一見都会の象徴とされる芸能界だが、その内実は狭い村社会であり、そんなところが妙に滑稽(こっけい)に思えたりもする。

だから、芸能人は芸能人同士、あるいは業界の内部で結婚することが多いのだろう。

互いの過去や裏事情が大衆に晒されるという点を互いによく理解していないと、とてもじゃないけど結婚生活がスムーズに進まない。

芸能人は心が強くないと、あるいは鈍感でないと務まらない仕事だと思う。

妻の元彼と番組で共演なんて、僕ならお断りである。

そして、ある意味そんな芸能界と共通した恋愛性質をもつ田舎育ちの僕の妻は、その恋愛性質が全身に染み付いてしまっているためか、いまだに夫婦で東京の街や、僕の故郷である大阪の街を闊歩していると、「あなたの元カノに偶然会ったら嫌だなあ」などと、しばしば口走ったりする。

以前の僕は「そんな偶然、そうそう起らないよ」と一笑に付していたものだが、最近は少し考えが変わってきた。

妻が育ってきた環境を思えば、そういう発言が出るのも仕方ないのだ。

これは嫉妬深いとか、そういう人間的な器の大小の問題ではなく、言わば人情の話である。

愛する人の過去とは、それが自分にとって縁遠いものだとわかっていると現実感を覚えないが、だからといって決して人間的に寛容なわけではなく、単純に現実感が麻痺しているだけだ。

これまでは妻の過去に嫉妬することなど一度もなかった僕だが、そこに現実感が生まれた場合、果たしてどう心境が変化するのか。

自分に興味が湧く、今日このごろである。



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