくなさそうだ。菅谷氏は「松井選手が実力を発揮するには、指名打者で常時出場する必要がある。代打では無理。この条件をのめるチームが出てくるかは不透明です」と言う。今季不振を極めただけに、マイナー契約でのオファーがあるかどうか、というのが菅谷氏の見立てだ。

「落ちぶれた姿」で日本に戻ってプレーしたくない?

現時点で松井選手は、引退どころか来季の去就に関して具体的な話はしていない。メジャー昇格を目指して米国に残るなら、マイナーのチームや独立リーグという道もある。だが38歳という年齢で、大リーガーと比べて格段に野球環境が厳しいマイナーで、昇格する確証がないまま耐え続ける生活に意義を見いだせるだろうか。また今季のような「浪人生活」が長引くようなら、実戦から遠ざかってますます大リーグ復帰が難しくなるだろう。

こうなると、米国を離れて日本球界復帰を早めに決断するという選択肢も現実性がなくはない。菅谷氏も「日本のファンはあたたかく迎えるはず」と話す。一方で、ニューヨーク・ヤンキースで4番を務め、ワールドシリーズMVPにも輝いたプライドから、「落ちぶれた姿」で日本に戻ってプレーしたくないと考えても不思議はないとする。

今季途中でレイズを不本意な形で退団したことから「このままでは終わりたくない」との思いはあるはずだ。一方で「大リーガーとしてキャリアを終えたい」との思いを持っているかもしれない。近年は大リーグで「失敗」した日本人選手がすぐに日本球界に復帰するケースがあるが、菅谷氏は「松井選手はそういうタイプではない」と明言する。

米国に残ってメジャー再挑戦か、日本でファンに「メジャー帰り」の雄姿を見せるか、それとも一線から身を引く決意を固めるのか――。万一引退の道を選んだとしたら、「松井選手の性格からみて、本人がきちんとした形で報告する機会を設けるでしょう」と菅谷氏は語った。