4809410226なぜ流通経済大学サッカー部は
プロ選手を輩出し続けるのか？

今季のJ1開幕戦、登録メンバーの出身大学ランキング第１位は流通経済大の12選手でした。同校は02年に初のJリーガー・阿部吉朗を送り出して以降、ここ10年間で５０人以上の選手をJリーグに送っています。

J1開幕戦登録メンバーの出身大学ランキング（J SPORTS）

しかし、流通経済大学サッカー部の総監督である中野雄二氏は国内最高峰の指導者ライセンスであるS級ライセンスを持っていません。

今月発売された秋元大輔著「なぜ流通経済大学サッカー部はプロ選手を輩出し続けるのか？」によれば、中野監督は指導者ライセンス取得をB級で挫折しているといいます。大事な部の公式戦と講習会が重なり日程変更を依頼したが受け入れられなかったためだと。

彼は同書の中でS級ライセンスについて、こう語っています。

「本当にしっかり選手を育成しようと思ったら、現場を長期間離れられるわけがありません。S級ライセンスを持っていなくても結果を出せる、指導者としてやっていけることを示すことで僕と同じような境遇にある人の励みになればという思いもあります。本当は協会がもう少し融通を利かせて、講習会に参加しなくてもある程度の大会で結果を出した監督にはライセンスを進化するようなシステムを導入してもいいと思うのです。全国大会でベスト８に入った回数であるとか、プロ選手を輩出した人数とか、そういう実績面での評価も取り入れてくれるようになればいいなと思っています」

先日「FOOT×BRAIN」で指導者ライセンスについて特集されていましたが、S級ライセンス取得のためには、３ヶ月の講習会、３回計10日間に及ぶ合宿、クラブでの１週間の研修、海外研修を受ける必要があるそうです。第一線で指導している指導者が、これだけの間現場を離れたらどうなるか。ようするに、まったく現場の指導者のためのシステムになっていないんですね。

また現在S級ライセンス保持者は346人。今回の試験では２３人中合格者３人、承認待ち５人。ライセンスは２年ごとに更新が必要。なぜS級の取得が年々厳しくなっていくかというと、あまり人数を増やすとS級ライセンス所持者の就職口が狭くなるからです。

これは審判の昇級にも言えることなのですが、日本では上に行くためには協会に対して滅私奉公することが求められ、そうして上に行った人たちの既得権を確保するため、制度を厳しくするということが実質的には行われているんですね。

中野監督の選手育成のポイントは以下のようなものだといいます。
・個人のストロングポイントを生かしたサッカーに特化して指導している。
・人間として成長するからこそ、サッカー選手として成長する。

日本の育成の現場では平均点の高い選手が評価されますが、プロで成功するためには最高到達点が重要です。そういう意味では中野監督の育成方針こそが世界標準に近いものであり、日本の誤った育成方針に染まっていないからこそ、これだけ多くのプロ選手を育てられるのかもしれませんね。

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